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<前回>
偽聖女であるカルロッタ・バルリエの聖女剥奪と婚約破棄後。
「シュルベステル様、今回は本当にありがとうございました」
「いや、事実を公表するのは当然だ。まさか、カルロッタが聖女と偽っているとは考えもしなかった」
「ごめんなさい。私もお姉様にお願いされた時、安易に了承してしまいました。あの時、断っていれば……」
「ソレーヌ、自身を責める事じゃない。元凶は能力も無いのに能力があるフリをすることだ」
「聖女と偽る事は、悪い事です……ですが、お姉様はシュルベステル様を慕い道を踏み外してしまったんです」
「慕っていれば何をしても許されるわけではない」
「……そうですね……シュルベステル様、お姉様に寛大な処罰をお願いいたします」
「ソレーヌ、君は優しすぎる」
「私の……大切なお姉様なんです……」
「……ソレーヌ……分かった。だが、今回だけだ」
「シュルベステル様、ありがとうございます」
例年には無い王族のパーティー。
そこで真実を公表。
「長年聖女として活動していたカルロッタ・バルリエだが、誤りであった。真の聖女は妹、ソレーヌ・バルリエ公爵令嬢と判明」
シュルベステルの宣言に会場内は騒めく。
災害が発生しても被害は小さかったり、教会へ被害状況を伝え聖女の祈りを願うと状況が改善していくので誰も聖女の能力を疑った事は無かった。
「長い間、皆様を欺いていた事申し訳ありませんでした。この度、シュルベステル様によって真実を公表する事が出来ました。お姉様がしたことは大変な過ちですが、それは弱かっただけで……悪気があったわけではありません。聖女となった私が、お姉様の分も過ちを償います。誠心誠意、聖女の務めを果たさせて頂きます」
ソレーヌは頭を下げ、貴族の反応を窺う。
「……カルロッタ様が偽聖女だったの? 」
「信じられないですが……」
「スカルキー地方の日照りも、ラウーレン地方の魔獣、王妃様の回復に王宮の聖女様の樹も全てカルロッタ様ではなく……ソレーヌ様だったということ? 」
「王子が宣言したのだから、そういう事……なんですよね? 」
「では、私達も長年カルロッタ様に騙されていたということ? 」
信じられなかったが、宣言する二人の姿に貴族は真実を受け入れる。
そして新たな聖女と真実を突き止めた王子に盛大な拍手を送る。
「皆、ありがとう。ここでもう一つ報告がある。私と聖女となったソレーヌ・バルリエ公爵令嬢の婚約が決定した」
この日最高潮の盛り上がりを見せ、誰もカルロッタの噂をすることは無かった。




