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突然の態度の変化に思考が追い付かない。
「一体どうなってるの? 」
偽聖女とレッテルを張られるようになってから、私は誰からも忘れ去られた。
なのに、心配されて医者まで呼ばれるなんて……
「ん? 部屋が……綺麗……」
私の部屋を掃除する使用人はおらず、至る所に埃が溜まっていたはず。
歩けば足跡が残る程に……
「私が眠っている間に掃除してくれたのかしら? 」
たかが二日で態度が急変するなんておかしすぎる。
私が眠っている間に何かが起きたのかもしれない。
皆の態度が急変する何か……
「聖女判定? 」
もしかしたら、私の聖女判定が正しかったと認められた?
そうとしか考えられない。
私の待遇は私が偽聖女ではないかと疑惑が浮上したからだ。
「……だけど、私が認められたという事は……ソレーヌは? 」
ベッドから起き上がる。
「お姉ぇ様ぁ」
ノックもなく勢いよく扉が開かれ駆けてくるのは……
「ソレーヌ? 」
「お姉様……心配したんですよ」
「あなた……ソレーヌ……よね? 」
「お姉様、私の事忘れてしまったのですか? 」
「いえ……覚えているわ……私の妹の……ソレーヌ……」
「そうです。良かった。忘れられたかと思いました。二日も目覚めなくて、私心配したんですよ」
「そっそう……」
「お姉様、聞いてください。お父様もお母様も酷いんですよ、急に私に冷たくなってドレスも靴も買ってくれないっていうんです。今度ミシェル様のお茶会に招待されているのに、新しい物が一つもないなんて恥ずかしいです。お姉様からもお父様達を説得してください」
私はこの会話を知っている。
それにソレーヌの姿も……
だけど、そんなはずはない……
「ん゛んっ……」
これは全て高熱のせいなのかもしれない。
「お姉様っ聞いていますかっ」
「……ソレーヌ、私はまだ体調が良くないの……」
「二日も寝ていてまだ体調が悪いんですか? 私が困っているのに、お姉様は私が可哀想ではないんですか? 」
「ごめんなさい、少し休ませて」
「お姉様まで私に冷たいなんて……皆酷いですっ」
ソレーヌは同情しない私に不満を覚えたまま部屋を去って行く。
そんなことよりも、私の記憶にあるソレーヌと今のソレーヌの違いに違和感を覚えていた。
「ソレーヌ……幼くなってた? 」
先程見たソレーヌは十二・三歳のようだった。
ベッドから起き上がり自身の姿を確認した。
「……やっぱり時間が戻ってる? そんな事は無いか……これは……夢ね」
死ぬ間際に見る夢。
過去の過ちを死ぬ間際まで後悔するなんて……