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「私は公爵令嬢……聖女じゃなくても大丈夫……公爵令嬢なんだもの……シュルベステル様と婚約して結婚すれば……ちょっとぉお、紅茶が温いわよっ。お菓子準備したのは誰? センスが悪いわ。テーブルも汚れているじゃないっ。どいつもこいつも、私が言わないと分からないのかしら……全くっ」
シュルベステルに刺繍入りのハンカチを渡してからのソレーヌは感情の起伏が激しい。
使用人達は自身が巻き込まれないよう、普段は避けがちな仕事を率先して行っている。
「……ソ……ソレーヌお嬢様……お手紙が……届いております……」
手紙を届けるよう押し付けられた使用人は、震えながら手紙を差し出す。
「……手紙? 誰からよ……ミシェル・スカルキー伯爵令嬢……」
今回のソレーヌとミシェルの関係は今のところ親しくはない。
現在シュルベステルに婚約者はいない。
聖女が現れない場合、ミシェルも彼の婚約者候補に名が挙がっている。
「お茶会の招待状ね……」
教会に通うようになり暫く経つというのに、一向に聖女が公表されない。
貴族達も今では痺れを切らし始めている。
「はぁ……出席の返事、代筆しておいて」
「畏まりました」
お茶会当日。
「本日は私、ミシェル・スカルキーのお茶会に参加して頂き嬉しいわ。ソレーヌ様とはゆっくり話したかったの」
「ご招待頂きありがとうございます」
「ソレーヌ様は今も大変お忙しいのかしら? 」
「えぇ。いろんな方が我が家を訪れたり、お茶会の招待状が届いたりと嬉しい限りですわ」
「……教会に通うようになり随分経ちますものね」
「そうですわね」
「もうそろそろ素敵な報告が聞けるのかしら? 」
「最善を尽くしておりますが、こればかりは私にも分かりませんわ」
「そうなのですね。私はてっきり……」
「てっきり……なんですか? 」
「いえ、教会を訪れた際におかしな噂を耳にしましたので」
「噂とはなんです?」
「聖女様はご自身の能力に気付かれていないと……」
「私の能力ですか? 」
「いえ、聖女様がご自身の能力に気付かれていないと……」
「……私が聖女ではないと言いたいの? 」
「そのような噂を教会の者がしていたのを耳にしただけです。私はソレーヌ様だと信じておりますわ。あれ程自らを聖女と偽るような発言は控えるようにと仰っていたんですもの。確信があるのでしょう? 」
今回招待された中に以前ソレーヌが否定したヴァネサ・ラウーレンの姿もある。
「もちろんよっ」
「では、我が領地の日照りを祈って頂けませんか? 聖女様」
スカルキー地方の日照りは今も続いている。
「……教会の掟により、個人的に祈る事は禁止されております」
「ですが、教会での祈りの内容に我が領地の項目もあるはずです。申請してありますから」
「……だとしても、教会の掟に背く事は私にはできません……」
「そうですか……」
気まずい空気となったお茶会。
その後、招待客が主催者のご機嫌を取り始める。




