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「いつでもお待ちしておりますわ、シュルベステル様」
仕方なくソレーヌと一緒にシュルベステルを見送る。
彼の馬車が見えなくなると勢いよくソレーヌは振り返る。
「お姉様、私の代わりに刺繍をお願いします」
ソレーヌは初めから自身で挑戦する気がない。
シュルベステル自ら聖女としての確認をするというのに、あっさりと放棄。
「……ソレーヌ、私が刺繍してもただの刺繍入りのハンカチよ? 第一王子が求めるのは聖女のハンカチ。貴方が一針一針縫う事が大事なんじゃないかしら? 」
苦虫を嚙み潰したような顔。
そんな表現がこれ程までに似合う人を私は知らない。
ソレーヌも渋々納得したのか部屋に戻って行く。
その後ろ姿には怒りにも似た感情が読み取れる。
「もう……なんなのよっ……ちょっと……新しいハンカチ用意してっ……」
ソレーヌの部屋の前では毎日叫び声が響いている。
屋敷の中は殺伐としているので、最近では花壇にいることが多い。
「やっと蕾がなったね」
ソレーヌに切り落とされてから漸く脇芽から蕾が。
「……お嬢様……お嬢様……」
「あらっどうしたの、セシリー」
私を呼んだのは、ソレーヌ付きとなったセシリー。
「その……お嬢様、お願いです。弟の病気について祈って頂けませんか? 」
「それは、ソレーヌに直接お願いした方がいいわ」
「いえ、私はカルロッタお嬢様にお願いしたいのです」
「……弟さんはまだ回復しないのね」
「……はい」
「不安になってしまうのは分かるわ。だけどソレーヌも今、聖女になるべく努力している。あの子を信じて、もう少し持って頂戴」
「ソレーヌ様が祈ったところで何も変わりません。カルロッタお嬢様こそ真の聖女様なんです。お願いです。カルロッタ様、弟の病気を祈っていただけませんか。お願いします、お願いします。祈って頂けたら私は、お嬢様のためになんでもしますから……」
どんなにお願いされたところで、私は聖女ではない。
聖女でないのは誰よりも知っている。
彼女の弟の事は可哀想だが、私にはどうすることも出来ない。
それに……前回のセシリーを知っている私からすると、彼女の言葉は信じられるものではない。
なんでもする?
あなたはいの一番に私のところから離れていった。
「セシリー、辛いとは思うけど私にはどうすることも出来ないわ。早く能力が開花するよう、ソレーヌを支えてあげて」
私は逃げるようにその場を去った。
前回の今頃は、セシリーの弟は既に回復したと聞いたのに。
「今回のソレーヌは、能力の開花が遅いのね……」




