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「では、王宮に行ってまいりますね」
本日ソレーヌは、王妃様に招待されたお茶会に向かう。
「……粗相のないようにな」
「気を付けて行ってくるのよ」
「行ってらっしゃい」
父と母と私で王宮へ向かうソレーヌが乗車する馬車を見送る。
「……カルロッタ、お前に聞きたいことがある」
「何でしょう? 」
「お前は……本当に聖女ではないのか? 」
「……ふふふ、何を言っているんですかお父様。私は聖女ではありませんよ。聖女は、ソレーヌです」
笑顔で応える私に、父と母は複雑そうな表情を見せる。
二人はどうして何度も私が聖女ではないかと確認するのか、ソレーヌが聖女であることを認める様子がないことも不思議でならない。
前回はあんなにも聖女がソレーヌで喜んでいたのに……
それはシュルベステルも。
彼はソレーヌと恋人のようだった。
聖女でなくなった私との婚約が破棄となると、直ぐにソレーヌを聖女とし婚約……結婚の話も進んでいたはず。
「……そうか……」
私のどこを見たら聖女だと思うのか分からないが、父は落ち込んでいる。
私に対してあんなに落ち込む姿は初めてだ。
婚約破棄された時だって、すぐにソレーヌが婚約者となったので落ち込むどころか喜んでいたのに。
母も私と父の会話を聞き肩を落としている。
二人が屋敷に入って行くのを一人見送った。
「あの二人どうしたんだろう? 」
久しぶりにソレーヌに振り回されない時間を堪能。
私の花壇に向かう。
「あれ? ここ……」
「カルロッタお嬢様、どうなさいました? 」
話しかけてきたのは庭師のノゾール。
「ノゾール、ここの花って……」
「そこは……ソレーヌお嬢様が……」
「ソレーヌが? 」
「王妃様のお茶会にご招待されたとかで……ちょうどカルロッタお嬢様の花壇に満開の花がありまして……ソレーヌ様からはカルロッタお嬢様の許可を得ていると……」
「そう……だったのね……」
「申し訳ありません、もっと確認しなければならなかったですね」
「いいのよ、ソレーヌの強引さには誰も敵わないもの」
ノゾールは仕事に戻って行く。
前回にも同じ事が起きた。
私が確認した時には、大切に育てていた花が切り落とされ誰がなんのためにしたのは分からなかった。
まさか、ソレーヌが王妃様とのお茶会に持参するとは……
「という事は前回も、王妃様のお茶会に招待されていたのね……」
前回とは違う行動をとっても、結果は同じ。
「だけど、スカルキー地方の日照りはまだ解決されていない。それにソレーヌの能力が開花するのも遅い気がする……どうしちゃったんだろう……」




