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「お嬢様っお嬢様っ」
「キャッ」
「大丈夫ですか? 」
「はぁはぁはぁはぁ……セシリー? どうしてここにいるの? 」
あれから私に話しかける使用人はいない。
特にセシリーは私付きの使用人だったが、直ぐにソレーヌ付きになる事を志願した。
「お嬢様は高熱で二日ほど眠っていたのです。旦那様と奥様にお嬢様が目覚めた事を伝えてまいります。それと、お医者様も呼んでまいりますね」
「……高熱? 」
おかしい。
父と母に私が高熱を出した事を報告したところで、あの二人は私の事を心配などはしない。
医者を呼んだとしても、彼は妹ではなく私だと分かれば診察すらしないだろう。
それにセシリーだ。
セシリーは私が聖女ではないと告げられた当日、私付きを早々に辞めソレーヌ付きになった。
「「カルロッタッ」」
扉が開いた瞬間、父と母が私を呼び駆け寄る。
「目覚めたんだな」
「心配したのよ」
母が私を抱きしめ、父は私の肩を撫でる。
こんなこと、起りはしない。
あの二人が妹ではなく私を心配するなんて……
「カルロッタ様、お目覚めになられたのですね」
遅れて医者が到着する。
彼の後ろにはセシリーの姿もあった。
彼女は胸の前で手を握りしめ、まるで私を心配しているように見える。
そんなはずないのに。
診察も丁寧に行われる。
「問題ありませんね。ですが、本日は念のため安静にしてください」
「はい」
「ありがとうございます、先生」
医師や父と母の反応が信じられない。
あれほど私をいない者扱いしていた人達が、熱を出したら心配するなんて……
「カルロッタ、無理はするんじゃないぞ。何かあればすぐに呼びなさい」
「お父様も私も本当に心配していたのよ」
二人の変わりように恐ろしく感じる。
「……お嬢様」
少し離れた位置で涙ぐみながら私の名前を呼ぶセシリーにも違和感しかない。
何がどうしてこうなったの?
「どうしたカルロッタ」
「まだ、体調が回復してないみたいね。何か欲しいものはある? 」
「……いえ」
「もう少し休んだ方が良いみたいだな」
「そうね。ゆっくり休むのよ」
二人は部屋から出て行った。
去り際に振り返り微笑みかけられる。
眉間に皺を寄せながら彼らが去って行くのを見届ける。
「お嬢様ぁ……本当に良かったです……私っ心配で心配で……ひっく……」
セシリーが泣き出す姿に困惑しかない。
「ちょっ……セシリー? 」
「私……お嬢様が目覚めなかったらって……怖くって……」
過去を振り返っても、セシリーが私をここまで心配した事は無い。
現実離れした光景に理解が追い付かない。
「セシリー……」
「はいっ何でしょうっ」
「……少し、一人で休みたいの」
「あっそうですよね。では何かあればお呼びください」
セシリーが出て行くのを確認。
「はぁ……なんなの? 」
彼らがいなくなると、急に疲れ再びベッドに倒れこんだ。