表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/57

2

「お嬢様っお嬢様っ」


「キャッ」


「大丈夫ですか? 」


「はぁはぁはぁはぁ……セシリー? どうしてここにいるの? 」


 あれから私に話しかける使用人はいない。

 特にセシリーは私付きの使用人だったが、直ぐにソレーヌ付きになる事を志願した。

 

「お嬢様は高熱で二日ほど眠っていたのです。旦那様と奥様にお嬢様が目覚めた事を伝えてまいります。それと、お医者様も呼んでまいりますね」


「……高熱? 」


 おかしい。

 父と母に私が高熱を出した事を報告したところで、あの二人は私の事を心配などはしない。

 医者を呼んだとしても、彼は妹ではなく私だと分かれば診察すらしないだろう。

 それにセシリーだ。

 セシリーは私が聖女ではないと告げられた当日、私付きを早々に辞めソレーヌ付きになった。


「「カルロッタッ」」


 扉が開いた瞬間、父と母が私を呼び駆け寄る。


「目覚めたんだな」


「心配したのよ」


 母が私を抱きしめ、父は私の肩を撫でる。

 こんなこと、起りはしない。

 あの二人が妹ではなく私を心配するなんて……


「カルロッタ様、お目覚めになられたのですね」


 遅れて医者が到着する。

 彼の後ろにはセシリーの姿もあった。

 彼女は胸の前で手を握りしめ、まるで私を心配しているように見える。

 そんなはずないのに。

 診察も丁寧に行われる。


「問題ありませんね。ですが、本日は念のため安静にしてください」


「はい」


「ありがとうございます、先生」


 医師や父と母の反応が信じられない。

 あれほど私をいない者扱いしていた人達が、熱を出したら心配するなんて……


「カルロッタ、無理はするんじゃないぞ。何かあればすぐに呼びなさい」


「お父様も私も本当に心配していたのよ」


 二人の変わりように恐ろしく感じる。


「……お嬢様」


 少し離れた位置で涙ぐみながら私の名前を呼ぶセシリーにも違和感しかない。

 何がどうしてこうなったの?


「どうしたカルロッタ」


「まだ、体調が回復してないみたいね。何か欲しいものはある? 」


「……いえ」


「もう少し休んだ方が良いみたいだな」


「そうね。ゆっくり休むのよ」


 二人は部屋から出て行った。

 去り際に振り返り微笑みかけられる。

 眉間に皺を寄せながら彼らが去って行くのを見届ける。


「お嬢様ぁ……本当に良かったです……私っ心配で心配で……ひっく……」


 セシリーが泣き出す姿に困惑しかない。

 

「ちょっ……セシリー? 」


「私……お嬢様が目覚めなかったらって……怖くって……」


 過去を振り返っても、セシリーが私をここまで心配した事は無い。

 現実離れした光景に理解が追い付かない。


「セシリー……」


「はいっ何でしょうっ」


「……少し、一人で休みたいの」


「あっそうですよね。では何かあればお呼びください」 


 セシリーが出て行くのを確認。


「はぁ……なんなの? 」


 彼らがいなくなると、急に疲れ再びベッドに倒れこんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
既に第2話で過去に巻き戻りですか。 察するに、聖女認定前から、彼女は俗に言う所の、搾取子、妹が愛玩子で有り、聖女になっても扱いそんなには変わらず、妹の策略で偽聖女にされ、侍女までが裏切り、その後、本人…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ