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「ただいま戻りました……」


 ソレーヌが教会から戻る。


「それで……どうだったの? 」


「祈ったのですが……」


「そう、やっぱり一人だと緊張したんじゃないかしら? 今度からはカルロッタもね? 一緒に……」


「まだ能力を使いこなせていないだけで、私がいたら余計気が散ってソレーヌの妨げに。ソレーヌも一人の方が良いわよね? 」


「あっはい」


「ソレーヌ、焦る必要はないのよ。貴方はたった一人の聖女なんだから」


「そっそうですよね」


 ソレーヌ自身も不安を感じていたのか、漸く笑みを浮かべた。

 その後もソレーヌが教会へ向かう度に母から共に教会へ向かうよう促される。

 ソレーヌの事が心配で仕方がない様子。

 そんなに心配なら私ではなく、自分が行ったらいいのに。


「……お嬢さま……」


「何かしら? 」


「相談したいことがありまして」


 セシリーは私付きというわけではないが、私の傍にいることが多い使用人。

 前回は、私が聖女ではないと分かるとすぐさまソレーヌに鞍替えした。


「相談? それは相手を間違えていると思うわ。母か執事を通して父にするべきよ」


「いえ、お嬢様でないと……」


「私? 聞いたとしても解決できるとは思えないけど……」


「それでも、お嬢様に聞いてほしいんです」


「一応聞くわ」


「……弟が病気で……お嬢様に祈って頂けないと……」


 そうだった。

 セシリーには病弱な弟がいた。

 前回も彼女に頼まれ祈った事で、弟は回復したと聞く。


「そういう事ね。分かったわ」


「ありがとうございますっ」


 ソレーヌが教会から戻る時間。

 セシリーを呼び、二人でソレーヌの部屋へ。


「少し時間いいかしら? 」


「何ですか? 私教会から戻ったばかりで疲れているんですが」


 今日のソレーヌはあまり機嫌がいいとは言えなかった。

 

「ソレーヌにお願いがあるの」


「お願いですか? 」


 私が『お願い』と言った瞬間、ソレーヌが眉間に皺を寄せるのを見逃さなかった。


「セシリーなんだけど、彼女の弟が病気みたいなの。貴方に祈ってほしいそうよ」


「おっお嬢様っ」


「私がセシリーの弟の為に祈るんですか? 」


「そう。それで、セシリーを貴方付きの使用人にしようと思うの」


「……セシリーはお姉様付きではありませんか。それだと、お姉様が不自由してしまいますよ? 」


「私はいいのよ。聖女の貴方の方が大事よ。それに、今の使用人の人数では補えなくなるんじゃないかしら? 私の事は気にせず、セシリーを貴方付きにしてくれないかしら? 」


「……分かりましたわっ。お姉様がそこまで言うのなら仕方なく私付きに受け入れます。弟のこともお任せください」


 ソレーヌはセシリーを受け入れ、祈りも快く承諾。


「あのっ、私はカルロッタ様に……」


「私が祈ったところで何も変わらないわ。ソレーヌが受け入れてくれたんだから、貴方は誠心誠意ソレーヌに仕えるのよ。ソレーヌ、セシリーの事よろしくね」


「はいっ」


 使用人の中でもセシリーは、私が聖女ではないとわかるといち早くソレーヌのご機嫌を窺うようになり専属となった。

 いずれ私付きになろうとしていたところだったのを、ソレーヌに変更したに過ぎない。

 前回よりも時期が少し早まったが、結果は同じ。

 変わったとしたら、セシリーに捨てられた前回とは違い今回は私から手放した。 

 それだけで私の心持は違う。

 晴れ晴れとした気分で私はセシリーを残し、自身の部屋へと戻る。

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― 新着の感想 ―
これは下手したら妹以外の全員が記憶持ちというパターンも有り得るな。そうだとしたら、相変わらず主人公の両親はどうしようもないな。姉妹の待遇に差をつけ、妹を甘やかしたせいで妹は聖女と嘘を付くまでになってし…
セシリーの奴、前回の記憶を保持してますな。 これ、弟が助かったのは主人公が祈祷したから生存した事実に気が付いていても王子をたぶらかした妹のほうが出世したり利益を出しそうだと思って寝返ったとかもあり得そ…
主人公の方が妹より頭がどうかしてるから 巻き戻り前に周囲から蔑まれてたのも まぁ納得できるっていうのはちょっと変化球ね
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