15
心を落ち着かせる為に読みかけの本を手にする。
開いているだけで、全く頭に入らない。
「お姉様っ」
確認もなく部屋に入って来る事について疑問にも思わなくなった。
「どうしたの? 」
「お姉様も一緒に教会に来ませんか? 」
ソレーヌは先程まであんなに嫌がっていたのに。
「何かあったの? 」
「私一人だと……お姉様も一緒にどうですか? 」
「遠慮するわ」
「お姉様っ、聖女となったら色々大変だと思いませんか? お姉様が傍にいてくれたら、私安心なんです」
聖女となれば、身の回りの事は教会の見習いが全て対応してくれる。
不安に思うことは無い。
「心配する事は無いから、大丈夫よ」
「そうではなく……」
「それに、私が一緒にいたら皆さん困惑してしまうと思うの」
「困惑ですか?」
「聖女様を優先したいのに、公爵令嬢である聖女の姉の私がいたら戸惑ってしまうでしょ? 」
「それは……」
「そういう配慮をするのもあなたの役目になるんだから」
「分かりましたっ、私一人で教会に向かいます」
「ソレーヌの聖女姿、楽しみにしているわ」
「えぇ」
ソレーヌが出て行き漸く部屋が鎮まる。
「私が行ったところで……」
その後も食事で顔を合わせれば母がソレーヌと一緒に教会へ行くよう提案するも全て断った。
「カルロッタも教会へ見学に行ってみたら? 」
見学もなにも、私は聖女として何年も通ったので十分知っている。
「いえ結構です」
「そう言わず、こんな機会滅多にないのよ」
「……お母様、どうして私にも教会へ行くよう勧めるんですか? 」
「それは……ソレーヌ一人では心配というか……聖女だと思っていても……万が一という事もあるでしょ? 」
「心配する必要ありませんよ、ソレーヌは聖女ですから」
「そんなことっ……まだ分からないから、カルロッタにも付き添ってほしいのよ……」
「ソレーヌは大丈夫ですよ。私がいる事の方がソレーヌの迷惑になりますから」
「……ねぇ、カルロッタ……貴方、本当は祈ってないんじゃないの? 」
「祈らないはずないじゃありませんか? ちゃんと祈りましたよ」
「……そう……」
ソレーヌが教会へ向かう当日も母は勧めるが私は断った。
「では、行ってきますね」
「行ってらっしゃい」
教会へ向かうソレーヌを見送る。