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祈るフリをし、周囲の気配に気を配った。
皆が終えたのを感じ取り、祈りを終える。
「……皆様、本日はお越しいただきありがとうございます。祈りが届いたとされる方には教会の方から連絡をいたします」
司祭からの挨拶を終え、教会を後にし家族と共に馬車に乗り込む。
「今回の祈りで聖女かどうか決定するのですよね? 」
誰よりも先に口を開いたのはソレーヌ。
「そうね」
「では、不公平ではありませんか? 」
「不公平? 」
突然ソレーヌは教会の公平性を疑い出す。
母とソレーヌの会話に加わるつもりは無いが、気になる事なので会話は耳にする。
「私が与えられた教会からの祈りは到底不可能な内容でした」
「不可能な内容? 」
公平と言っていた教会が、おかしな内容を割り当てるとは思えない。
「そうです。ミラルディー地方のアングィスの森での失踪事件についてです」
失踪事件。
最近子供だけでなく、大人も行方不明になる事件が発生。
その為、アングィスの森は子供は勿論大人も一人での立ち入りは禁止となっている。
「失踪事件……」
だけど私が聖女をしていた頃、その事に祈ってほしいという嘆願書は届くことは無かった。
「失踪なんて、騎士が解決するべき事件じゃないですか。それを聖女候補に託すのが間違いです」
「うん……そうね……」
「事件が起きて捜査に難航したものを聖女に押し付けるなんて……騎士の怠慢ではありませんか? 」
ソレーヌの言葉に思わず頷いてしまった。
「聖女なら何かしら起こせるんじゃないかっていう、最後の頼みの綱なんじゃないかしら? 」
「聖女なら事件が起きる前に予防すればいいのよ」
「それだと、聖女の能力の判断が難しくなるじゃない」
「なら、聖女自身が事件を起こして解決したらどうなるんですか? 」
確かにソレーヌの言う通りなのかもしれない。
私もそれで勘違いされたんだろう。
「……そういうものは、いずれ真実が明るみになるのよ」
「そうだっ。そうやれば、私が聖女に成れるじゃないっ」
「絶対に止めなさいっ」
ソレーヌの話を受け流すように聞いていた母が強く否定。
ソレーヌは本物の聖女なので、自作自演したとしても再調査で本物だと認定されるだけ。
だけど、それを知っているのは私だけだから母が止めるのは正しいのかもしれない。
「……もうっわかりました……」
「本当にするんじゃありませんよ」