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 一か月後。

 

「やっぱりヴァネサ様は聖女ではなかったのね」


 いつまで経っても教会から、聖女認定の発表はない。

 他の家門のお茶会に参加しても、ヴァネサの姿がない事でソレーヌはご満悦。


「だから聖女であるかのような発言は控えるよう忠告したのに、私の忠告を聞かないから恥をかくんだわ」


 ソレーヌは最近ずっとこの調子。 

 見つかるとソレーヌに捕まるので、最近では部屋から極力出ていない。

 それでも窓開け換気をしていると、外で使用人に同じ話を繰り返している。

 私が見るに、あの使用人は三回は聞かされている。

 それでも皆が付き合うのは、苛立っているソレーヌより上機嫌な方が仕事が滞りなく終えられるから。

 

「お嬢様、奥様がお話があるそうです」


「話? お母様が私に? 何の話か聞いてる? 」


「先程教会から手紙が来たようです。その件ではないでしょうか? 」


「教会から……」

 

 教会からと聞いて関りたくないと思ってしまう。

 呼び出されて母の元へ向かうとソレーヌの姿もある。


「二人共聞きなさい、漸く返事が来たのよっ」


 ソレーヌの機嫌が落ち着いたかと思うと、今度は母が騒がしい。


「どうしたんですか、お母様」


 気持ちの余裕が生まれたのか、ソレーヌが母に質問する。


「んふふ、教会からお返事が来たの。もう一度聖女の確認をしたいそうよ」


「やっぱり。おかしいと思っていたのよ」


 母からの報告にご満悦なソレーヌ。


「我が家からは二人、他にも数名の令嬢が招待されているみたいね」


「えっ、そうなんですか? 」


 確認するのは自身だけだと思っていたソレーヌ。

 他にも候補者がいると聞き、眉間に皺を寄せる。


「カルロッタ、貴方も参加するのよ」


「……はい」


 そして教会に呼ばれたのは高位貴族の令嬢。

 その中に前回確認の為に呼ばれたであろう令嬢達は参加していない。


「それでは、本日はこちらが指定した内容をお祈りください」


 司祭により、封筒が配布される。

 

「今回は、一人一人祈りの内容は異なっております。審査を公平に期すために周囲に決して口外しないように」


 一人一人別の内容を祈らせる為に今回は数名に絞っているらしい。

 前回も今回のように一人一人祈りの内容を変えてくれたら私が間違えられることは無かったのに……

 今更そんな事を言っても仕方がない。

 封筒を開け内容を確認。


「私に与えられた内容は……」

 

 アザイールの地の復興。

 昔は緑豊かな森だったが、いつしか草木も育たない荒地となった場所だ。

 原因として様々な要素が挙げられる。

 一つ目が、伐採。

 アザイールの木は何百年ものが多く、堅いのが特徴。

 磨いた後は樹木で珍しい輝きを見せ、魅力的な風貌が人を虜にする。

 その為貴族の要望により後先考えずに伐採した結果、地盤が緩み大雨で土砂災害が発生。

 二つ目が、焼却処理。

 土砂災害により農作物だけでなく植物全体に病気が広まった為、やむを得ず焼却処理が行われた。

 三つ目が、日照り。

 日照りが続き、大地が乾燥し草木も育たない土地となってしまった。

 それを解消するには……聖女の祈りが必要。

 

「そんな……」


 周囲を確認すると、他の候補者達の祈りの内容も一筋縄ではいかない様子。


「祈りの内容を確認した方はこちらに整列ください」


 司祭の指示で一列に整列し、指示通り祈る……フリをした。

 私は聖女ではないので、聖女の真似事はしない。

 前回は勘違いされるような行為をした私が悪かったのだから。

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― 新着の感想 ―
この国、魔獣が出ても自分たちで討伐し似いかないし、森林地帯で樹木を伐採しすぎて土砂崩れが起きているとか、河川が嵐とか大雨で河川で氾濫が起きて農作物がダメになったり、大干ばつが起きて水がないし水をためて…
聖女が居ないだけで国が回らない何て、国としてどうなんだろうな...
原因の分かり切った人災の回復を安易に聖女に頼るんじゃないよ… 地道に治水工事して植林しろと言いたい。 …この国、実は聖女の消費を前提に回してる時点でだいぶ駄目なのでは?
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