11
お茶会から数日後。
教会に呼ばれたという令嬢はヴァネサだけでなく、あの日招待されていた令嬢にも教会からの手紙が届いていたことが分かった。
その中に聖女がいるのではないかと噂された。
「お母様、どうして私に連絡が届かないのですか? 」
「それは、ソレーヌが魔獣について祈っていないからでしょう」
「私、祈ったのかもしれません。あの時お姉様に日照りについて祈るよう言われたのですが、魔獣で苦しむ人がいるという司祭様の話が頭から離れずいたんです」
ソレーヌの発言は私が日照りについて祈るよう強制しているように聞こえる。
あの時私は何について祈るのか尋ねられたので答えたに過ぎないのに……
「そうなの……では、カルロッタも魔獣について祈ったのね? 」
ソレーヌが魔獣について祈ったという話なのに、私まで魔獣について祈った事に。
母としては、ソレーヌと私のどちらかが聖女になれば家門の価値が上がると思っているに違いない。
「私は祈っておりません」
「そうです、お姉様は日照りについて祈ったのですからっ」
母は私に魔獣について祈った事を強要し、ソレーヌは私が魔獣については祈っていないと否定する。
教会に提出した内容が採用されるので、今さら別の事について祈りましたと宣言したところで受け入れられるものではない。
ソレーヌの言い分を信じてなのか、母が教会に手紙を送っている。
「そんな事したら『あの時、私は魔獣について祈りました』『祈りの場に立った時、突然考えが変わったのです』『きっと神様からのお告げなんだとおもいます』と言って、数多くの令嬢が名乗り出るだろうに……」
ソレーヌは聖女に憧れているというより、自身より誰かが優れているのが我慢ならないらしい。
以前の私は一切気が付かなかった。
「聖女……」
そんなにいいものではない。