六
六
夢と現実の狭間で、彷徨ってる虚ろな感覚。
頭と体か分離して、神経が麻痺しているような気持ち悪さ。
襲いかかる睡魔を振り払い、やっとの思いで目を開けるも、身体を起こす気力も湧かずに、ノエルは点滴針を差入された腕を掲げた。どうやら、ここは診療所で、試験で負傷した受験生を治療する場所らしい。
(あー……)
ぶちのめす、なんて豪語したのは誰だったか。中級攻撃術を直に喰らい、救急搬送をされた事を悟ったらしい彼は、思わず頭を抱えたくなった。傍らで魔導書を開いている見慣れた能面に、なんて声をかけていいかもわからない。
「レ……イ」
「起きたのか」
パタン、読んでいた本を閉じながら、
「随分派手にやられたようで」
「負けたみたいだな」
他人事みたいな言い回しだった。まるで、自分の命を軽んじるようなノエルの言動は、レイを不機嫌というより考えに沈んだ顔にさせる。犯罪に手を染めた兄を持つ彼が、どのような人生を歩んで来たのか、知る由もないが察するに余りある。
「お前……なぁ」
「んだよ」
「いや。勝ち負けはこの際どうでもいい。お前、どのくらい寝ていたか分かるか? 5時間だぞ、5時間」
静かに、されど人に口を開かせないような厳しい口調で続けた。
「これが、5日だったらどうなってた事か……」
ため息をつくかわりに喉の奥で小さくうなって、レイは仏頂面をグッとノエルに近づける。間近で感じる息遣いに、相手が男でありながらノエルは意識せずにいられなかった。
「……っ!」
「試験通過のチャンスは2回。もし数日寝込んでいたら、2回目のチャンスも棒に振るところだったんだぞ」
「わ、わかったから……っ、ちょっと離れてくれ……!」
「……は?」
あからさまに挙動不審な彼をレイは訝しげに見つめる。
「お前、そっちの趣味があったのか?」
「ちっげーよっ!」
いくら中性的で綺麗な顔立ちをしていようとレイは列記とした男である。悪い冗談はよしてくれと、ノエルは寒イボを立てながら首を高速で横に振った。
「俺は、他人に近づかれるのが苦手なんだよ!」
「あー。秘境育ちの弊害かな」
「秘境じゃねーよ!!」
山奥育ちである事を何故知っているのか、という疑問は飲み込んで、ノエルはなにかを吹っ切るように、はあっと短い吐息をついた。
「んな事より、一次試験どうなったか教えろよ。……アンタの口ぶりだとまだ終わってないんだろ?」
「ん。まあ、既に失格になった者もいるが、まだ続いているな。……そうだ、リージンとリオがBブロックで当たった」
ノエルの目が瞬く。驚いたという表情だった。
「結果は?」
「勝負は一瞬。リージンがリオの首の後ろを叩いて気絶させた」
「首の後ろを?」
興味津々な彼を一瞥し、レイは上目遣いで記憶を辿る。
「あれは、戦いの火蓋が切って落とされた直後だった。鏢、という苦無に似た投擲武器を、リオに向かっていくつか投げたリージンは、物体交換というエスパー属性の初級術で自身と投擲武器の座標を入れ替えたのだよ」
「ざひょう……。っ、場所か」
「ああ。リオも身体能力は高いからな。投擲武器は見事に躱してみせたのだが、まさか自身の横をすり抜けた鏢と入れ代わるだなんて思わなかったのだろう。……リージンの作戦勝ちだな」
「なるほど。それで、一発ボコってKO勝ちと」
「ボコってない! 手刀!!」
ノエルの台詞を遮るかのように、レイとは違うテノールの声が否定する。「お静かに」と医療班に注意されているその人物――否、リージンは、不機嫌面をぶらさげてこちらへ歩み寄った。ノエルは上目がちに彼を見つめて、「やあ」と気まずい笑みを頬に漂わせる。
「随分ボロボロにやられたもんだね。……ノエル」
リージンはちょっと首を傾げて、暫しの間ノエルを上から下まで眺めまわした。今にもメジャーを取り出して、採寸でも始めるのではと思う程であった。目を白黒させて「何」と口を開けば、リージンはおもむろにノエルの右手を上から握りしめる。敵意は感じないが、だからこそますます意味がわからない。
「ま、会場には戻れそうだね。元気そうだ」
「え」
「点滴の針抜くぞー」
「は、待っ……急に何ィ!?」
有無を言わさぬ勢いであった。引きずられるようにして病室を出たノエルは、会場に続く長い廊下をしぶしぶ歩き始めた。動きたくないと訴えかけるかのように踵を引きずり、身体の軸は自然に曲がる。魔術で治療を施されたとはいえ、ノエルの身体はまだ本調子でない。神経回路がまともとは思えない自分の身体と、半分しか戻っていない魔力量に、気分は落ちる一方だった。
「初戦で無理するからこうなるんだよ」
茶化すように振り向いて、リージンはヘラリと悪戯っ子の笑みを浮かべる。
「猛省しな」
「はあっ……!?」
「リージンが正しい」
抑揚のない冷たい声でリージンに賛同したレイは、ムッと眉を寄せるノエルを追い越して扉に手をかけると、Aブロックの騒がしい歓声を前にくるりと後ろを振り返った。
「なにを不安がってる、後がないからか? こうなる事は目に見えていただろうに中断しなかったせいだろう」
「むかつく奴ゥ……」
「むかつく奴で結構」
ふん、と珍しく口元に笑みを浮かべた彼は、顎をしゃくるようにして背後のモニターを指し示す。滅多に見ない彼の笑顔に流されるまま、ノエルは会場に一歩足を踏み入れた。瞬間、長い喉を見せてガックリと首を後ろに投げる。なるほど、今ならリージンが急かしていた理由も説明がつく。
「なんでこのタイミングで試合……」
「これでも後回しにされていたんだよ」
不服そうな表情を浮かべるノエルに、追い打ちをかけるかのようにリージンは口を開いた。
「一次試験も終盤だからね。これも自業自得――」
「わかってるわ!」
すこぶる怒った様子で総毛を立たせながら、ノエルは指定されたBブロックへと足を向ける。と同時に、レイとリージンの声が重なった。
「「行ってらっしゃい」」
(こいつら……)
どうやら、応援はおろか観戦すらしてくれないらしい。その場に留まったまま片手をヒラリ降ってみせる白状者達を一瞥すると、ノエルは一言「嫌いだ……!」と捨て台詞を吐いて、逃げるようにその場を後にするのだった。
※
「珍しいね。ノエルの試合見ないなんて。なんで?」
遠ざかる背中から視線を逸らし、リージンは柵に背を凭れながらおもむろに口を開いた。
「……珍しいか?」
無機質な瞳で、抑揚のない声で、ただ一言発する彼に、リージンは肯定の意を込めて頷いてみせる。
「当然、行くもんかと思ってたから」
「何故そう思う?」
「何故って……」
思わぬ切り返しにたじろぐと、レイはわざとらしく肩を竦めてみせた。誰に対しても揺るがない、失礼極まりない態度がリージンを煽る。
「ノエルと私は利害の一致で行動を共にしていた仲だ。何も一緒に行動する必要はないだろう」
「へぇ? 友達なのに?」
「……敵対関係にある以上、仲間意識を持つべきではない」
微動だにともしないレイの表情から、真意を読み取る事は出来ない。しかし、探るように見つめられた彼の指先は、自身の動揺を表すかのように落ち着きなく動いていて。リージンは頑ななレイの態度に苦笑をもらした。
「ふーん。じゃあ、敵に塩を送る趣味でもあるの?」
「そうじゃない」
不服そうに見つめ返すレイの口元が僅かに尖る。
「そうじゃない、けど……放っておけないんだ。似てるから」
リージンの目が瞬く。意外だ、と言いたげな表情だった。
「大切な人に似てる、とか?」
「ああ」
レイは能面のままコクリと頷いて、
「婚約者だ」
「こ、婚約者……っ?!」
画鋲でも踏み付けたようにぎょっとして、騒ぎ立てる神経がリージンの表情筋を引きつらせた。
「彼女は無理やり連れて来られた奴隷でな」
「ど……っ?! 禁止されたはずじゃ……!?」
想像の斜め上を行くレイの返答に、リージンは顔つきを変え、絶句したように黙り込んだ。驚愕。疑念。彼が感じているのは、そのどちらかだろう。そんなリージンの様子を横目に、レイは片手を顔の横でヒラヒラと振った。
「……嘘だ。うそうそ、途中から冗談だ」
「冗談にならないって……」
わかりにくく笑えない彼の冗談は、相手の神経をすり減らす。レイは、全身で疲れを表現するリージンに、フッと笑みを浮かべた。
「放っておけない理由は嘘じゃない」
「じゃあ何で試合……」
「観に行かなかったか、だったな。理由は簡単、対戦相手だ」
「対戦相手?」
訝しげに眉をひそめるリージンの前で、レイは電子手帳の電源を入れた。
「私の計算では、ノエルの試合、もうすぐ終わるぞ」
「わっかりにくい冗談やめてよ!? 会場移ってまだ5分しか立ってないんだが!!」
辺りに構わぬ大きな声に、近くに居る受験者が何だ何だと振り返る。リージンは慌てて柵の上で腕を交差させると、試合を観戦するふりをしながら一つ二つ咳払いを鳴らした。
「ノエルの対戦相手だが……」
リージン同様、試合観戦のふりをしながら、レイは続ける。
「覚えているか? リージン」
「え。あー、うん。名前から察するに女の子だったよね。……だから俺行かなかったんだけどさ」
「女に甘すぎる。対リオ戦だって、結局、攻撃術使ってなかったろ」
責め立てるような冷たい視線に晒され、リージンは拗ねたように頬を膨らませた。
「別にいーでしょ。……それで?」
「ノエルの対戦相手はな、実は初戦で棄権しているんだ。命をかけた対戦が怖すぎて」
「な、なんで、そんな子が魔術師試験なんか受けて……」
「仕方ないだろう。これに受からなければ魔力が封印される」
|それがこの国のルールだから《・・・・・・・・・・・・・》と噛み締めるように呟いて、レイはリージンの向こう側に視線を逸した。敵対関係でありながら仲間意識を抱いている、けどそれを認めたくはない男が帰ってきたのだろう。
(放っておけない、だけかねぇ)
リージンは耐えきれない笑みを口角に浮かべると、踵を軸にしてゆっくり身体の向きを変えた。しかし、レイの代わりに結果を尋ねようとした、その瞬間。ノエルの前に立ちはだかる1人の男によって、言葉が喉を通っていく事はなかった。ノエルは不機嫌なシワを眉間に作って、
「なんか用?」
殺気とまではいかないが、空気はあからさまに重く、極く微妙な不調和が、だんだん周囲にはびこりはじめる。レイとリージンは互いに顔を見合わせ、どうしたものかとノエルと対峙する男に視線を投げた。
ノエルに絶対的な力の差を見せつけた今試験最も有力視されている受験者――イズミ=ヒルベルト。シオンの劣化版と、彼を貶す声も少なくはないが、天才と謳われた男の比較対象にされる程、イズミの実力は本物だった。そんな彼が何故、完膚なきまでに叩き潰した相手の前に立ちはだかるのか。リージンは、再びレイと顔を合わせると、困り果てた表情を浮かべる。
「……イズミ=ヒルベルトさん。何か用なの?」
耐えきれず2人の間に割り込むリージン。少し離れたところで傍観を決め込んだレイは興味深そうに3人を見つめた。
「とりあえず、一次試験突破おめでとう」
「は?」「え?」
動揺の声がノエルとリージンから発せられる。レイは1人無言で驚愕していた。
「なんで俺の……つーか、とても一次試験突破を喜んでいるようには思えないんだけど」
「うん、別に喜んではないね」
「……さいですか。だったら何? 俺に何の用!?」
微笑を浮かべながら全面否定をするイズミに、殴りかかるような勢いでノエルは食って掛かった。2人の間に挟まれたリージンは、慌ててノエルを抑える。
「ハッキリさせたい事があってね」
「は……? 何を」
「君、シオン=アルジェントの弟だろ?」
「……っ」
カッと見開かれるノエルの眼光。これはマズイと、レイはイズミの肩を強く引いた。
「イズミ=ヒルベルト。藪から棒に失礼ではないかね」
「……アルジェント家宗主亡き今。アルジェント一族の現宗主は分家の君だね?」
イズミの肩を掴むレイの握力が緩む。知らない情報に動揺を隠せないでいる彼に、ノエルは知らなくて当然だと内心思った。
アルジェント一族は宗家分家に分かれてる。長男として生まれてきた者は宗家の敷地で、それ以外は分家の敷地で育てられるのが通例だった。嫡子として育てられたシオンとは寝食共にする事もなく、父親から直接指導を受けていたのも兄だけであった。だから、父と兄の間に何があったのか、実のところノエルは知らされていない。どうしてシオンを廃嫡し、時期宗主の座に己を据えたのか、父は言わなかったし聞ける雰囲気でもなかった。
ただ一つ確かなのは、父から金色の瞳を継承されたあの日。そして、シオンが魔術師試験を終え帰宅したあの日に、事件が起こったという事だけである。
「何でその事を?」
ノエルは眉間に深いシワを寄せて、訝しげにイズミを睨みつけた。
「宗家分家の話なんか、特定の人しか知らないはずだけど?」
「シオン=アルジェントについて、色々調べていたからね」
「調べたァ?」
「恥ずかしながら。前回の魔術師試験で、僕は手も足も出ななかったんだよ。あんな衝撃的で屈辱的な体験、忘れられるはずがない。……だから」
胸に残るムカつきを吐き出すようなため息をついて、イズミはレイの手を払い落としながら続ける。
「賞金首になったあの男を、この手で捕らえたいと思ってね。色々調べていたんだ」
「アンタもシオンの首を狙ってる1人ってわけ」
「まあね。だから、現宗主である君と手合わせをして、自分の実力を試したかったんだけどさぁ……」
「何?」
「君のその感覚頼りの破茶滅茶な魔力コントロールじゃ、なんの参考にもならなかったよ」
嘲笑を口角に浮かべ踵を返したイズミに、ノエルは今にも斬りかかりそうな形相で手を伸ばした。そんな彼を正面から抱きついて、動きを制したのはリージンである。
「落ち着け、バカッ!」
「こ……っの野朗! 絶対アンタを倒してやるから、覚えてろーっ!」
「挑発に乗りすぎだ、ノエル!!」
むずがる子供のように地団駄を踏んで、全身で苛立ちを表現するノエルに受験者の視線が集まった。全ての対戦が終わったのか、野次馬の数は明らかに増えており、レイは見ていられないとばかりに顔を背けた。当の本人は、驚くほど周りに気づいていないが、これではいい見世物である。
「ああ、他人のフリをしたい……」
額に手を当てて息をつくと、レイは2人の肩に手を置いて「いい加減にしろ」と両腕を真横に広げた。――瞬間、暗転。騒がしい声は途端に絶え、唯一の光となったモニターへ全員の視線が注がれる。
『一次試験通過おめでとうございます。素晴らしい闘いでした』
陸軍教育総監第一部長にして、魔術師試験審査部長。胡散臭い笑みを浮かべたその男、マルコ=レクターは、開口一番、賛辞の言葉を受験者に送った。緊迫した会場の雰囲気は僅かに崩れ、至るところから息を吐き出すような音が聞こえてくる。暗闇に慣れていない目は、人の姿を映し出さないが、声のトーンから察するに皆、喜びをかみしめているのは想像出来た。
236名もいた受験者は、怪我によるリタイアを差し引くとたった128名。これから先苦戦を強いられる事を思えば両手広げて喜ぶ事は出来ないのに、思わずこぼれた笑顔は抑えられない。ノエルは、拍手を送るマルコを見上げながら、高鳴る鼓動に手を当て拳を作った。
『2次試験の前に10時間の休憩時間をはさみます。十分な休息をとって万全な状態で挑んでくださいね』
軍人らしからぬ朗らかな笑顔を浮かべながら、マルコは続ける。
『この会場は地下一階にありまして、この上は魔術師試験受験者専用ホテルになってます。
この後、70階目にある光の大広場で解散。71階から100階まである室内を使って頂いて構いませんし、大広場で待機して頂いても構いません。ただし、69階から下は立ち入り禁止なのでご注意下さい。
食事はルームサービスか光の大広場にてバイキング。お風呂はそれぞれの部屋に完備しています。部屋に行きたくない方は、70階にシャワールームを設けているのでご安心ください』
それでは、と区切り、マルコはモニターから姿を消した。モニターの電源が切れたのではない。部屋の映像はそのままにマルコだけがそこから姿を消したのである。何事かと騒ぐ声が嵐のように聞こえ、ノエルの顔にも微かな不安の色が走り出した――その時。闘技場の中心に、太い光の柱が生まれ、マルコ自身も宙に浮いた状態で現れる。
「すっ……ごぃ」
ノエルが思うより先に、リージンが呟いた。同じエスパー属性だからこそわかる、マルコの術者としての高い能力。ぼんやりと見えた彼の表情は感嘆より、驚愕に近かった。
「改めまして。陸軍教育総監第一部長のマルコです」
360度。様々な方向を向きながら、マルコは全員に頭を下げる。
「これより皆様には、この光柱の中に入ってもらいます。私が光の大広場までお送りいたしますので、皆様は光の大広場に置いてあるネーム入り懐中時計を手にしてください」
「懐中、時計……」
「また、二次試験が始まるまでに、3人1組のチームを作っておく事をおすすめします」
割り切れない人数ですけど、と付け足したマルコの顔に暗い笑顔が浮かんだ。思わず青ざめる受験者を他所に、彼の表情は人当たりの良い笑顔に戻っている。やはり幹部まで上り詰めただけはあり、ただ良い人というわけではなさそうだ。
「とんでもない狸野朗だな」
誰にも聞こえない声で独り言ちながら、ノエルは踵を軸に後ろを振り返ろうとした――その刹那。抗えぬ力で襟足を引っ張られ、光柱へのダイブを強いられる事になったノエルは、周章狼狽しながら手足をバタつかせる。
「なに。なになになに!?」
「し、知らな……」
声のする方へ視線を向けると、首が締まった状態のリージンが顔を青くしており、これがレイの仕業である事はすぐに理解した。理解はしたが、頭がキレる彼の思考・判断に、ノエルの理解が追いつく事はなかった。はあっ、と吐き捨てるような溜息を溢して、
「何を考えてるんだ」
1人の受験者が、2人の受験者を強制連行という不可思議な光景。会場全員の視線が突き刺さり、否が応でも3人は注目の的になっていた。目立ちたくないと一貫していたレイに、一体どういった心境の変化があったのか。ノエルは、無い知恵を振り絞り、必死に考えを巡らした。
「なあ、おい」
「ごめん」
瞬間移動する間際。レイは一瞬後ろを振り向いて謝罪の言葉を口にする。そして小さい声で、だけど力強く、こう続けた。
「ノエル、リージン。私とチームを組んでくれないか」