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004 -たとえ黒竜でも痛いのは嫌です-

強大な恐ろしい竜に挑む無鉄砲な若者のように見えた両者だが、戦いは一方的なものとなった。黒竜バルバトスの吹くブレスはことごとく神速の剣に切り裂かれ、体躯を生かした重い一撃も一度たりともペリクレスに直撃することはなかった。


「くっ・・・素早さは大したものだが、逃げ回ってばかりではこの竜鱗に傷一つ付けられんぞ!!」


「・・・試してみるかい?」


バルバトスの挑発に乗ったペリクレスは、尾の一撃を空中に飛び上がって避けたと同時に魔力で足場を作り、バネのようにして勢いよく加速して飛びかかった。大型竜の竜鱗を貫く剣など世界に一握りしかなく、自らの鱗を切り裂かれたことのない黒竜バルバトスは、ペリクレスが勢いよく振り下ろす剣を躱さず迎撃しようと腕を伸ばして迎え撃ったが、これが大きな過ちだった。


ペリクレスの体を掴みにいった手首から先を切り飛ばされ、大きな傷を負ったことのないバルバトスが唖然としていると、ペリクレスはその隙に地上に降り立つまでに2度3度と腹部を切りつけ、巨大な体から鮮血が吹き出した。


「な・・・いッ・・・痛ァァァ!!!」


初めて体験する痛みがバルバトスを襲う。一度も痛みを知らない彼は、痛みに弱かった。


「ちょ・・・ちょ・・・ちょっと待って!待って!!」


情けない声で痛みを堪えながらタイムを取るバルバトスを完全に無視し、ペリクレスは黒竜の体をボロ雑巾のように切り刻んだ。


「・・・ガフッ・・・なんなのだ・・・なぜ・・・」


血溜まりの中に伏して意識を手放そうとしているバルバトスに対して、ペリクレスは笑顔で答えた。


「ああ、この剣ね。世にも珍しい竜族特攻持ちの名のあるドラゴンキラーなんだ。切れ味は普通の剣なんだけど、呪いをかけた竜族の血を使ってドワーフの刀鍛冶によって打たれた一品でね、竜族限定で素晴らしい切れ味を見せるんだよ。」


「なんだと・・・」


怯えきった表情の黒竜の前にして、血に染まったドラゴンキラーに頬ずりしながら言葉を続けた。


「それにね、呪いのおかげで竜族のあらゆる攻撃を無効化する効果があってね。装備者である私には君のブレスは全く効かないし、君たちオリジナルの魔法で身体強化された攻撃も全て無効化される。殴っても無駄ってことだね。


つまり君は万に一つも勝ち目なんてなかったってことだよ。」


「そんな・・・ズルいだろ、そんなの・・・」


経験したことのない激しい痛みに襲われながら、戦い前にペリクレスに啖呵を切ったことを思い出し、穴があったら入りたいほどの屈辱にまみれていた。


「さあ、君の負けだ。約束は守ってもらおう。君は我が領地初の竜族の民として生きるんだ。歓迎するよ、黒竜バルバトス。」


そういうと懐から魔法ポーションを取り出し、ぐいっと一飲みするとバルバトスに回復魔法をかけた。

巨大な竜の体にも関わらず、きり飛ばされた手首や体中の傷が一瞬で何もなかったように塞がっていった。このような強力な回復魔法は初めて見たとバルバトスは目を丸くした。


「これは私の回復魔法が強力なわけではなくて、このポーションがすごいんだ。私は魔力が弱いからね、こうやってブーストしないと上級回復魔法は使えない。高かったが効き目抜群だ。」


「・・・」


バルバトスが黙ってみていると、ペリクレスは腰にかけたバッグを開いてまだまだ沢山のポーションがあることを見せつけた。


「お前・・・仮に我の攻撃が通用したとしても、それだけの回数の回復ができたということか?」


「当然。即死でなければ金の力で命は買えるんだよ。」


「・・・」


「金の力で命は買えるんだよ?」


満面の笑みでそう言い放つ若者を前に、バルバトスはため息をついて降参といった具合に空を眺めた。


「わかった。正直小狡いやつだと軽蔑するが約束は約束だ。お前に従ってやる。」


「よし!さすが誇り高い竜族だ!では早速我が屋敷まで来てもらおうか!君は討伐依頼を出されていた立場であるし、主だった者に面通しをしておく必要があるからな。」


ペリクレスはそう言うと、バルバトスに伏せるようにと促した。理由がわからないがとりあえず伏せたバルバトスの背中にピョイと飛び乗ると上機嫌な様子でペリクレスは声を上げた。


「我が騎竜バルバトスよ!さあ屋敷に向かって飛べ!」


「貴様!民になるとは言ったが貴様の足代わりになるとは一度も・・・」


「ポーションは見たよね?君を少なくとも10回は切り刻んでやることもできるんだが・・・」


「ハイ!不肖ながらバルバトス、飛ばせていただきます!」


もうどうにでもなーれという顔で、主人を乗せた黒竜は大空へ飛び立った。

一部始終を見ていた生き残りの冒険者たちは、黒竜を一方的にねじ伏せたペリクレスの強さを街で大いに語り、この一件が理由で悪しき竜を討伐し下僕にしてしまったという話が帝都まで広がり、ペリクレスは剣聖候補へと上り詰めるのであった。

可哀想な黒竜。

ちなみにドラゴンキラーはペリクレスが黒竜討伐の話を聞いて、高い金を出して買ってから駆けつけました。

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