プロローグ -4度目の世界-
神話の時代の物語
その世界は既に3度の滅びを経験していた。
最初に世界を支配したのは巨人族だった。
彼らは高度に文明を発達させ、ついには空の向こうに飛び出そうとした。
だがどんなに空高く飛ぼうとも、この世界を出ることは叶わなかった。
やがて彼らは神々が他の世界との行き来を阻止しようとしていることを知り、創造主たる神々にも戦いを挑むようになった。
栄華を誇った巨人族の文明は、神の雷によって砕かれ、地上の支配者を失った世界は混沌とした長い時間を過ごすことになった。
次に支配者となったのは古から巨人族と争い続けてきた竜族だった。
様々な環境に適応した竜族は、大空から地底まで、かつて巨人族の手が及ばなかった世界まで、その手中に収めることとなった。
大型の竜族にとっては文明の再興を担うには苦労が多かったが、小柄な竜人達が手先の器用さを見せ、かつての巨人族にも劣らない高度な文明を作り上げた。
巨人族と神々の戦いを見ていた彼らは、その神々の圧倒的な力に挑むことを避けた。
その適応能力の高さを自認していた竜族は、神々と戦うのではなく、自らを神々に近づけるべく、あらゆる方面においてさらなる進化を望むようになった。
この時代に数多くの魔法が生み出され、巨人族の頃とは強さの質が変わっていった。
数千年に渡る竜族の支配の間に、彼らの念願ともなる神々にも劣らぬ力を持つ一匹の竜が生まれた。
その竜は小柄だったが強靭な肉体と、計り知れないほどの強い魔力を持っていた。
「空が神々に塞がれているのであれば、何も空を飛ばずとも、この地上で世界に穴を開ければよいのではないか。」
この世界と異なる世界があることは、時折紛れ込む異質な生物がいることから、確実視されていた。
その竜は敵対する数百万もの竜族の命を取り込み、王都上空に穴を空けた。
しかし未知なる世界への思いに心躍らせる竜族たちの願いは、その穴から出てきた異形の者たちによって打ち砕かれた。
「なぜ我々がこの世界を切り離していたのか、お前たちは気がつなかったのか?」
僅かな間に竜族の半数が無惨にも殺されてしまった後、久方ぶりに地上に降り立った神々は言った。
結果として、かつての巨人族とは異なり、竜族は神々と手を組んだ。
地上の生命の9割が死に絶えたが、異形のものを世界から追い出し、ようやく穴を閉じた。
穴を開けた張本人であった竜は、神々にその身一つでの竜族の存続を乞うた。
神々は世界で最も高く険しい山の頂に、誰も立ち入ることのできぬ封印を施した神殿を建て、そこに身を差し出した竜を封印した。
世界は落ち着きを取り戻したが、地上は荒廃し、ごくわずかの生命しか残らなかった。
世界が彩りを取り戻すには長い時間が必要だった。
次に世界を再び一つにまとめあげたのは、人間を中心とする人族だった。
獣人・竜人・エルフや妖精なども人族の文明の一部となり、大いに繁栄した。
種族の違いによる差別や、多数生まれた国家の争いなどの問題はあったものの、種の絶滅の危機に瀕することなく、かつての巨人族や竜族にも劣らない文明を築き上げ、人族は長い栄華の時代を謳歌した。
かつての支配者である巨人族や竜族に対して身体能力で劣る人族は、伝説として残る彼らの過ちを繰り返すこと無いよう、数を増やし、強い武器を作り、新たな魔法を生み出し、軍隊を組織することで自らの地位を保った。
ある時、見慣れぬ姿をした人族らしき生物が保護された。
背丈は人間と変わらず、四肢も大きく異なる部分は見受けられなかったが、頭部に角があり、魔力の質が地上に存在する生命とは大きく異なっていた。最初は言葉も通じなかったが、数年の保護観察の間に言葉には不自由しなくなり、人族の使う文字も覚えた。
同じ頃、世界各地で同じような生物が発見され、世間の注目を集めていた。
言葉を覚え、人族としての生活に馴染んだ頃、彼らは自らについて語りだした。
かつてこの世界の神々と竜族に戦いを挑んだこと。
そして戦いに敗れ、自分たちの世界に押し戻されたこと。
その後、自分たちの世界には大きな争いが起こり、こちらと同じように世界が荒廃したこと。
そして、自分たちはその異形のもの達の末裔で、人に近い形に進化して、逃げるように再びこの世界を訪れたということ。
人族は困惑した。
伝説で知られる彼らの先祖は、この世界に攻め込んできた異形のものであり、この世界の神々とは敵対関係にある存在と言ってもよいという事実に、そして彼らが逃げるように今ここにいること、そして非常に友好的に接しているということに、どうして良いものかわからなかったのだ。
当然、受け入れるか排斥すべきか意見は割れた。
かつて異形のものと戦った竜族の生き残りは、彼らは危険であり殺すべきだと訴えた。
だが人族の多くは、異形のものの恐ろしさを直接知らず、か弱く自分たちに似た存在となった彼らを殺すことに抵抗があった。
神々に仕える立場である神官たちは、その歴史的経緯から彼らを受け入れることはできないと考え、彼らを人族ではなく、似て非なる邪悪な存在として魔族と呼んだ。
しかし積極的に、そして友好的に人族の社会に入ってきた魔族たちは、多くの人々に受け入れられ、その数を増やしていくことになった。
長い時が経ち、数を増やした魔族は、自らが中心となる国を成立させるほどの勢力となったが、以前として人族とは友好的な関係を保ち続けたことで、混血も多く、すっかり人族の社会の一員となっていた。
この頃、大きく事態が変わる。
一人の魔族が病に倒れ、異形のものへと姿を変えて暴れまわったのだ。
都市部での事件だったため、迅速に捕獲され処分されたが、これは多くの人族と魔族を疑心暗鬼に陥れることとなった。人族にとっては隣人が急に警戒すべき怪物になるかもしれないと感じ、
魔族にとっても、自らが異形のものへとなってしまうのではないかと恐怖を煽ることになったのだ。
最初に動いたのは人族、と言っても神々に仕える神官たちだった。
魔族は世界の敵であると断じ、混血も含め排斥を始めたのだ。
事態を見届けた神々は、神官たちに力を与え、魔族を滅ぼすように促した。
そして最初の1年で数百万人もの魔族が神官たちによって殺された。
魔族たちは自分たちが殺されるのをただ眺めていたわけではなかった。
魔族を中心とした国家の王、魔王が立ち上がり、魔族と魔族に友好的な国々と手を組み、神々に仕える神官たちに抵抗したのだ。
この間、異形のものへと変化してしまった魔族が、たったの2名だったことで、恐怖よりも隣人を殺されることに嫌悪した多くの人族が立ち上がり、神官たちが中心となる神聖帝国へと攻め込んだ。
全人類の8割の国家が魔族と連合を組み、魔王と中心とする人類連合が成立。
神聖帝国との戦いに明け暮れる中、神々が戦場に降り立った。
両陣営が息を呑んだ次の瞬間、神の雷が人類連合に降り注いだ。
一瞬で数百万の命を奪われた人類連合側は一時撤退。
神々は深追いせず、距離を保ったまま両陣営がにらみ合う事となった。
均衡が崩れたのは、竜族が神聖帝国に与することを決めたことが理由だった。
制空権を奪われた人類連合は敗北。大きく国力を削がれることになった。
自ら必要以上に干渉することをよしとしない神々は、神官たちに翼と武器を与えた。彼らは天使と呼ばれ、神々の代行者として力を振るった。神聖帝国にはもはや人族の姿はなかった。
劣勢に立たされた人類だったが、神々の強力な魔力に当てられたせいか、勇者と呼ばれる竜族にも負けない力を持つ戦士が現れた。
彼は攻め込んでくる竜族や天使を一太刀で切り裂いた。
本来防衛に長けた能力を持っている魔王は、勇者という攻めの切り札を手にしたことで、神聖帝国の切り崩しができるかもしれないと考えた。
魔王には勝算があった。かつて祖先である異形のものが使い、神々へも届いた戦略級魔法が戦況を変えると考えていたのだ。異形のものへと変化してしまった魔族が、殺される前に発動しようとした戦略級魔法。
直接手を下した魔王は、その発動プロセスを理解することができた。だが神々に届く威力にするには、かつての異形のものの魔法レベルでは足りず、まだ世界が一度も見たことが無い威力まで昇華させる必要があった。時間も準備も足りない。そう思っていたが、神々とも戦う力を持つ勇者が現れたことで、
その可能性を見出すことができた。
魔王は勇者に、勇者は魔王に、人類の未来を託した。
勇者を旗印に神聖帝国へと攻め込む人類。あらゆる魔法や竜族のブレスを切り裂く勇者が縦横無尽に暴れまわり、神々を含め神聖帝国が対処に追われていたその時、神聖帝国の領土全てが太陽のような強い光に覆われ、一瞬で消滅した。
見渡す限り全く底が見えないほどの大穴が姿を表し、神聖帝国として戦っていた竜族も天使も、そして神々も主神を除いて全てがかき消えた。
神に届いたのだ。
勇者は神々をもかき消した魔法の中を生き延びていた。
天性の魔法に対する抵抗力に加え、魔王から一度だけ命を肩代わりしてくれる異世界の指輪を受け取っていたが、そのエメラルドのように美しい魔石をはめ込まれていた指輪は、黒ずんで炭のように濁ってしまっていた。
この戦略級魔法は、過去に存在したものとは比べ物にならない威力となった。
そしてこの魔法の発動は、魔王と多くの魔族の命の消滅を意味する。
勇者の目に涙が滲んだ。
勇者は前を向いた。この戦場で生き延びたのは、自分と目の前の主神のみ。
その主神も存在が消えかけるほど、大きな傷を負っていた。
自身も大きな傷を負っていたが、痛みを感じることはなかった。
強く握り直した聖剣を振りかぶり、勇者は主神に切りかかった。
歴史上、最も速かったであろう一撃は、主神の体をまるでバターのように切り裂いた。
その瞬間、聖剣に取り付けられた魔石が光り、主神は魔石の中に封じ込められた。
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「異形のものと呼ばれた我々魔族の先祖は、そもそも神々に対する対抗装置のようなものだったようだ。」
魔王は雨粒が当たる窓から外を眺めながら続けた。
「この世界の神々に追い返された後、我々の先祖は自らの世界の神を殺したらしい。」
「・・・神って殺せるの?」
不思議そうな顔をしながら、ソファーに腰掛け、一口水を飲んでから勇者は訪ねた。
「もちろん神にも色々ある。こちらの神々に敗退して自分たちの世界に戻った後、神殺しを実現しているあたり、おそらくこちらの神々の方が強かったのだろうな。」
深くため息をついてから、くるりと室内を見渡し、魔王は語り続けた。
「思うに・・・神というのは進化の途上にある。つまり我々の進化の先かもしれんのだ。」
「つまり神も進化し続けているということかな?」
魔王は頷いた。
「個体差や種族差があることが何よりの理由だろう。我々が思っているよりも絶対的な存在ではない。つまり絶対的な存在でない限りは、通用する何かがある。」
魔王はポケットから人間の手のひらに収まるほどの魔石と指輪を取り出し、勇者に手渡した。
「この魔石は我々の先祖の世界のものだ。神々は我々とは異なる粒子で構成されているが、それを閉じ込めて変換する効果があるらしい。神を弱らせることができれば、その魔石を近づけると封印することができる。我々の先祖は魔石に封印してから魔石を砕くことで、ついに神を死に至らせたらしい。」
「この魔石を作ったのは誰?」
勇者は首をかしげる。
「別の世界の神と聞いている。異形のものも別の世界の神によって作られたようだ。つまり魔石を合わせて侵略兵器のようなものだったわけだ。」
「もし・・・これでこの世界の神を倒したとしても、別の神が来たりするのかな?」
「それは分からん。が、神を封印できたら魔石を破壊するのは止めておけ。」
「どうして?」
「我々の世界は、主神をその方法で殺したが、管理者を失った世界はバランスを崩して災害が増えて荒廃したそうだ。それに都合よく後任の神が来てくれるわけではなかったようだ。結果、我々はこの世界に逃げてくることになった。」
「・・・・」
考え込んだままの勇者をチラリを見て魔王は続ける。
「もう我々魔族にとっては、この世界が故郷なのだよ。失いたくない愛すべき世界だ。命をかける意義がある。」
勇者は頭をガシガシとかいてふてくされたような様子を見せる。
「だからその魔法のために死ぬって?」
「膨大な魔力が必要なのだ。本来は神が使う魔法だ。私だけで足りなければ、多くの魔族が共に命をかけてくれる。」
「だからって死んでしまったら、その救われた世界を見ることはできないよ?」
「構わんのだよ。我らの子や孫の世代が平穏に暮らしてくれれば満足だ。」
「・・・・」
黙り込んでしまった勇者を待たずに魔王は続ける。
「勇者よ。絶望の最中、お前が現れてくれたことで、ようやく未来を切り開ける可能性が出てきたのだ。」
「・・・・」
「その指輪は戦場で常に身につけておけ。一度だけだが命を肩代わりしてくれる異世界の指輪だ。私は未来の世界を目にすることはないだろうが、君は生き残ってその先を見てきて欲しい。」
「・・・・」
「君と会えて本当に良かった。愛しい人よ。」
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誰もいない荒野で、勇者は一人岩の上に座り込んだ。
街に戻れば多くの人が満面の笑顔で出迎えてくれるだろう。
沢山の死んでしまった魔族がいるだろうが、生き残った魔族は人類と手を取り合って踊るだろう。
これで本当の意味で人類の時代が来るのだ。
さあみんなが待っている。帰ろう。
しかし足が動かなかった。
どんなに世界中が笑顔で満たされたとしても、あの人はいない。
どんなに明るい未来が待っていたとしても、そこにあの人はいない。
「・・・・」
勇者はしばしの沈黙の後、フーッと大きくため息をついた。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・そんな世界は要らない。」
砕かれた魔石は神々しい光を放ち、あたり一面を照らしたが、
その明るさも徐々に弱くなり、魔石は完全に炭のようになって崩れた。
勇者は立ち上がり、パンパンと服についた砂ぼこりを落とすと、あてもなく歩き出した。
神聖帝国が消滅したこと、魔王と勇者が命をかけて人類を守り抜いたことが世界中に伝わると、
勇者が想像したようなお祭り騒ぎが至るところで繰り広げられた。
最初は夏に雪が降るようになった。
ただの異常気象で片付けられていたが、そのうち作物が育たない地域が増えてきた。
大地震が急増し大地が割れ、いくつもの都市が飲み込まれた。
浮遊石を使って空中都市に活路を見出すものもいたが、十分な人口を賄うことはできなかった。
やがて空を守っていたバリアが消え、隕石が地上に降り注ぐようになった。
一際大きな隕石が海に落ちた時、世界中が大津波に飲み込まれ、ほとんどの都市が壊滅した。
国は散り散りとなり、僅かな人類がひっそりと災害に怯えながら暮らす荒廃した世界となった。
世界は3度目の終わりを迎えた。
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長い時が経ち、新たな勇者が生まれた。
既に文明らしき文明とは言えないほど衰退していた人類だったが、
勇者は荒廃した世界を旅し、大災害にも負けずに残っていた神殿を見つけた。
強力な神々の結界が張っているようで、周囲は山が崩れてクレーターだらけになっているものの、神殿は隕石の直撃にも耐えていたようだ。白い大きな柱がいくつも立ち並び重厚な屋根を支えている。
そして入口から奥まったところに巨大な扉がある構造は、かなり古い時代の建造物のように思えた。
神殿に近づくと結界を過ぎたような感覚があった。
てっきり入れないように拒絶されるかと思ったが、ちょっと拍子抜けに感じた。
巨大な扉は世界樹から切り出された木材を使っているようで、強い魔力を放っており、何かの封印が施されていることを感じさせた。扉に手を触れた途端、まばゆい光が放れて消えた。封印が解けたようだ。
神話の時代の恐ろしい怪物が封印されていたのかもしれないと思うと、取り返しのつかないことをしてしまったのではとも思ったが、好奇心が勝り、再び扉に手を触れ押してみるが、とてつもない重さでピクリとも動かない。
どうしたものかと思案していると、突如扉の向こうから声が聞こえてきた。
「なんと!まさか訪問客とは思いも寄らなかったぞ。久方ぶりだ。」
声の大きさからして、人間よりも大きな体躯であることを感じさせる。
「結界に拒否されずにここまで来るとは、お主は何者だ?」
突然の大きな声に圧倒されてしまっていた勇者だが、負けないように目を見開いて大声で答えた。
「私は人族の勇者だ!突然邪魔をしてすまない!あなたは何者だ!?」
扉の向こうからは笑い声が返ってきた。
「そんなに大声で叫ばなくても聞こえているぞ。そうかお前が今代の勇者か。
ということは神は死んだな?」
勇者が返事に困っているのを感じ取ると、中からの大きな声は続けた。
「ふむ。その様子だと何も知らんようだな。まず・・・勇者という存在はな、神の代替装置なのだ。神に異変があったか衰えた時、もしくは死んだときに現れる存在だ。ああ、私のことを話していなかったな。遠い昔、その神に封印された竜さ。」
「ちょっと待ってくれ!情報が多い!」
「ん?なんだお前はひょっとしてバカなのか?」
神話の時代の竜と聞くと恐ろしい存在に思えるが、どこか愉快な掛け合いに思えて勇者がクスリと笑って答えた。
「バカではないが、力なら誰にも負けない自信があるぞ!」
「まあ勇者というのはそういうものだ。で、神が死んだとなると世界が壊れかけているのではないか?」
勇者は自分が生まれるはるか以前、世界はとても豊かだったという神話を思い出した。
「私が生まれてからはずっとこんな感じだが、確かに昔の世界は豊かだったと聞いたことがある!」
扉の向こうの竜は大きく笑った。
「確かに生まれてずっと同じだったら違いがわからんだろうな。まあいい、色々説明をしよう。中に入るといい。」
そう言われると同時に、重くて動かなかった扉が音を立てて動き出した。
すっかりと開ききった扉の向こうは、光源がどこかわからないが白い壁が全体明るく光っているようだった。その部屋の奥に、透き通るような白い鱗を持った美しい竜が座っていた。
「どうした?入ってこないのか?それとも怖気づいたか?」
竜はニヤリとからかうように笑っていった。
「いやすまない!思ったより小さくて驚いたのだ!」
「バカにしているのかお前は!」
本気で怒っているようには感じなかったので勇者は少し安心して、一歩踏み出して部屋に入った。
こいつにはいきなり取って食われるようなことはないだろう。
「まあいい、早くこっちに来い!色々説明しなければならんし、お前には世界を安定させるために神の代わりになってもらうぞ。」
「え!!俺が神に!!??大変そうだし帰らせてもらうぞ!!」
勇者の気の抜けた声が神殿内に響き渡ると同時に、勢いよく扉が閉まった。
その後、勇者が神殿から出てくることはなかった。
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この頃から徐々に世界中で頻発していた災害が減少し、地上は平穏を取り戻していった。
作物は実り、人族も魔族も地に溢れ、再び国家が建設され、3度の滅びから再び世界は立ち直っていくのだった。