2.森
一緒に生活してから二週間が経った。
シュベルもだんだんとこの生活に慣れてきたようだ。始めはあんなに警戒していたのに今ではあまり警戒しなくなっていた。嬉しい限りだ。
「シュベル、私は森に行くけれど、一緒に行く?」
「えっいいの?」
「えぇ、そろそろこの生活にも慣れてきたようだし、少しは小屋から出ないと。ただし私の側から離れないことが条件よ」
「分かった。行くよ」
私はシュベルにフードを着させる。
「どうしてフードを?」
「貴方、顔を見られたらまずいんじゃなかったかしら?」
「まぁそうだけど。……じゃあ、シアがいつもフードを被っているのは?」
「……私にも、色々と事情があるのよ」
「ふ〜ん……」
私達は小屋を出る。
目的は木の実を集めること。森の動物に手伝ってもらいながらも順調に集めていった。
「さぁ、帰りましょうか」
「うん」
いつの間にか森の深い所まで来てしまっていたようだ。日は落ちかけている。いつ魔物が出てきてもおかしくないだろう。
私達は、やや早く歩きながらも談笑をしながら帰っていた。
「いつも森で食料を調達してるの?」
「基本はそうね。ただ、どうしても欲しい物とかは村とか街に行って買ってるわ。お金もそんなに無いしね。あと、貴方の服は私が作ったのよ!」
「そう……」
「まぁでもそんなにッ——!? シュベル!」
「え……?」
私は咄嗟にシュベルを此方側に引っ張った。
ズドンッ、と地面にそこそこのクレーターが出来る。もし当たっていたら骨折だけでは済まなかっただろう。
攻撃の正体は魔物だった。
……フィアルーブか……。速く倒さないと森が燃えてしまう。
——フィアルーブ、それは体に炎を纏った大狼である。普通の狼はウルフと呼ばれるのだが、稀に属性を持った大狼が産まれることがある。この狼は成長すると体が大きくなり、魔法を使って人間を攻撃してくるという厄介な魔物になるのだ。種類は属性の分だけ存在している。
「シュベル、私から離れないで」
「う、ん!」
私は無詠唱で魔法を発動させた。
……ライトアロー!
光の弓を作って魔物に当てる。命中した魔物は炎を消して倒れた。
——光魔法、それは私が一番得意な魔法なのだ。
「ふぅ、倒れたわね。シュベル、怪我は?」
「ない。ねぇ、今の魔法って……」
シュベルは信じられないような目で私を見てきた。どうやら分かっているようだ。
「ふふっ、今見たことは誰にも言ってはいけないわよ。まぁ、このことを黙っていられるんだったら一つお願いを聞いてあげる」
そう言うと、シュベルは少し考えた後もう一度私の顔を見て口を開けた。
「だったら僕に魔法を教えて。僕も自分で自分を守れるようにしたい」
別に断ることでもないので了承をする。
「分かったわ。魔法の特訓は明日からにしましょう。今日はもう暗いから」
もう日が落ちていて、辛うじてまだ夕日が見えているだけだった。
倒したフィアルーブを回収する。この狼の肉は食べれるのだ。
私達は急いで小屋に帰った。
——次の日。
約束通り魔法を教えることになった。
「じゃあまず、適性属性を知るところから始めましょうか。この水晶に手を置いて魔力を流してみて」
シュベルは魔力を流し始める。
すると、直ぐににピカッと水晶が光った。
「わっ」
「手を離して良いわよ。どれどれ、色は……」
水晶は美しい漆黒に染まっていた。
「黒い……」
シュベルは驚いたようで、思わず口に出してしまっていた。
「黒、黒ね……」
……あぁ、やっぱり運命は変えられないのね……。
「……シュベル、貴方の得意魔法は闇よ」
思ったより投稿が遅くならなかったので良かったです。展開について迷いました。
次回はシュベルの魔法特訓です。