第27話 謁見することになった
「はっ? 王家に呼ばれた?」
「そうよ、今日はこれから、謁見の為の準備をするわよ」
教わってから数日、今日も収納魔法の訓練をしていたところ、突然あらわれたアリサが信じられないことを言い出した。
「なんでいきなりそんなことになったんだよ?」
例のヘンイタ男爵への対策をしつつ、ここの魔導装置の補充をすることで滞在していたのだ。いきなり国のトップに呼ばれるとは寝耳に水だ。
「単純に、あんたの情報が漏れたのよ」
「ギルドマスターが口止めしてなかったけ?」
あの日、研究員には箝口令が引かれていたかと思うのだが、俺が首を傾げているとアリサが苦々しい顔をする。
「魔導師ギルドのスパイが入り込んでたのよ。それで、このままミナトを独占させてなるものかと考えて王家に情報をリークしたようよ」
「流石、仲が悪いだけのことはあるな」
こちらの世界の人間は現実世界に負けず劣らず既得権益が好きなようだ。
他の機関がのし上がるのを黙って見ていられないらしく、当然のように足を引っ張る。
「まったく、貴族連中もろくでもなければギルドにも信用できる人がいないなんて……身が休まる場がないわよ」
アリサは先程から呪詛をまき散らしていた。
「まあまあ、俺はアリサのこと信頼しているからさ」
ご機嫌を取ろうとそう言ったところ、
「ば、ばばば、馬鹿じゃない! なんで、私のことは信頼してるのよ。私だってあんたのこと利用してるかもしれないでしょ! …………………………でも、ありがと」
最後にポソリと御礼を言うあたりがとても可愛らしい。からかった時に見せる顔が好ましいと伝えたらどうなるのかが気になった。
「まあ、悪い手ではないわよ。ギルドマスターはあんたを独占しようとしていたけど、王家とのパイプが出来た方が余計な権力者に狙われ辛くなるし。あんたの言う、幸せな結婚相手も見つかりやすいしね」
それぞれの組織の思惑は別として、アリサだけは俺のことを考えてくれているのだとしり、心が温かくなる。
「おーけー、それで俺は何をすればいい?」
収納魔法の練習を切り上げると、どうすればよいか指示を仰いだ。
「そりゃ勿論、王家の人間と会うんだから最初にすることは決まっているわよ」
アリサはニヤリと笑うとスケールを取り出し、
「まずは服を仕立てるから採寸からね」
俺の身体を測り始めるのだった。




