結婚!?
僕は、浴槽に頭をぶつけて意識を失った。そこまでは覚えてる。
で、なんで今、すごい豪華なベッド寝かされて、知らないメイドさん達、30代くらいのお姉さん、10歳くらいの男の子、そして、服を着てるけど、真っ裸の彼女に囲まれてるの!?
「あ、あのう、これはどういう状態なのですかね!?」
恐る恐る聞いてみる。
「意識がはっきりしてきましたか?あなたは、頭から血を流した状態で、ここに運び込まれたのです。まあ、半ば引きずられていたようなものでしたが」
話を聞くと、どうやらこの方達が看護してくれたみたい。
「お手数おかけしてすみませんでした。おかげさまでだいぶ痛みも引きました」
「それは良かったです。私は、その子の母親のセリーヌと申します」
「これはご丁寧に。申し遅れましたが、二宮朱音と申します。この度は大変お世話になりました」
「まあ、とても好青年だこと。で、この子とはどういうご関係で?」
めちゃくちゃ不審がってるな!そりゃそうだよな。とりあえず、成り行きから話をした。
「そう。で、そのお風呂場は修一さんのお宅なのね?」
「そうです」
「そこに、うちの子が入ってきたと。しかも裸で。2回も」
「あ、はい」
「タルトとクラリス以外のみんなは、自分の部屋に行ってなさい」
セリーヌにタルトと呼ばれた10歳くらいの男の子は、すぐさまこの部屋を後にした。
「レオナ。あなたは、なぜ、朱音さんのお宅のお風呂場に、しかも服も着ずに行ったの!?」
「ちょっと待って、お母様!行ったというか、私の部屋のお風呂場が、この男のお風呂場と繋がってるのよ!」
セリーヌは全く信じてないような目つきでレオナを見ている。
「で、なんで朱音さんはこんなケガをすることになったの!?」
このケガは誰も悪くない。むしろ僕が驚かせてしまったせいかもしれない。
「待ってください。このケガは僕が勝手にしたものです。僕が驚いて大きな声を出してしまったせいで、レオナさんが転びそうになってしまったのを、僕が勝手に受け止めたせいですから」
レオナはなんだか泣きそうだ。セリーヌは大きくため息をついた。
「それは大変ありがとうございました。そうとは知らず、お礼が遅れてしまいました」
「いえいえ!そんな!」
「レオナは、また何で朱音さんを驚かすようなことをしたの」
レオナはビクリとした。
(言えない!言えるわけないでしょ!まさか、桶で抹殺しようとしてたなんて!)
「あ、いや、その・・・」
セリーヌは、しどろもどろになっているレオナを見て僕に尋ねてきた。
「朱音さん。この子は何をしていたのです?」
なんて答えたらいいんだ!ここで嘘をつくわけにはいかないよな・・・
「あ、その、僕が部屋に服を取りに行って戻ってきたら、その、レオナさんが僕の方に、その、お尻を、突き出していたのでびっくりして・・・」
そにばの雰囲気が凍りつく。
「レオナ・・・あなた、一体何をしているの・・・」
セリーヌさん!口では笑っていますが、目が笑っていません!クラリスの顔は真っ赤だ。
「ち、違うの!違くないけど、違うのよ!」
レオナはひどく混乱している。セリーヌの冷たい目線が降り注ぐ。
「何が違うの?あなた、嫁入り前の女のがする格好ではないわよね?裸で・・・男の人に・・・お尻を突き出すですって!」
セリーヌの堪忍袋の尾が切れた。
「そんなにお尻を突き出したいなら、私が引っ込ませてあげます!」
レオナは、セリーヌにお尻を叩かれている。
「あ、あのう、もうその辺で・・・」
僕は、居た堪れず声をかけた。
「この部屋が、僕の家のお風呂場に繋がってしまっている事は事実です。ですので、もうその辺にしてあげてください」
セリーヌは僕の言葉で霊性を取り戻した。
「でも、なぜ、朱音さんの部屋に、レオナの部屋が繋がってしまったのでしょう?」
そこが僕もよくわからない。考えられることは大地震しかないのだけれど、そもそも、他の空間と繋がるなんて聞いた事ない。
「僕もわかりません。でも、直前に、大きな地震があったのです。それが原因なのかもしれませんが」
僕たちは、少し考え込んだがやっぱりわからない。
「まあ、今考えても何もわからないわね。それともう一つ聞きたいのだけれど」
セリーヌはレオナの方を見た。
「あなた、朱音さんの事好きでしょ」
え?そなの!?そんなそぶりなかったけど!?
レオナは、顔を真っ赤にして口をパクパクしている。
「あなた、ずーっと朱音さんの事チラチラ見てるわよね。朱音さんが好きで、裸で襲いかかろうとしたって事はないわよね?」
「そ、そんなことするわけないじゃない!」
レオナもすぐに否定した。
「まったく。朱音さん。ご覧のとおり、レオナはあなたを好きになってしまったみたいなの。だから、この子を貰ってくれないかしら?」
「ええ〜ーっ!」
僕もレオナもびっくりした。
「レオナさん、僕のこと好きだなんて一言も言ってないですよ!?」
セリーヌは、笑いながら僕に言った。
「言ってるわよ。だって誘惑したことは、はっきり否定したのに、好きなことは否定してないでしょ?この子は素直に言えないけど、貴方のことが好きで好きで仕方ないみたい。それに、こんな事になっては、あなたが貰ってくれなければ、この子はもう、他に貰い手はないわね」
レオナは、ショックな顔をしている。そして、ウルウルしながら僕を見つめている。
「え・・・。レオナさん、僕が結婚相手でいいんです?」
レオナは、コクリと頷いた。
ま、マジかっ!どこがどうしてこうなった!
「はいっ、決まりっ!良かったわねー!レオナ!」
セリーヌは、嬉しそうだ。本当にこれでいいの!?お母様!?
「ちょっと長話しちゃったわね。もう少しゆっくり休みなさい。レオナ、あなたは朱音さんの看病をするのですよ」
レオナを残して、セリーヌとクラリスは部屋を後にした。
死して、ボイくにお嫁さんが出来ました。






