裸のふれあい!?
私はレオナ・ハーバート。ハーバート伯爵家の長女。伯爵家と言っても、先日お父様がお亡くなりになり、10歳の弟のジャミルが家督を継いだばかり。お母様は、政治や領地運営にはからっきしのお嬢様。私がしっかりしなくちゃダメなのに一体全体、何が起こっているの!?うちの屋敷の、お風呂好きだった私にお父様が作ってくれた私専用のお風呂場が、知らない男の人のお家に繋がっているんですけどっ!?
落ち着けー・・・落ち着けー、私!
いや、落ち着いていられるかっ!
がっつり裸見られたーっ!
見られたどころか、話しながらお風呂場出たり入ったりしてたーっ!
まずい・・・これはまずいわ・・・こんな事が社交界にでも知れ渡ったら、ハーバート家の威信にかかる!そして、私はもうお嫁に行けない・・・
こうなったら、もう、殺るしかない・・・殺るしかないわっ!
あの男は、お風呂場から飛び出していった。今のうちに何か武器になるものは・・・お、桶・・・これでいけるかしら?
でも、あの男もわけわからなく混乱してたよね・・・状況は私と同じなのよね・・・少しお話して、お互い今日のことは口外しないようにってすればいいだけかも。
私は、そんなことを考えながら桶を拾おうと前屈みになった時に、背後から勢いよくドアが開く音がした。
ガラガラッ!
「とりあえず、服を持ってきたよ!ええっ!?」
「あっ!ちょっ!」
とんでもない格好を見られて、とっさに桶を振り向きざまに振り上げようとした時に足が滑ってしまった。
「危ないっ!」
ドシっ!
「あいたたた・・・風呂場は滑るからいきなり動くと危ないよ・・・」
あれっ・・・私、転んだのにあんまり痛くなかった。この人が助けてくれたんだ。それに、この感触は・・・
ゆっくり目を開けると、私は、男の胸に抱かれていることに気がついた。
「え・・・あ・・・ちょ、ちょっと!」
私を助けてくれたのはわかるけど、私たち、今、服着てないのよ!?
恐る恐る男の顔をのぞいてみた。どこか打ったのかな?苦痛で顔が歪んでいた。先ほどまでは男の長い前髪であまり目が見れなかったけど、今は髪が左右に分かれていてよく見える。男は苦痛に顔を歪めながら、ゆっくりと目を開け私を見た。
「大丈夫?」
男のその優しい声と瞳に、私の鼓動は高鳴った。
(あれっ!?私、も、もしかして・・・!)
「だ、大丈夫です・・・!」
「よかった」
そう言った男の額から赤い血が流れた。
「だっ!大丈夫!?」
男は、ニコリと笑い意識を失った。
「ど、どうしよう!」
いやあ、元々、殺るつもりでいたけど、冗談だったのに、この状況は間違いなく私が犯人!
早くお医者さんに見せなくちゃ!
とりあえず、私は男が持ってきた着替えを着て、男にも下着を履かせた。頭から血が出ているし、服を着せてる時間はない!急いでお風呂場から出て、私の部屋のベッドに男を寝かせた。
「誰かっ!誰かっ!?」
私の呼ぶ声に何人かのメイド達が部屋に来た。
「お嬢様!何事ですか!?」
私のそば付のメイドのクラリスが近寄る。
「お医者様を!早くっ!」
私のベッドで頭から血を流している男を見て、クラリスは状況を察知したようだ。
「ただいまっ!」
他のメイド達は、下着一枚で頭から血を流している男と、見たことのない服装をしている私を見て、どうしたらいいのは戸惑っている。
「あなた達はこの男に何か羽織るものを!」
「は、はい!」
この先どうなるんだろう!?もしかして私、殺人者!?いや!絶対いや!
そうこうしているうちに、お医者様が到着した。
「うむ。だいぶ強く頭を打ったようだが、じきに意識が戻るじゃろう」
「よかった・・・」
お医者様の診察を受け、命に別状がない事がわかり、私は安堵した。
私の目から一粒の涙がこぼれた。
少し経って、男は意識を戻し、私の家族もこの事態を知る事となった。