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傷心令嬢は、皇太子殿下の一目惚れを受け入れたくない  作者: 三羽高明


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箱入り令嬢が、美貌の令息の一目惚れを信じたら(2/3)

 そんなある日、彼が切羽詰まったような様子でこんなことを言い出した。


――俺に結婚話が持ち上がった。


 私は衝撃を受けて固まった。マンフレートが結婚? それってつまり、もう私との関係は終わりにしないといけないってこと?


――親父は乗り気だ。俺の意思を無視して、勝手にことを進めてる。このままだと……。


――嫌!


 私は大きな声で叫んでいた。


――そんなの絶対に嫌よ! お願い、マンフレート! 結婚なんかしないで!

――俺だって嫌だよ。


 マンフレートは遣る瀬なさそうに言う。


――俺には君がいるのに。結婚するなら、クリスタ以外にはありえない。


 直接的なプロポーズだった。


 今まで「好きだ」とか「愛してる」とか言われたことはあったけど、まさかそれ以上の言葉をもらえるなんて想像もしていなかった私は、今置かれている危機的状況も忘れてすっかり有頂天になる。


――じゃあ、その人の代わりに私と結婚しましょう?


 私は大胆な提案をした。


――お父様にお話ししてみるから。大丈夫。マンフレートの家は代々宮内大臣の地位を世襲してきた名門だけど、私だって悪くないところの出身だもの。きちんと釣り合うわ。


――おいおい、冗談だろ?


 マンフレートは目を見開く。


――あの父親を説得するっていうのか? 娘を家に監禁しているような父親を?


 以前に話したことがあったから、マンフレートは私のお父様がどういう人なのかを知っていた。私がお父様の考え方は古めかしいものだって気付けたのも、彼にそう指摘されたからだ。


 マンフレート曰く、私のお父様は「イカレてる」らしい。彼のお陰で、私はお父様が聞いたら卒倒してしまいそうな汚い言葉をいくつも覚えることになった。


――あんなのと話すくらいなら、石にでも喋りかけた方がまだマシだ。俺のクソ親父がまともに見えるレベルなんだからよ。


 私はマンフレートとの関係をお父様に打ち明けていない。絶対反対されるに決まっているから。だからマンフレートと会う時はいつも、お父様にバレないようにと細心の注意を払っていた。


――もしクリスタが親父さんに、「結婚したい人がいるんですけど」なんて話したらどうなると思う? 「誰だ、そいつは」「どこで知り合った」「何故そんなことを言い出すんだ」ってな感じに質問攻めにされ、挙げ句「娘は誰にもやらん!」となるのがオチだぜ?


 マンフレートはお父様と直接の面識があるわけではないのに、その予想はかなり的を射ているように感じられた。確かにお父様はそういう人だ。娘と影でコソコソ会っていた男性のことなんて、信用しないに違いない。


――じゃあ、どうすればいいの?


 私は目の前が暗くなったような心地で尋ねる。


――私、あなたと離れたくないわ。

――……じゃあさ、駆け落ちしないか?


 マンフレートは思いもよらなかった方向に話を振ってきた。


――どこか遠いところへ行こう。それで、二人だけの新しい生活を始めるんだ。


 遠くへ行く? 二人だけの新しい生活?


 一度も考えたことのなかった話に、私の思考は追いついていなかった。


 けれど、マンフレートにじっと見つめられ「どうする?」と聞かれた時に結論は出た。


――一緒に逃げましょう。


 この美しい人が他の誰かのものになるなんて耐えられなかった。マンフレートは私の恋人だ。これまでも、これからも。


 浅ましい独占欲だった。今思い返せば、何故あんなことを考えていたのかと寒気がする。


 私たちは駆け落ち決行の日時とその後の予定を決め、その日は別れた。


 不安を感じなかったわけではない。今までろくに外出すらも許されなかった私が、急に外の世界に飛び出してやっていけるんだろうかと思い悩みもした。


 けれど、それ以上に喜びの方が大きかった。何よりも愛する人と一緒になれる。もうお父様の目を気にしながら屋敷を抜け出す必要もない。こんなに素晴らしいことが他にあるだろうか?


 そんな甘い夢を見ていた私は、駆け落ちの日にいきなり現実を突き付けられることになったんだ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  まさに恋は盲目ですね。  自分に肩入れしてくれてとはいえ、他人を、あからさまに悪く言う人間を信用してはいけないと思います。
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