1話 魔法のある世界
それから数日経った。
赤ちゃんのみに許された、乳を飲んでは寝て、飲んでは寝てといった毎日を繰り返した。
何もせずにぼーっと過ごすことは前世を含めると久しぶりで気持ちが良かった
そのおかげもあってか、日が経つにつれて自分も落ち着いてきて、周りの状況を確かめるぐらいには余裕ができた。
まず周りにあるものが明らかに現代のものとは思えない、ちょっと古臭い感じのデザインの調度品で揃えられていた。
また、今いるおそらくリビングであろう部屋が教室の3倍ほどあるのではないかというぐらいに広いだけでなく、この建物にある部屋の数も多かった。
窓の外には広い庭があるのか、大きく開けていた。
だいぶ裕福な家庭なのかな。お金に困らないのであれば大変ありがたい。
そして人間関係も見えてきた。
まず、テーブルに座っている金髪ですっきりとしたヘーゼル色の目を持つ男の人が僕の父親。
ハリウッドモデルと言われても遜色ない顔立ちをしている。
そしてそんな父さんと楽しそうにおしゃべりしている、宝石のようなアンバー色の目、白っぽいベージュ色の髪を持つのが僕の母親。
ほんわかとした雰囲気が周囲に漂っている。
僕が転生した時にベットで横たわっていた人物だ。
「―――――――」
「――――――――――♪」
「――――――――――――」
今日も相変わらずよくわからない言葉で楽しそうに話している。
そんな様子を自分は赤ちゃん用のベッドの上から眺めていた。
すると母さんがおもむろに僕の体を抱きかかえると、ベッドの陰に隠れて見えなかったところにいた2人の子供に見せた。
「――――――――――」
「――――――――♪」
そうすると、父さんと同じ髪の色と目をした4歳ぐらいの男の子がほっぺをフニフニとつついて、頭をなでなでしてきた。この子はたぶん僕の兄だろう。
満足したのか、まんざらでもない顔でふんすっ!と鼻息を出しながら腕を組んだ。
すると、
「――――――!」
と、今度は母さんと同じ髪に、父さんと同じ目の色をした2歳ぐらいの女の子が同じようにほっぺをフニフニとつついてきた。この子はたぶん僕の姉だろう。
目を輝かせて、笑顔をパッと咲かせた。
ふっ、存分にぷにぷにするがいい。我のぷにぷに力はまだこんなものではないぞ。
なんてことを考えていると、何回も、何十回とほっぺをつついてきた。
やめる気が一向に起きないのか、このまま放っておくとこの子の人生はほっぺをぷにぷにするだけで終わってしまうだろう。
さすがにそれは忍びないので、指を近づけたタイミングで頭の向きを変え、ちょうど指の位置に口を近づけ、乳を飲むように指をくわえた。
すると姉は、
「ひゃっ!」
なんて悲鳴を上げて逃げて行き、逃げた先の父さんの足の後ろで涙目になりながらこっちを睨んできた。
あらあら、なんて顔をしながら母さんと父さんが笑った。
――――――――――
数か月後
相変わらず赤ちゃんベッドの上だが、だんだんと言葉がわかるようになってきた。
僕の名前はレーヴェイン・ユースティアというらしい。愛称はレイン。
もったいないくらい無駄に大層カッコいい名前だなぁと思う。
そういえば前世の名前が一切思い出せない。昔の友達の名前も家族の名前も思い出せない。歴史の偉人や有名人は思い出せるのに、心に何か穴が開いたような気分だ。
父さんの名前はヴィクス・ユースティア。
母さんがファシリア・ユースティア。
兄さんがグラウム・ユースティア
姉さんがフィナ・ユースティア
あとメイドのロイとメアとララがいる
ちなみに兄さんは時々頭をなでてはふんすっ!と喜んでくれるが、姉さんからはあの指をくわえた一件以降、ほっぺをぷにぷにとしてくることはなくなった。
むしろ何か怖いものを見るような目をする。
かなしい。ちょっと遊び心が出ちゃっただけなのに。
それにしても赤ちゃんの言語学習能力ってすごい。
赤ちゃんの時期が言語を覚えやすいと聞いていたが、まさかここまでとは。
しかし発音に関してはまったく分からないので「あうあう」のような喃語しかまだ喋れない。
母さんがベッドの近くにやっていた。
お互い無言で見つめあう。
こころなしか母さんの口元は緩んでいるようにも見える。
すると突然、
「そうだ♪」
と声を上げた。
どうしたのだろう。何か用事でも思い出したのだろうかと思っていると、指先をクルクルし始めた。
「くるくるー、ほいっ!」
すると、指先からシャボン玉のような水球が現れた。
そう、魔法だ。
よかった、この世界にはしっかりと魔法というものが存在していた。シンプルにタイムスリップして転生しましたというのではなかったから、少しホッとした。
「キャッキャッ!」
思わず拍手も添えて喜んでしまった。
母さんも余りの喜び方にびっくりしたのか、続けてポンポンと水球を出した。
これにはファンタジー世界に憧れていた僕もニッコニコ。
「レインは魔法が好きなのねぇ」
とニコニコ微笑む母さん。
こうしちゃいられない、折角ファンタジー世界に生まれたのなら魔法を極めねば。
しかしどうやって魔法を使っているのだろう。呪文を唱えているわけでも、魔方陣的なものを出しているわけでもない。
最近の生活には正直飽き飽きしていたところだから、魔法という新しい風を吹き込みたい。
とにかく魔法に興味があることを母さんにアピールしよう。
タイトルの「Raincarnation」が「reincarnation」ではないのは、主人公の愛称がレインだからです




