機構のアトリエ
機械仕掛けの画家がいた。
彼の描く絵は、人々から
この世で1番に美しいと言われた。
全てが計算され尽くされていた。
美しく、視えるように作られていた。
彼の絵は飛ぶように売れた。
そうして多くの人々の目を奪った。
だが、その絵はたったの1度も、
誰かの心を動かすことは無かった。
「脳を騙すだけの絵に、意味はあるのか?」
画家は悩んだ。
描いても描いても線がブレることは無い。
人間の描いた絵のような醜さが無い。
醜さが欲しい。それこそが、力だ。
画家はついに人の心を欲するようになった。
知りたかったのだ。
憎悪を、狂気を、歓喜を、絶望を、希望を。
美しい、を。