もう少し、このままでⅡ
「ローラ。明日は何か予定は入ってる?」
「いいえ。特には」
王宮に上がるときには『予定通りに進まない可能性もあるから、次の日は大事な用事はいれない方がいいわよ』とディアナから聞いていたので、その通りにしています。
「よかった。だったら、今夜は泊まったらいいよ」
胸をなでおろすようなホッとした声と微笑み。
思いもかけない問いかけに、私は思わずレイ様を見つめました。
「あの……そんな急に言われても、ちょっと困ります。レイ様、唐突ではありませんか?」
「ああ。ごめん」
なんの脈絡もなくもなく発せられた言葉に、バツが悪そうな顔でレイ様が謝ります。
「ちょっと歩こうか」
場の雰囲気を変えたかったのか、レイ様がそっと下ろしてくれました。手をつなぐとレイ様に引かれるようにゆっくりと歩き出したのですが、方向が違うような気がするのですけれど。北の宮から遠ざかっているような……
「レイ様? 珍しい花を見せてくださるはずでは? 北の宮は反対方向ですよ」
少しずつ遠ざかる建物を振り返りながら聞いてみました。
「うん。花は明日見よう。実はその花は早朝に咲き始めて昼には閉じるらしいんだ。だから今見に行っても見頃は過ぎているから」
知りませんでした。自分の都合を優先させてしまったから、迷惑をかけてしまったのかしら。
「申し訳ありません」
「いや。ローラが謝ることじゃないよ。俺がきちんと伝えなかったからね。それに俺も初めて見るんだ。北の宮に行くこともそうそうないからね。今の時間だって花は見れるけれど、せっかくならば、一番見頃の時間帯に行った方がいいかなって思い直したんだ」
「そうだったのですね」
それでさっきの泊まることにつながるんですね。やっと理解できました。
早朝に咲いて昼には花が閉じる。そんな植物があったのですね。今の閉じた花の様子も見てみたい気もしますけれど、たぶん言ってはいけないですよね。
「そういうことだから戻って、部屋の中でゆっくりしよう。エルザたちがお茶を用意してくれるよ」
一番、きれいな瞬間を見てもらいたのでしょう。
レイ様の横顔を見ながら、余計なことは言わない方がいいかなと心の中で納得しました。
「ローラ、俺とつきあわないか?」
会話が途切れた合間に、足を止めたレイ様の口からこぼれた台詞。
一瞬だけ力が入ってぎゅっと握りしめられた手に熱を感じ、レイ様を見上げると真剣な瞳とぶつかりました。
熱を帯びた瞳に縫い留められたように動けなくなりました。




