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アフタヌーンティーⅡ

案内されたのは、何もない真っ白な壁に囲まれた部屋でした。

 家具もなく調度品もない使われた形跡すらない無垢な空間。


 広い室内にいるのは私とエルザだけです。


 人前で足をさらすという前回の失態をふまえて、今日は靴を履き替えるために別の場所へと移動したのですが、通された部屋がここでした。

 今は椅子に座っていますが、普段はそれさえもないのでしょうね。私のために準備してくれたのでしょう。


「エルザ。この部屋に入ってもよかったのでしょうか?」


 室内履きを履かせてもらいながら聞いてみました。静謐に包まれた室内には、人の気配さえも拒絶しているような雰囲気があります。


「まだ誰も使ったことがない部屋ですから、お気になさらなくて大丈夫ですよ」


「誰も? ですか?」


「はい。この宮はレイニー殿下の居住地ですし、現在はお一人でお住まいですからね。使っていない部屋もたくさんあるのですよ。ここはそのうちの一部屋なので気になさることはありません。それにレイニー殿下の指示ですしね」


 エルザは脱がせた靴をトレイに置くと軽く微笑みました。


「お一人で……」


 エルザの何気ない言葉がちょっと引っかかりました。


「レイ様は寂しくないのかしら?」


 広い宮の中に一人。

 私は家族と生活していますから、寂しく思うことはありません。両親ともに忙しくても邸にいれば食事も一緒に取りますし、体のことも気遣ってくれます。

 もちろんレイ様のそばにはセバスやダン、エルザたちやたくさんの使用人がいます。みんなレイ様のことを大事に思ってくれているでしょう。

 けれど、家族とは違いますものね。


「そうですね。時には寂しく感じることもおありになるかもしれませんね」


「そうですよね。家族と一緒であればもっと楽しく気楽に暮らせるのでしょうけれど」


「立志式を終えたら、独り立ちをして与えられた宮で生活する。これが、代々伝えられている王家のしきたりですからね」


 立志式は十四才。貴族もこの儀を行います。

 そして、十五才の社交デビューまでにマナーやダンスや必要な教養を学ぶのです。

 十四才で成人としてみなされるとはいえ、貴族はまだ親の庇護の元で暮らしていますのに。

 同じ敷地内とはいっても王族は親元を離れての生活。その身には宮の主としての責任も課せられているでしょう。


 大変だわ。

 家族のいない、一人っきりの邸を想像して私は身を震わせました。


「それよりも……。レイニー殿下ご自身が新しい家族をお作りになれば、なお一層幸せになられると思いますよ」


 私を椅子から立ち上がらせながら、さらりと彼女の口から飛び出した言葉。


「新しい、家族……」


 エルザの意味深なセリフの意味など、この時は理解することができずに、部屋を出たのでした。


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