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「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞  応募作品

コントロールド・ミッション

作者: マガミアキ

 全ての状況が制御されているなかこなす任務は容易い。ナノマシンの先進軍事技術が国際テロ組織に流出し、事態収束のために私はA国に赴いた。組織の中枢に潜入し目標を回収して脱出。帰還の民間機のファーストクラスでシャンパンを傾ける今に至るまで、何ら障害は無かった。全ては私の所属する機関が制御しているのだ。私はただ、与えられた任務――いや作業をこなすだけでいい。

「シャンパンをお注ぎしますか?」

 美しい女性CAがボトルを手に声をかけてきた。

 それを最後に、私の意識は途切れた。


 全ての状況は制御されている。わたしが指令通りの便にCAとして潜入すると、乗客のなかに目標の男がいた。男は流出したナノマシンの現物を自らの血液に注入して運搬している最中で、ナノマシンを敵国に売却するつもりなのだという。機関の裏切り者だ。

 満足げにグラスを傾けている男に声をかけ、首筋に即効性の睡眠薬を注射した。その隙に男の血液を抜き取ってナノマシンを回収する。

 男が機関の言う通りの裏切り者かどうかは確認しようがない。ナノマシンをA国から秘密裡に持ち出すため、彼の血液のみが利用されたのかも知れない。

 機関にとってのわたし達は駒に過ぎない。この男は捨て駒にされたのだろうか。

 有用な駒であり続ければ切られることはないと信じて動く。血液の入ったスピッツをポケットにしまうわたしの指は震えていた。

「お姉さん、僕の鞄を取って?」

 ビジネスクラスに入る所で小さな少年に声をかけられた。指定された鞄を収納棚から降ろす。

「こちらでよろしいですか?」

 尋ねた瞬間、背後のハッチが爆発音と共に吹き飛び、わたしの身体は鞄と一緒に機外に投げ出された。


 全ての状況を制御するためには、全ての駒が完全に予測可能なレベルまで規律正しく動くことが必然だ。緩み切ったあの男は駄目だ。早晩、駒として機能しなくなるだろう。乗客として揃えたその他の無用な駒と一緒に整理することにする。女は緊張しすぎるきらいはあるが、任務に真摯であり今後も有用な駒になることだろう。僕の渡した鞄がパラシュートだと気付けなければそこまでだが。

 僕は女のポケットから抜き取ったスピッツを保冷ケースにしまうと、自分のパラシュートを背負い、口を開けたままのハッチから跳び下りた。

 A国領空で民間航空機が原因不明の爆発。国際情勢は一層流動的になることだろう。

なろうラジオ大賞2 応募作品です。

・1,000文字以下

・テーマ:コントロール

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