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コイに堕ちた悪役聖女はナナバイ可愛い  作者: 緋色の雨


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1ー4 三人称:エンド王子の明るい未来計画

 王立学園は四つのクラスから成り立っている。

 主に王侯貴族が通う特別クラス、穢れを浄化する者達を育成する特派クラス。使用人を育成する使用人クラス。その他の生徒が通う一般クラスである。


 この中でも、特別クラスは他のクラスと校舎が離れている。


 だが、特派クラスの生徒が特別クラスの護衛を務めたり、使用人クラスの生徒が学園内で特別クラスの使用人を務めたりと交流はあり、完全に隔離されている訳ではない。


 なにが言いたいかというと――


 クラウディアがエンド王子に婚約破棄を申し渡されたことは、その日のうちに学園中に広まったし、そのクラウディアがとびきり可愛くなったことも同じく伝わった。

 そして、第四階位に目覚めたこともまたしかり、である。


 当然、元婚約者であるエンド王子の耳にも入っていた。

 彼はその話を聞いて――ニヤニヤしていた。


「くくっ、俺に色気がないと言われれば、次の日にはイメチェンして可愛くなり、結果を出さなければ学園を追放すると脅せば、一気に第四階位まで上り詰める。あいつは俺と縒りを戻したくて必死だな。意外にも健気で可愛いところもあるじゃないか」


 処置なしである。


 だが、彼の意見に異を唱える者はもはや周囲に残っていない。

 残っているのは彼に媚びを売る者達ばかりである。

 ゆえに――


「たしかにたしかに、エンド王子の言うとおりです。いかがいたしましょう? さっそく、彼女に婚約者復帰を打診してやりますか? おそらく、泣いて喜ぶでしょう」


 当然ながら、こういう意見も上がる。


 ただし、こんなことを本気で思っているのはエンド王子の周囲でもごく一部だ。

 ノアの勇気ある行動を評価している者もいれば、クラウディアに同情している者もいるが、それを口にすれば最後、自分がエンド王子の不興を買うことは目に見えている。

 ゆえに彼らは、我が身可愛さに同調することしか出来ない。


 そんな訳で、反対意見は上がらない。

 気を良くしたエンド王子はにやけ顔で「いや、焦りは禁物だ」と口にした。


「復縁はまだだ。たったこれだけの期間であそこまで可愛くなり、第四階位にまで上り詰めたのだ。もう少し焦らしてやれば、もっと俺好みの女に成長するだろうからな!」

「さすがです、エンド王子! では、もっともっと彼女を焦らしてやりましょう!」


 この意見には、取り巻き全員から賛成の声が上がった。彼らのほとんどは内心で、出来ればそのまま彼女のことは忘れてくださいと思っていたが王子は気付かない。


 この短期間で垢抜け、格段に可愛く、そして優秀な聖女となったクラウディア。

 彼女に惹かれ始めたエンド王子はまったく気付いていなかった。


 クラウディアはエンド王子の婚約者という地位が嫌だった。クラウディアがイメチェンをしたのはノアのためであり、一気に第四階位へ至ったのもノアへの想いゆえであること。


 クラウディアの心はずっと前からノアに捧げられていたし、今回はその身までもがノアに捧げられている。ノアが寝不足になるくらい、クラウディアがノアに尽くしていること。


 なに一つ知らないエンド王子。

 彼はクラウディアが自分に媚びへつらう日を思い浮かべ、口の端をニヤリと吊り上げた。








 話は変わるが、メリッサはいま自宅療養という名目で自宅待機を命じられている。エンド王子などは気付いていないようだが、その病名は――虚言癖である。

 さすがに、この国の王子を騙すのはまずかったらしい。

 

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