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3ー8 連戦

 夜の帳が下りる森の中。

 先頭を先生が走り、殿はティリアが引き受けた。一番安全な中央にクラウディアを配し、俺はその護衛を務めている。その陣形を保ち、魔導具の明かりを頼りに突き進む。


 先頭の先生が出会い頭の魔物を斬り伏せて、ティリアは背後からの奇襲に警戒する。瘴気を浄化することの出来るクラウディアの安全が最優先である。


 一番危険なのは後方とも言われているが、魔導具による空撮映像を得ている本部の索敵能力が凄まじい。その情報を得ている先生はときに不意打ちで魔物を殲滅。

 またあるときは回避して森の中を突き進む。


 ときどき背後や側面から襲ってくるような魔物もいるが、すべて事前に察知できている。俺達は、不意打ちにもなっていない敵の攻撃にカウンターをあわせて滅ぼしていく。


 そうして最初の三十分くらいは好調だった。

 だが、瘴気溜りに近付くにつれて爆発的に魔物が増えていく。次第に回避は不可能になり、一度の戦闘にも時間が掛かるようになってきた。


「あぁもうっ、血糊を拭う暇もないぞ!」


 ブラウンガルムを斬り伏せるが、その一撃で沈まずに起き上がってきた。もともと切れ味が低いロングソードではあるが、血糊でますます攻撃力が下がっている。

 俺は再び立ち向かってくるブラウンガルムにトドメを刺した。


 ひとまず、新たな敵が視界内にいないことを確認して溜め息をつく。


「……これで、何体目だ?」

「はぁ……。二十体を超えた辺りまでは……覚えてるけど、三十体くらい、かな?」


 俺のぼやきにティリアが答えた。

 見た目に寄らずタフなティリアだが、さすがに連戦続きで疲労しているようだ。


「大丈夫か、おまえ達?」


 カルロス先生がこちらの様子をうかがってくる。

 その先生は、返り血でかなり凄惨な姿になっていた。


「負傷はしていませんが、少し疲労が溜まっています。剣も血糊で切れ味が落ちて、敵を倒すのに苦労するようになってきました」

「あぁ、おまえら連戦は初めてか。血糊で落ちた切れ味は炎の魔術で焼いてから布で拭えばだいぶマシになる。目的地まであと少しだ。いまのうちにコンディションを整えておけ」

「了解しました」


 先生の教えに従い、炎の魔術を展開するための魔法陣を魔力で足下に描く。


「ノア様、炎の魔術なら私も使えるよ?」

「いや、クラウディアの魔力は他のときのために温存しておいてくれ。俺は戦闘中に魔術を使うほどの技量はないからな。ティリア、おまえの剣も貸せ」


 自分の剣に続き、ティリアの剣の脂も炎で焼き尽くす。それから布で拭き取って剣の状態を整え、クラウディアが渡してくれた水筒で水分補給をおこなった。

 そこに、本部と連絡を取り合っていた先生が戻ってくる。


「おまえ達は想像以上によくやってくれているが、魔物の発生が想像以上に早い。ガゼフ達はもう少し進んだ場所にいるが、状況があまりよくない。……いけるか?」

「もちろん、行きます」


 行けるか行けないかではなく行くと口にする。

 だが、先生は俺の決断に首を横に振った。


「ノア、よく聞け。世の中には、行かねばならぬときもある。だが、無茶をしては被害が増えるだけの結果にもなりかねない。判断はよく考えて下すんだ」

「無茶と思うなら、ガゼフ達を見捨てろ、と?」

「でなければ、ここにいるおまえの仲間が死ぬ。だからこそ、正しい判断が必要だ。もう一度聞く。おまえの決断が、仲間の命を左右する。それでも、問題ないと言えるか?」


 今度は即答せず、二人のコンディションを確認する。

 クラウディアに問題はない。魔力も温存できている。瘴気溜りの浄化だけでなく、不測の事態に治癒の奇跡を重ねる余裕もあるだろう。


 問題はティリアの方だ。

 驚異的な活躍をしているが、俺より一つ年下の女の子であることを忘れてはならない。見かけによらずタフだとしても、俺より体力があるとは思えない。


「お兄ちゃん、私なら大丈夫だよ」

「……本当か?」

「足手まといになるような嘘は吐かないよ。それに、少し眠れたからね」

「そうか。分かった」


 俺はティリアの言葉を信じた。

 自分の決断が仲間の命を左右する。

 その言葉の重みを感じながら、それでも俺は問題ないと先生に告げる。


「……良いだろう。俺も、おまえ達が問題ないと判断する。その上でいまの状況だ。ガゼフ達はこの先にいる。いまのところ凌いではいるが、リックが足を負傷しているらしい」

「それが撤退できない事情ですか?」

「ああ。レティシアの魔力が尽きているらしい。だから、現地に着いたらクラウディアがリックを回復。その上で可能なら瘴気溜りの浄化。他の者はそのサポートだ」

「分かりました」

 

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