剣戟の速さに憧れて
「……すごい……!!」
村祭りで剣舞を見たときに、僕の口から出た感想はそれだけだった。鮮やかな動き、目にも止まらぬ剣戟、銀閃。そのどれもが素晴らしく、そして僕に憧れを抱かせるものだった。
「特にあの速度……本当に速い……」
中でも僕は、目にも止まらない程の速度に心惹かれた。その日、僕は決めた。
「世界最速の剣戟を放てる男になってやる!」
僕、レイが九歳の秋のことだった。
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それから早いものでもう一年が経過した。暇な時はずっと素振りをやっていたので、体つきが変わってきている気がする。以前より重たい物を簡単に持ち上げられるようになってきているのだ。
「レイ〜、これをあっちの物置に持って行っておくれ〜」
「分かったよ、母さん」
こんな具合で重たい物を運ぶ手伝いが増えた。お陰でより体力が付きそうだ。
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それからさらに一年、素振りをしていると陰口を叩かれるようになっていた。
「アイツまた剣持ったまま突っ立ってるぞ」
「変なやつだな」
剣を持って突っ立っているようにしか見えないほど動きが遅いということなのだろう。もっともっと速く動けるようになった方がいいということだ。
そう思ってより真剣に素振りを続ける。
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それから半年ほど経ったとき、素振りをしていると庭が荒れるようになってきた。どうしてかは分からないけれど、今度から森の中で素振りをしよう。
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さらに一年後。素振りをしていると木剣が痛むようになってきた。少し妙だけれど、気にせず続ける。
ちなみに、最近素手で木を斬れるようになってきた。もっともっと頑張れば、鉄くらいなら斬れるようになるのかもしれない。素振りを続ける。
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そんなこんなで十五歳になり、いよいよ独り立ちの時期がやってきた。半年ほど前に森で拾った、反った片刃の剣を身につけ、父さんや母さんに見送られて村を出る。
目指すは最速の剣士、まずは自分の実力がどれくらいなのか見に行こう。
そう思った僕は、もうすぐ近くの街で行われる『求剣祭』に出場することにした。
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『求剣祭』は、『剣を求めるものたちの祭り』という意味で名付けました。