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こんにちは就職先をください

私の名前は本田望結。地方の大学に通う大学4年生だ。今はコートや手袋が欠かせない冬の季節。普通の大学4年生であれば就職活動なんかも終わって遊んでいる時期なんだろうけど・・・


「また・・・お祈りメールか・・・」


 未だ就職先が決まっておりません。


「大丈夫よ!まだ選考会やっているところもあるわ!」


「そうだぞ!父さん達の時代なんか就職氷河期で年明けまで就職活動してたんだぞ!」


お母さんとお父さんが必死になって私を慰めている。明るく振る舞っているつもりなんだろうけど、夜中に二人で私のために就活サイトをいくつも検索し、まだ選考を行なっている企業を探してくれていることを私は知っている。二人とも何食わぬ顔で企業のパンフレットを郵便受けに入っていたとか言って私に渡してくるけどバレバレだ。それに、お祈りメールが届いた日には私以上に落ち込んでいることも知っている。


「うん・・もう少し頑張ってみる。」


励ます両親を背に私は逃げるように自分の部屋に入った。

 涙が出そうになる。もう30社以上物面接を受けて全滅。理由は分かっている。私は自分に自信が無い。(理由はあまり思い出したくない・・・)その所為で面接官からの質問に対して自信を持って答えることが出来ずしどろもどろになってしまうのだ。


「はあ・・・もう嫌になっちゃうな・・・」


自分の部屋のベッドに倒れこむように寝ころんだ。もう私は就職に対して心が折れかけていた、その時、ピコンという音が私のスマホから鳴った。


(なんだろう・・・?)


あまり聞き覚えのない通知音だったため首をかしげながらスマホを見てみると、一件のメールが届いていた。メールの内容は


初めまして三女神教会の採用担当です。本田望結さんの経歴から我が三女神教会のスタッフとしてご活躍いただけると思い連絡させていただきました。


ご興味があるのでしたら明日、〇〇市にある三女神教会までお越しください。


 怪しい。どう見ても怪しい。まともな業務内容が書かれていないし、私の登録している就活サイトを通さずにメールを送ってきている時点でかなり怪しい。それに三女神教会という名前。私が子供の頃よく遊んだ教会の名前だ。あの教会私が子供の時でもかなり古かったし、スタッフなんていなかった記憶がある。まあ、教会の庭でしか遊んでいなかったし、もしかしたら教会の中にスタッフがいたのかもしれないけど。

ともかく普通の人ならこんなメール無視するんだろうけど、度重なる不採用通知に半ば自暴自棄になっていた私はその怪しげなメールに対して


“ありがとうございます。三女神教会に明日の9時頃お伺いします。”


と返信してしまった。今思えばこれが運命の分岐点だった。それも普通の人ならまずあり得ない。世界の命運を担うような仕事をすることになるなんて。この時は思ってもいなかった。


・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・


次の日、怪しげなメールに書かれているとおり、私は街の路地裏にある三女神教会にリクルートスーツを着て向かった。両親達は朝からどこかへ出掛けていったため誰にも見送られることなく私は家を出た。

午前8時50分。私は三女神教会の門の前まで来ていた。やはり私の思い違いなどではなく、記憶のままのボロボロの教会だ。いや、記憶の姿よりもひどいかもしれない。それもそうだ。何せ10年以上前の記憶なのだから。私は錆び付いてギイィと異音の鳴る門を開け、教会の中に入った。


「うわ・・・教会の中ってこんな風になってたんだ・・・」


教会の中は10列ほどのベンチがあり、前のほうには三人の女神像、左からおばさん、女の子、お婆さんの女神像が並んでいた。

現在午前9時、約束の時間だ。私はあたりを見渡してみたが人の気配はない。やっぱり悪戯メールだったのかと思い後ろを振り返るとそこにはお婆さんがいた。私が声も出せずに驚いているとお婆さんは私を見てこう話した。


「お前さんは何しにここへ来た?」


「ふぇ?!ええと・・・ここのスタッフにならないのかと言われまして・・・」


しどろもどろになりながらもお婆さんの質問に答えると、お婆さんはにこりと笑うと


「そうかいやっと見つかったんだね」


と言って女神像へと近づいていく。


「さあ姉様たち起きてください!貴重な働き手が来てくれましたよ!」


お婆さんは女神像に向かっていきなりこんなことを言い出した。私は目の前の老婆がいきなり叫びだしたのにぎょっとしていると、


「きゃっ!」


目の前の女神像がまばゆく輝き始め、私は思わず目を閉じてしまう。そして光が収まった頃には


「「・・・」」


二人の女性が女神像の前に立っていた。


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