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魔物との遭遇

 依頼人の指定した集合場所は、この街の北門前だった。門の前には屋根付き馬車が停車しており、それを取り囲むように五人の冒険者がいた。


 彼等五人も、俺達同様に警護の仕事を受けたのだろう。俺は馬車の御者に挨拶を済ませ、今回の仕事の細部を確認した。


 俺達は馬車に乗る依頼人を、隣り街まで警護する。報酬は隣り街に到着してからだ。他の五人の冒険者への挨拶もそこそこに、俺達は早速出発した。


 北門を出た俺達の前に、幼児を抱えた集団がいた。特に気に留めなかったが、その集団の中に恐ろしい程までにボロボロの革の鎧を着た男がいた。


 相当金に困っているのだろう。俺はそれ以上は考えず、警護の仕事に意識を向けた。



 まだ午前中の早い時間だ。順調に行けば夕方には目的地に着く筈だった。街を出てから程なくして、屋根付き馬車の窓が開かれた。


 今回、俺達の警護対象者がその素顔を見せた。金髪の長い髪の美しい少女だった。その清楚で上品な雰囲気は、深窓の姫君を連想させた。


「エリクさん、イバトさん、クレアさん。今回は宜しくお願い致します」


 なんと深窓の姫君は、俺達の名前を呼んだ。しかも礼儀正しくだ。イバトが不思議そうに姫君を見ている。


「なんで?なんでアンタ、俺達の名前を知ってんの?」


 イバトが疑問を素直に口にする。姫君は微笑みイバトに優しく語りかける。


「私を守って下さる方々のお名前を覚えるのは、依頼人として最低限の礼儀です。あ、申し遅れました。私はユリサと申します」


 ユリサと名乗った令嬢は、俺達に頭を下げた。俺は驚いていた。ユリサ嬢は確実に裕福な家の者だろう。


 だが、金持ち特有の嫌味がこの令嬢には全く無い。本人の気質か、それとも両親の教育の賜物か。


「ねえユリサさん。隣り街まで何の用で行くの?」


 クレアが不躾にユリサ嬢に質問する。冒険者は依頼人の私事に詮索せず、仕事だけこなせばいいのだ。


 その冒険者の常識を、この魔族少女は全く理解していなかった。


「······はい。私の両親は別々の街に住んでいるので、一ヶ月事に私は二つの街を行き来しているんです」


 無視すれば良い物を、ユリサ嬢は真面目に答えた。俺はそこでクレアを止めるべきだった。だが、クレアは不躾な質問を続けた。


「なんで両親が別々の街に住んでいるの?仲が悪いの?」


 俺は直ぐ様、クレアの赤毛の頭を小突いた。


「痛い!な、何すんのよエリクおじさん!」


 クレアの非難の声を、俺は冷然と無視した。


「余計な事を聞くな。俺達は仕事だけをこなせばいいんだ。全く。空気を読めないってのは本当らしいな」


 俺の小言が効いたらしく、クレアは涙を瞳に溜めて馬車の前に走っで行った。その時、俺はイバトの視線に気付いた。


「なんだイバト。クレアについて、何か言いたい事でもあるのか?」


 クレアを庇う発言でもするのかと思いきや、イバトの言葉は全く関係無い物だった。


「え?別に。クレアが怒られても、俺関係ないし。それよりエリクのおっさんって、三十歳なんでしょ?なんでそんなに白髪が多いの?」


 ······関係ない?このガキ、勇者目指しているとほざく割に冷たい奴だな。


「俺は苦労が表に出るタイプでな。冒険者なんて危険な生業をしていると、白髪が増える奴もいるんだ」


 俺の懇切丁寧な返答にも、イバトは興味が薄そうな返事をした。このガキ、よく分からん奴だな。


 あんなに勇者になると連呼していた割に、それ以外の事は妙に冷めている。クレアに対してあんな励まし方をしたと思ったら、今の態度だ。


 俺が意識をガキ達に向けていた時、異変は起きた。正午を過ぎた頃、馬車は魔物達に取り囲まれた。




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