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冒険者の世界

 この世界には人間の国々、魔族の国々が存在している。人間と魔族の人口比は三対一と言われ、二つの種族は昔から争いが絶えない。


 争っているのは人間の国同士もだ。魔族同士の国も同様で、昔から戦争ばかり起こしている。


 その人口比を補う為に、魔族達は魔物を購入し、自国の勢力圏に徘徊させている。魔物も好き勝手に移動するので、俺達人間の住む場所に現れる。


 魔物を造り出しているのは、バタフシャーン一族と言う集団らしい。彼等は魔族、人間問わず魔物を売り込み、荒稼ぎしている。


 魔物は貨幣を元に造られている。強い順に金貨級魔物。銀貨級魔物。銅貨級魔物だ。魔物を倒すと、魔物は姿が消失し貨幣に変わる。


 俺達人間の世界には、冒険者職業安定所と言う組織がある。略して冒職安という国の機関だ。そこに登録すると、冒職安が斡旋する仕事を受けられ、報酬を得る事が出来る。


 冒険者は、レベルと言う強さを数値化した物を与えられ、そのレベル次第で仕事の難易度を決定する。


「······まあ大雑把に言うとこんな感じだ。何か質問はあるか?」


 俺は大衆食堂のテーブルで、食後の緑茶を呑気に飲んでいる二人の子供に聞いた。


「おれ、今レベル幾つかな!?幾つになれば勇者になれんの?」


 勇者志望らしいイバトが無駄に元気良く質問して来た。レベルは冒職安で測定出来るが、まだ十五歳で登録出来ないイバトには無理な話だ。


 因みにレベル四十以上の者を「練達の頂き」と言う称号で讃えられる。これは、人間で言うと魔王と戦える実力に達した事を意味する。


「そっか!レベル四十になればいいんだ!」


 いや、だからイバト。お前はそのレベルが計測出来ないんだよ。と、言うかレベル以前の問題だ。


 勇者になれる確率なんて、俺から言わせれば奇跡みたいた物だ。恵まれた天賦の才。たゆまぬ努力。仲間との良縁。底知れぬ強運。


 これらが備わって、初めて人は勇者と言う奇跡の存在になれる。俺はそう思っている。


「おいイバト。お前、冒険者なんて生業、一体何歳まで続けられると思っている?」


 俺は能天気なガキに、現実の一端を教えなくてはならないと考えた。


「え?知らないよそんな事。別に好きな歳までやればいいじゃん」


 予想通りの考え無しの答えに、俺は意識的に、少し低い声を出した。


「冒険者が引退する平均年齢は四十歳と言われている。四十を過ぎると、仕事をしたくても冒職安で断られるケースが多くなる」


 仕事を依頼する側も、絶頂期を過ぎた者より、若々しい者に頼みたい。年を取っても、相当の実力者なら話は別だが。


「六割。この数字が分かるかクレイ?」


 クレイは自分に質問が来るとは思わず、油断していたらしい「え?え?」と繰り返し動揺していた。


「冒険者が無事引退出来る数字だ。後の四割は命を落とす」


 俺は世間知らずのガキ達に、冷酷な現実を伝えた。


 

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