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黒い鎧の戦士

 親である聖竜は相変わらずコルカの腕の中で眠っている。子である小竜は後方に逃げたクロシードを威嚇して聖竜には興味を示していない。


 俺は無言でコルカを見たが、彼も無言で首を振る。俺達には竜の親子の絆は理解出来なかったが、卵の内に生き別れになったのが理由かもしれない。


 竜と言っても獣の一種。お互い離れれば親子の関係など無くなるのかもしれない。それにしても小竜のあの鳴き声は何だったのか。


 あの頭が割れるような鳴き声。聖竜は世界を滅ぼす力を持つと言われているらしいが、小竜の小さな身体にも既に恐ろしい力が備わっているのか。


 一方、離れ離れになった人間同士の親子の子供の方を俺は見た。


「ホケット。親の手下が近くに来ているんだ。帰りたかったら帰れるぞ?」


 俺の言葉に、ホケット少年は複雑そうな表情をした。


「······正直微妙なんだよね。あそこに居ても人殺しの方法とか、人を騙す方法とかばっかり教えられるんだよね」


 ホケットは少年らしからぬ悩みを告白した。なる程。クロシードに誘拐され環境が変わり、ホケットなりに思う所があったのかもしれない。


「そうだ!このガキはいざと言う時に人質として使うんだ!余計な事を言うな!!」


 余計な事を叫んだクロシードは、再び小竜に襲われ絶叫する。


「それにしてもクレアさん。貴方の魔法に私達は救われました」


 ネテス老人を背中に抱えながら、ユリサが魔族の少女を称賛した。


「え?そ、そうかな。えへへ」


 自分の魔法を褒められるのが三度の飯より好きな筈のクレアが、傍目から見ても余り嬉しそうでは無かった。


 むしろ元気が無いように見えた。恐らくクレアは魔物以外に呪文を仕掛けたのは初めてだったのだろう。


 魔物以外の初めての実戦に、魔族の少女は誰もが通る恐怖と震えを感じていたのかもしれない。


「あれ?あそこに誰か寝てるよ?」


 イバトが指差した方向を全員が見た。黒い鎧を身に着けた男が寝そべっていた。男の乗っいたと思われる馬が、男の側で草を食べていた。


 俺達は用心しながら男に近付く。男がウラフ軍団の一員の可能性は十分にあった。男は俺達に気づき、慌てた様子も無く立ち上がる。


 男は大柄だった。コルカの身長に比べ弱冠低いが、太い腕と首が屈強さを強調する。短い黒髪に精悍な顔付き。


 若い男だ。まだ二十代前半に見える。長い耳は魔族である事を無言で証明していた。


「······人間に魔族。子供に女。老人までいるのか。妙な一行だな」


 魔族の男は俺達を一瞥し、不思議そうに呟いた。遠慮と思慮を知らないイバトが男に近付く。


「魔族の兄ちゃん。あんたウラフ軍団の人?」


 魔族の男は、自分を見上げ不躾な質問をするイバトに対して特段不機嫌そうな顔をしなかった。


「それは最近売り出し中の武装勢力の名か。俺は違うぞ。休暇中の旅行者だ」


 魔族の男は気さくに答えた。厳つい顔をしているが、案外話しやすい男かもしれないと俺は感じた。


「親切で言っておくがこの先は行き止まりだ。妙な奴等が襲ってくるから引き返した方がいいぞ」


 魔族の男が右手の親指で自らの後方を指し示した。男に気を取られて気づかなかったが、少し先を見ると、木々の隙間から巨大な岸壁がその岩肌を見せていた。


 岩壁の高さはちょっとした山程もあり、来る者を拒むようにその威容を誇っていた。


「な、なんかこっちに向かって来るんですけど!?」


 モナコが黄色い髪を振り乱し、大仰に叫んだ。


「······全く。また来たか」


 魔族の男はうんざりした様にため息をつく。岩壁の方向から、五つの人影がこちらに歩いて来た。


 

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