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赤毛の少女

 紅いローブの少女は、右手に魔法の杖を握っていた。肩までの長さの髪は、ローブの色と同じ赤毛だった。


 あの耳の長さは、間違いなく魔族の証だ。身長は、俊足のガキより少し低く小柄だ。そして顔だ。


 なかなかの器量良しに見えるが、どこか表情が高揚しているように見える。若干鼻の穴が少し開いているような。


 少女はガキと俺を交互に見て、顎を少し上げた。


  ······もしかして、この少女は称賛の声を待ち望んでいるのだろうか?試しに俺は少女に話しかけてみた。


「魔族の少女。この魔物達を焼いたのは、君の魔法か?」


 聞くと同時に、少女は待ってましたと言わんばかりに、勢い良く何度も頷いた。


「邪魔するなよな!俺が退治する筈だったんだぞ!」


 俊足のガキが少女に怒鳴る。驚いた少女は涙目になり、ガキを睨み返す。


「何よ!折角助けてあげたのに!あんた、あのままだったら、魔物に食い殺されていたわよ!」


 涙目になった割には、少女は威勢よく反撃した。子供同士の口喧嘩が始まったので、俺は二人を引き離した。


「何だよ!おっさん、あんた誰だよ!?」


「そうよ!って、どうでもいいけど、あんた達、早く私の魔法を褒めなさいよ!」


「······俺の名はエリクだ。若人達よ。命を大事にしろ。以上だ。邪魔したな」


 俺は言い終えると同時に踵を返した。年長者の義務は果たした。後はもう知るか。ガキ同士好きにやってくれ。


 俺は一度も振り返らず、街に戻った。春ももう終わりに近づく今日の空は、夕焼けが霞んで見えた。


 宿屋の共同浴室で汗を流し、俺はさっぱりした気分で部屋に戻る為に廊下を歩いていた。すると、宿の受付前で誰かが血塗れで倒れていた。


 行き倒れか?よく見ると、子供が二人重なるようにうつ伏せになっている。


「······あ、エリクのおっさんだ。この宿に泊まってたのか?」


「······さっきのエリクおじさん?私の魔法、早く褒めなさいよ」


 こいつ等は、あの子供達か。喋れる体力があるなら放っておこう。俺はそう即断した。


 二人の子供を無視して通り過ぎようとした時、受付の主人が大声を上げる。


「おいあんた!その子供の知り合いなら、何とかしてくれ!そんな所で居座られたら迷惑だ!」


 ······いや、知り合いでも何でも無い。ただの赤の他人だ。俺はそう説明したが、ガキ達が俺の名前を口にしたのが決定打になった。


 宿屋の主人の心証を悪くし、この宿に入店拒否されても困る。俺は仕方なくガキ達を治療する為に教会に向かった。


 くそっ。今日はなんてついてない日だ。


 


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