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死闘

 馬車の周囲は騒然としていた。俺達の他に護衛を請け負っている五人の冒険者は、加勢してきた三体の魔物に動揺していた。


 向こうの戦場は五対七でこちらが不利だ。俺も援護したいが、目の前には銀貨級魔物が斧を振ってくる。


 俺は愛用の長剣で斧を受け流す。すかさず敵の胸元を狙うが、かすっただけでダメージは期待出来なかった。


 その時、炎の偶像の身体に変化が見られた。木製の身体を覆う蒼い火が揺らめき、身体中から炎の塊が飛び出した。


「くそっ!」


 俺は左肩に炎の塊を受け、火傷を負った。炎は四方に飛び、馬車の前にも落ちた。それに馬が驚き、御者が必死に馬をなだめている。


「俺がやってやる!」


 イバトが地を蹴り、炎の偶像に迫る。だが、敵は再び炎を拡散させ、イバトの胸に炎の塊を直撃させた。


「うわっ!」


 背中から倒れたイバトは、苦痛の声を上げた。俺は素早く戦況を把握し、判断を下した。


「クレア!イバトを連れて逃げろ!俺が足止めをする!」


 逃げ時の判断を一瞬でも誤ると、即、死に繋がる。俺は動揺するクレアを再度怒鳴りつけ、イバトを抱えさせた。


 レベル二十の俺は、一体の銀貨級魔物相手と互角に渡り合える程度だ。しかも傷を負ったこちらが圧倒的に不利。


 俺は今まで、何度感じたか分からない死の予感がしていた。炎の偶像が俺に狙いを定めた時だった。


 俺の視界の端に、人影が映った。それは高価そうな白いワンピースを着た美少女だった。


 なぜ馬車に乗っていた深窓の姫君が、こんな所に立っている?俺の思考は一瞬停止していた。


 ユリサは腰をかがめたと思ったら、目にも止まらぬ速さで炎の偶像に突進して行った。


「オラァッ!!」


 ······俺は自分の耳と目を疑った。可憐な深窓の姫君は、先程までの可愛らしい声とは対極にある野太い声を発し、スカートから白い足を露わにして、その足を炎の偶像に叩きつけた。


「ホグァッ!?」


 炎の偶像かうめき声と共に倒れた。木製の胸の部分に、大きな亀裂が走っていた。


「エリクさん、イバトさん。止めをお願い致します。私は他の冒険者の方達の援護に向かいます」


 ユリサはそう言い残し、もう一つの戦場へ向かった。俺の頭は混乱を極めたが、頭より身体が先に動いた。


 のんびり思考する者が生き残れる程、戦場は甘く無いのだ。


「イバト!まだ走れるか!?魔物の周囲を走って気を引け!」


 この状況でその訳を聞くほど、イバトの頭は腐りきっていなかった。気合の声を出し、イバトは俊足を発揮し、立ち上がった炎の偶像の周りを円を描くように走る。


 炎の偶像はイバトに気を取られ、隙が生じた。俺は長剣を突き出し、小細工無しで敵に突っ込んだ。


 俺の剣は、炎の偶像の亀裂が入った胸を貫いた。奴は再び炎を拡散しようとしたが、その前に息絶えた。


 俺は激しく息を吐き、自分が生き残った事を実感した。もう一つの戦場では、ユリサ嬢の加勢により、戦いが終わろうとしていた。




 

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