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ゴブリン戦記  作者: 亀ノ助
8/22

第一章 8.襲撃の傷跡

ヨロイ族ことニンゲンの襲撃が去ってから2日が経過した。

住居の復旧を行っている。

小さい私たちも運搬作業や片付けを行っている。

辛うじて、家族が寝起きできる場所は確保できている。

(襲撃の目的はなんだったんだろうか)

2日過ぎたことで状況が分かってきた。


ーゴブリン全体の被害ー

 死亡 13名

・大人7名 ・子供6名

 拉致 4名

・大人1名 ・子供3名


この襲撃で17名の仲間は奪われた。

自分たちと同様に子供たちの被害がある。

母が岩穴に私たちを逃がした理由の意味を感じる。

生存したゴブリンの多くも負傷している。

母は辛うじて一命を取りとめた。

父が言ったように左膝から下は動かない。

焼き焦げていたらしい。

それでも母の優しい笑顔が見れられるだけで嬉しい。

(すっかりゴブリンの子供だな)

そんな事を考えていると、後ろから父の声がした。

「ヴァルこっちに来てくれ」

急いで駆け寄る。

数日前は走るとよろけそうになって落ち込んでいたが、今はしっかり走ることができる。

(生後6日で走れるって、どんな成長だよ)

ちょっと落ち込んだ自分が恥ずかしい。

「ガルボさん!!」

父の横にはガルボが立っていた。

その横に父より一回り大きいゴブリンが立っていた。

「来たかヴァル。挨拶していなかったよな」

父より大きなゴブリン。

目は父より怖くないが、全身を包む雰囲気は十分畏怖に値する。

「ヴァルだな。元気そうで何よりだ」

抑揚のあるはっきりとした言葉。

重厚感のある堂々とした声質。

「ヴ・・ヴァルです。よろしくお願いします」

社会人一年目で社長に挨拶をした日を思い出した。

なかなか辛いシチュエーションだ。

父は見かねて

「族長のアルザだ」と紹介してくれた。

「ダブルの成長もこれからだな。期待している」

アルザは笑いながら私の肩をポンポンと叩いて、その場を後にした。

「戻っていいぞ。リワのそばにいてやれ」

父もその言葉の後に族長の後を追って去った。

ガルボはニヤニヤしながら

「ヴァルお疲れだな~ま~頑張れよ~」

気怠そうに自分の仕事に戻っていった。

(また言われたな・・・ダブル?なんだダブルって??)

疑問に思いながらも、答えてくれる大人が去ってしまった。

おとなしくその場を離れることにした。


族長との挨拶を終え、母のもとに戻るとリワが愚図っていた。

「川が見たい。花が見たい・・・」

避難した先の環境が気に入っていたらしく、今の住居環境が嫌なようだ。

ドルは大人たちに交じり運搬作業を続けている。

母は傷が痛みながらも、リワに構っていた。

「また今度、作業が終わったら一緒に行きましょうね」

母は笑顔でリワに話す。

(その足じゃ歩けないよな)

母の左足は焼け焦げ、今にも崩れそうだ。

黒色で炭化しているのがわかる。

その傷を見るたびに

(ニンゲンめ。今にみてろ)

胸の奥で母を苦しめ、仲間を奪ったモノ達への憎しみが込み上げる。

私の視線に気づき、少し悲しい顔を母は私に向けた。

「傷は大丈夫よ。ヴァル。・・・悪いけどリワと遊んでもらえる」

作業で忙しい中で、集まって話している状況は目が集まりやすい。

そんな状況を母は察したのだろう。

リワの手を引き、母の元を離れる。

「その辺にいるね。何かあれば、声かけてね」

笑顔で伝えると、母は微笑んでくれた。

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