第一章 4.平和じゃないのね
ドッドッド
ドンドンドンドン
「トリートいるか!!緊急だ!!」
「ヨロイどもが襲って来やがった!!」
ドルとリワと一緒に遊んでいる中、遠くの方で大人の声がしている。
(ん?この洞窟って私たち家族以外も住んでいるのか?)
遠くの声は父親を呼んでいる声だ。
「何?ヨロイが!!」
「あんた大丈夫なのかい?」
「また、誰かはやられるだろうな」
「俺が行かにゃーならんな」
どうやらその ヨロイ なるのもは敵らしい。
父はその撃退に向くようだ。
「あれを取ってくれ」
そう言われ、母が引きづりながら取り出してきたのは金属製の棒だ。
いや。先が太く、凹凸が付いている。
あれは棍棒だろう。
かなりの重さだ。引きづった後にはくっきりと溝が付いている。
父は片手で担ぎ
「隠れていろ。物色されても気にせず隠れていろ」
母に言葉を掛けると、大きな足取りで歩いて行った。
「トリート先に行くぞ」
「子供たちは隠せよ」
私たち3匹はその様子を眺めていたが、母が慌てて駆け寄ってきた。
「ドル、リワ、ヴァル。今から言うことを聞いてね」
隣の部屋に母は私たち3匹を連れてきた。
外は騒がしく、行ったり来たり動く音が響いている。
何か金属音のような音も聞こえてくる。
私はリワの手を引く。
小刻みに震えている。
(怖いよな。。。それにしてもヨロイってなんだろう)
この部屋は初めて来た。
よくよく周囲を見回すと、この洞窟は区切られていた。
(マンションみたいな感じだったんだな)
(2DKってところか。気づかなかった)
小さな体で動くのがやっとの状態では気づかなかった点である。
部屋の隅に大きな岩がある。
洞窟の一部が崩れ落ち、落下したような位置だ。
その岩を母が動かしている。
結構重いだろう。
「ん・・・ん・・・」
少しづつだが岩が横にずれていく。
「はぁ・・はぁ・・こっちに来なさい」
肩で息をしながら、母が呼ぶ。
ドンッ ギャシャ
「これ以上、行かせん!!」
あれは父の声だ。
「トリートに続け!突撃だ!!」
ドガドガドガ
「いけー!!!!!」
外の音は激しさを増している。
「早く」
母が急かす。
動かされた岩の奥には小さな穴が開いていた。
「ここに入って!!奥に行くと広がるからね」
「みんないい子で頑張るのよ!!」
「少ししたら迎えに行くからね!!」
母は少し歪んだ笑顔を作り、語りかけた。
いつも元気なドルが駄々をこねる。
「ドリが一緒じゃなきゃ嫌だ」
母は困りながら
「すぐに行くからね」
「大丈夫。奥で待っていてね」
額の小さな角を撫でながら、背中を押し、穴に押し入れる。
その姿を見ながら、私はリワの手を引き、ドルの入った穴に入る。
ズ・・ズズズ・・
辺りは暗くなる。
部屋からの光が入らなくなり、暗闇に閉ざされていく。
岩が光を完全に閉ざす前、最後に母が顔を見せた。
母の表情は悲しそう、笑っていた。
ポタン・・・ポタン・・
水滴が落ちる音が響く。
静かだ。
そして暗い。
この先、どうなってしまうのだろう。
(とにかく奥で待つしかないのか)
リワの手を握り、周囲を探る。
ひんやりとした岩が辺りを囲んでいた。
・・・グスン・・・ング・・・
嗚咽をかみ殺すような音が聞こえる。
きっとドルだろう。
どんな状況だがわからないが、とにかく奥に行くしかない。
自信もない。
だが、それでも力をしぼり
「奥に行こう」
ゆっくりと3匹は暗闇を動き出した。