馬車に揺られて身の上話
現在、馬車に揺られて2時間、暇だ、暇すぎる。
俺はまだ慣れてるからいいんだがヒイちゃんなんか夢の世界に旅立ちかけてる。
「ヒイちゃん起きて〜、こういう時に盗賊とかが襲って来るかもなんだよ〜。」
「ふぇ!?ね、寝てなんかないです!瞑想してたんです!」
「本当に〜?」
「ほんとですもん!」
かわいい。
でもまじで暇だ。いつもなら作戦会議とかあるし、もうちょいいい馬車使うから盗賊も襲って来るけど今回はゴブリンだしそもそも新人の実力を見るために教育係の制度があるから俺が口を出すわけにもいかないしなぁ…
「あっそうだ、皆孤児って聞いたけどなんでなったの?いや言いたくないならいいんだけど。」
「ああ、僕の場合、両親が魔物に殺されちゃったんですよ、よくある話ですよね。」
若干ダメもとで聞いてみたら案外ロー君はさらっと教えてくれた。
たしかに親が魔物に殺されて孤児になったって話はよく聞くけど本人にとっては相当辛いことの筈だ、それを笑いながら軽く話すなんて、強いなロー君。
「私の場合は親がとんでもない借金を負ったせいで私を捨てなくちゃならなくなったんですよね、そこをお父さんに拾われたと。」
クイちゃんも結構あるあるの話だった。
今のご時世自らの子を奴隷商に売ってまで生きようとする奴がいるそうな、それが悪い事とは俺には口が裂けても言えないけど複雑だよなぁ。
「ヒイ姉の場合、若干複雑で、魔法の五大属性はご存知ですよね?」
「え?うん、火、氷、風、雷、土だよね?」
「はい、そしてヒイ姉はそのどれにも適正がなかったんです。」
どれにも適正がない?大抵一人一つはある筈なんだがそういうことがあるのか。
「まあそれだけなら良かったんです、適正がなくても頑張れば使えるようになりますから、ヒイ姉はエルフですし多くの魔力と時間があるので。ただヒイ姉は『闇の魔法』に適正があったんですよね〜。」
『闇の魔法』!確か魔王や眷属である魔族が使う異形な魔法、どんな魔法かは知らないけどたしかに魔族とかが使う魔法に適正があるのは忌み嫌われるだろうな。
「一応、ヒイ姉がエルフの里を追放されたのは幼少期なんでほとんどその記憶はないそうですけどそれでも一人でいるのは結構辛いみたいです。」
3人の中で一番明るい子が一番辛い過去があったのか、きついな。
「あれ、ていうか皆何歳?」
「僕が16、クイ姉が26、ヒイ姉が80です。
と言っても人間で言うとクイ姉は13でヒイ姉は8歳ですけどね。」
うんまあ、獣人やエルフが長命なのはわかるけど…あれあれ?
「なんでロー君、ヒイちゃんの過去知ってるの?記憶がほとんどないんだよね?」
「ああ、それは父さんが教えてくれました。」
何あの人、エルフの事情とかにも通じてるの?怖!クロンさん怖!
「って話してたらもうそろそろ着きそうだな。」
「ふぁ〜、やっとですか〜?」
大きなあくびをするヒイちゃん、まあ本当に何もなかったから仕方ないって言ったら仕方ないか。
さてさて明日には3人の実力が見れるのか、楽しみだな。