次元の違う日常
「フンフンフフフフ~ン♪」
早朝、鼻歌まじりに朝飯を作る。
この星に来てから一週間程経った、ヴィラは高度な教育を受けていたようなので基本的に手間をかからなかった。ウル?そもそも期待していませんでしたよ。
後、二人の野菜嫌いは種族的なもののようだった。吸血鬼に狼とのハーフ、そりゃ肉食だろうな。煮込んだものも肉に混ぜたものも渋い顔をされてしまった。
料理をする者の一人として食べて嫌な顔をされるのはあまりいい気はしなかったが、食えないのに無理矢理食べさせるほど料理に命をかけているわけでもない。
ここ数日の間、今まで全然覚えてなかった魔法を覚えた。といっても魔法は理論だ、一朝一夕で覚えられるものの効果はたかが知れている。
魔力の量自体はボチボチあるんだがな、それなのに遠距離攻撃なにも出来ないって宝の持ち腐れにも程がある。
今まで世話する兄弟姉妹が多かったから特訓のための時間はあまりとれなかった、偶然ちびっ子の世話をできる年長組は俺だけだったからな。やることが毎日多過ぎた。
けど今はウルとヴィラだけだからな、特訓のための時間もたっぷりととれるわけだ。
まあ俺は不器用で馬鹿なので技術や魔法は早々覚えられないからそう簡単にポポポポーンと強くなれはしないんだけど。
師匠から技を教わっているが今んとこどうすればいいのかサッパリ分からん、はてさてあれを習得するのに後何年かかることやら……。
そんな事を考えていたらいつの間にか料理を作り終わり、手持ち無沙汰になっていた。
二人を起こそうと寝室に向かおうとすると外からいきなりけたたましく鐘の音が鳴り響いた。
「な、なんだぁ?!」
何事かと慌てて外に出てみると他の子達がそれぞれ各々の武器や杖を持ちながら家から出てきていた。
何だ?何が始まるんだ?と考えていたらほとんどの子が上を向いていることに気づいた。
つられて上を見上げると巨大な星が赤く燃えながら落ちてきていた。
重ねて言おう、巨大な星である。視界の八割を占めるほどの大きな岩の塊が落ちてきていた。
まだかなり遠いところにあるからこそそれだけで済んでいるが、あとざっくり一分もあれば落ちてくるんじゃないかな。
え、これどうすんの?師匠がどうにかしてくれんだよね?つーかそうじゃないと死ぬじゃん俺ら。
現に他の子が空に向かって魔法を撃ちまくってるがそもそも届いてすらいない。
「すみません兄様、寝坊しました。まだ間に合いますよね?」
何ができるか悩んでいたらヴィラがやっと起きてきた。
「えっと、ウルは?」
「まだグッスリです」
だと思った。まだ六時だからな、仕方ないか。
なんてほのぼのしてる場合じゃない!
「師匠はどこ?早く来ないと……」
そこまで言ってヴィラが魔法を準備していることに気づいた。ヴィラは相当な魔力を持っている、師匠が来るまでの時間稼ぎは多分十二分に果たしてくれるだろう。
「『真紅の刃』」
そう唱えると真っ赤な炎の刃が隕石を真っ二つにする。
丁度ど真ん中に当たったので綺麗に二等分になっている。
凄まじい威力ではある。人智を超えた力と言って過言ではないほどだ。こんな事態じゃなければまたうるさく騒いでしまっていただろう。
だが、結局速度も体積も大して減っていない、あまり時間稼ぎにもなっていない。贅沢な考え方ではあるがもう少し他の魔法を選んでほしかった。
しかしそれはただの杞憂だった、俺がウルとヴィラと関わったのはたった数日、しかも2人が戦っている姿は一度も見たことがなかったのだ。
多少は立ち振る舞い、漏れ出る魔力などで実力は分かる。だが全てを分かった気になっていたのはあまりにも傲慢な考えだった。
俺は少々、いやかなりヴィラの力を計り間違えていたらしい。
「『竜巻の双剣』」
すると今度は細い竜巻が二本生まれる。
人間の腕ほど細くはあったが空の雲に届くほど長く、またとても高くうるさい音を出し続けているので恐らくとんでもない速度で回転し続けているらしかった。
それを交差させ振ると、いとも簡単に隕石は二個から六個に分けられる。
この魔法を選んでいることでようやく俺はヴィラが何を考えているのか察することができた。
師匠が来るまでの時間稼ぎじゃない、ヴィラはあれを一人で破壊するつもりなのだ。でなければ二連続で切ることを目的とした魔法を選ぶわけがない。
「『火竜の息吹』」
そして小さくするのはもう十分だと判断したのか決めにかかった。極太い業火の束が6つに分けられた隕石に当たると空一面が真っ赤に染まる大爆発を起こす。
煙が晴れると隕石はほとんどが消し飛んでいて、残った欠片も速度を完全に殺されていて師匠の子供である俺達ならどうとでもなった。
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「で、どうだったミカ。俺のサプライズプレゼントは?」
とりあえずウルを起こし朝飯を食べた後、さて質問を、と思った時に師匠が来た。
相変わらずのタイミングの良さにイラッとする。
「とっても驚きましたよ、というわけで殴っていいですか?」
「まぁまぁ落ち着け、今回はわざとじゃない。これがこの星の日常なんだよ」
今回はってところを問い詰めたいところだがひとまずそれは後回しだ。
「この隕石が落ちてくるのが当たり前だと?」
「そだよ。天体の配置的にこの星は隕石が落ちやすいように設定してあんだ、目的としては主に鍛錬かな」
いや、そりゃあ自分の力を試すっていう意味では悪くはないのかもしれないけど……
「やり過ぎだって思う?」
「もちろん」
命の危険マックスなのにやるほどでもないだろう、今回は何とかなったけどまだヴィラは子供だ。タイミングが合わないなんていくらでもあるだろ。
「まぁ最悪どうにかする保険はあるし、基本ヴィラは隕石ぐらいなら壊せる。リスクは少なく思いっきり力を使えるものとして隕石はうってつけなんだよ」
星が落ちてくるのにリスクが少ないってどういう神経してんだ。
多分それぐらい強いってことなんだろうけど……。
「まぁそんな感じで、改めて修行頑張ってね」
これで2.5章は終わりです。
リアルで少し忙しくなるのでまた更新が遅くなりますがお許しください。
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