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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
2章 とある純粋過ぎる少年編
47/81

決着

(ノア視点)

絶叫と悲鳴が周囲一帯を覆いつくす。

ミカ君の右肩からドバドバと血があふれ出て水たまりのようになっている。自分で作った状況とは言え酷いもんだ、人の腕を切り落とすなんて……

ミカ君は切り落とされた腕を拾い、断面をくっつけていた。人形じゃあるまいし腕が元通りになるはずがないのに、息を荒げながら何とかして腕を元通りにしようとする姿は一層痛々しく見てて心が痛んだ。

「い…今の…は…どう…やって」

驚いた、まさかまだ喋るだけの力があるなんて。この状況で敵の技を知ろうとするとはまさにあっぱれだ、敬意を抱くに値するだろう。流石は初代の弟子だな。

「簡単な話だが、無属性魔法として使ってた(スレッド)だけど当然だが属性魔法としても使える。だから土属性を使って鉄の糸を作り出したんだ。君は俺とは相性最悪、攻撃が止んだら必ず最速で攻撃してくると思ったからね。君のスピードで鉄の糸なんかにぶつかれば気で弱体化した体なんか豆腐みたいに切れるって理屈だよ」

経験がどうとか、技術がどうとかそういう以前に相性が悪すぎる。近接戦闘特化に対して見えない二種類の攻撃を使う相手、寧ろここまで持ちこたえただけ大したものだ、見えない攻撃を受け流すとか普通できるはずがない。元々、無属性魔法は適切な対処法さえ知っていれば簡単になんとかできる代わりにその対策法を知らなければ元々の実力によっぽどの差があったとしても難しい。もしミカ君が対応策を初代から教えられていたら俺のぼろ負けだったな。

と、そんなどうでもいいこと考えている場合じゃない。

「初代!闘いは終わりました。早く彼の治療を」

慌てて初代の方へ向き彼の治療を頼み込む。どう考えても切り落とした腕を治すなんて出来る気がしないが初代ならきっとやってくれる。そんな願望じみた考えが浮かぶ程に俺は焦っていた。元々今回は俺たちが巻き込んでしまったんだ、そんな俺が片腕を奪ってしまうなんて申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


そんなことを考えていたら突然後ろから声がした。

「いえいえ、それには及びません、よ!」

振り返ると鞘に入れたままの刀を振りかぶったミカ君がいた。


(ミカ視点)

ノアさんの視線が逸れた隙をついて渾身の一撃を叩き込む。数メートルは押し飛ばせたが、それでも倒れてくれなかった。


「いやいや、おかしいでしょ。止血程度ならともかく何で切れた腕が繋がっているんだよ!?命属性魔法とやらも流石にそこまでの再生能力があるの?」

困惑した様子でノアさんが叫ぶ。

「さっき自分で言ってたじゃないですか、俺の腕体なんて豆腐の様に切れるって。余りにも綺麗に切れすぎたせいで無駄な破壊がほとんどなかったんです、これなら俺の気と回復魔法でギリギリ治せる」

そもそも、気も命属性魔法もただ身体能力を高めてる訳じゃなくて生命力を高めてそのおかげで身体能力が上がっているんだ。当然使い方次第では一気に回復させることもできる。

「しかし、腕力特化で不意打ちしても倒れませんか。一体どうなってるんです?」

「さっきの話と似ているけど、無属性魔法をずっと透明で使っているが別にそれは絶対じゃない、色をつけることも簡単にできる。(スレッド)を布みたいに折り重ねて身に着けることで防御力はアップできるし自分が今どんな状態か隠せる。結構な優れものだよ」

なるほど、ずっと気になってた『白い何か』はそういう理屈だったか、道理で俺の攻撃がほとんど効いてなかったわけだ。


「ただ、自分で分かってるだろうけど今俺が倒れなかったのは寧ろ別の事が原因だよ」

ノアさんのその言葉にぎくりと身を震わせる。

「いくら防御力が上がっているとはいえ、もし君の全力が当たっていたら不意打ちじゃなくてもKOだよ。なのに不意打ちで喰らったのに俺はまだまだ大丈夫、流石に威力が相当落ちてるよ。まあ当然だよね、切れた腕を繋げるなんてこと普通不可能だ、どんなに綺麗に切れていたとしてもね。この短時間で治せるのは流石としか言えないがそれでも消費は莫大だろう、今の君は生命力も魔力もすっからかんじゃない?」

痛い所を突かれた、今の俺は魔力も生命力もそこまで大量にある訳じゃない。腕を繋げられたのもぶっちゃけ奇跡みたいなもんだ、後ほんの少し体が壊されていたら絶対に治らなかった。

それに加えて、その前に魔力をボチボチ使ってた。さっき殴れたのも最後のチャンスだ、それも運よく頭とかにでも当たれば気絶してくれないかなぁって程度の威力だった。一般人のパンチぐらいかな。

それでも一応技術もあるから魔法タイプなら倒せるんじゃないかなあと思ったけどダメだったし、もう勝ち目なんか欠片もない。今のままだと近接戦ですら一方的にやられる。



仕方ないか。

「師匠、()()()()()

俺の刀は抜くと途轍もない力を得る代わりに大ダメージがあって今の俺だと死んでしまうかもしれないらしい。今まで師匠にきつく言われてきたせいで一度も抜いたことがなかったが、もし今抜かなかったらノアさんに負けてフリエさんは助けてもらえないかもしれない。師匠がわざわざ助けないっていう選択肢を選ぶとは思いたくないが、相手はあの師匠だ。あの人の価値観は十年以上付き合っても一切理解できない。

最悪のパターンがあってもおかしくない。ならリスクを背負ってでも賭けに出るしかない!

「どうせ止めたって言う事聞かないだろ、痛い目見てせめて学べ」

師匠に確認を取ると師匠らしい台詞が返ってきた、じゃあ遠慮なく痛い目見させてもらおう。

そう考えほんのわずかに刀を抜いた瞬間、体からごそっと色々なものが奪い取られた。

急いで鞘に戻そうと考えた時には目の前が真っ暗になっていた。


(クロン視点)

ほんっとバカだこいつ、どうしてこんな考えなしに育っちゃったかなあ。どこで間違えたんだろう。

この刀は別に肉体に負荷をかけるとか精神にダメージを与えるとかそんな類じゃなく生命力と魔力を吸い続ける代わりに人智を超えた硬度と切れ味を生み出すものだ。あいつ程度じゃほんの一瞬でも抜いたら干からびる、もし倒れなかったとしても刀を振れないだろうし多分これから数十、いや数百年はただの御守りとしか意味ないだろうな。

俺特製の御守りで魔力を補給してなかったら即死だったな。


そんな風にため息をつきながら倒れたミカに回復魔法をかける。

かける時脇腹に爪先を捻じ込んだのは決してワザとじゃない。体に触れてた方が回復の効率が良いからだ。

「ノア、後日改めて来るから一先ず今日は帰るよ。ちゃんと手伝うから安心しろ」

そう言うとあからさまにホッとした顔を見せるノア、その素直過ぎる様子が可愛らしく思えてクスリと笑ってしまった。

ミカを担いで帰ろうとすると何故かシルド君が目の前に立ちふさがった。

「どしたの、シルド君?」

「その、どうしてもフリエさんを助けて頂けませんかね、と」

??目を何回か瞬かせ思考を巡らせ思い出す。そういえば負けたら助けないみたいなことを言ったっけ。

「あんなもん嘘だよ、嘘。ノアは分かってたよね?」

「え、ええまあ。あからさまにでっかく開閉ボタンって書いてありましたし」

呆然とした顔で俺を見てくるシルド君、もしかして俺ならやりかねないとか思われていたのかな?

だとしたらちょっと心外かな。流石に俺でもあからさまなハッピーエンドを目の前にわざわざ無茶苦茶にするほどイカれている訳じゃ、多分、ない。

まあノアが負けたら手伝わないつもりだったのは否定しないけどね。

まあミカが勝てる見込みなんてほぼないから実質ハッピーエンドに貢献したものでしょ。


さてさて、ようやくミカを連れて帰れるな。

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