コクハクノアサレン
半日で考え、半日で仕上げたので、あまり見直しをしていない、勢いだけで作られた作品です。
ややお見苦しい所はあると思いますが、よろしければ見て頂けると幸いです。
★彼★
「あなたが好きです」
そう彼女から言われた時、自分の心拍数が一気に上がったのを感じた。
「あなたが好きです。大好きです!」
きっと顔が誰が見ても分かるぐらいに赤くなってるはずだ。
「私と……付き合って下さい!」
……心臓が止まるかと思うほど、その言葉は衝撃的だった。
だから、なかなか声が出せず……何度も咳払いをして、
「っい、いいんじゃないか?そんな感じで『本番』も頑張れよ」
………そう、これは練習だ。
「えぇ〜?これってベタ過ぎでしょ?」
今のに何が不満なのか、そんな事を言う彼女に、俺は極力平静を装いながら、
「告白にベタも何もないだろ?」
っと言ってやると、彼女は小馬鹿にした様な顔になる。
「何言ってるの?告白にはね。TPOの他に、オリジナリティが必要なもんなのよ。あぁ〜あ、駄目駄目ね。告白もした事も、された事がない奴は」
ちょっとカチンときたので……まあ、事実だが、
「……お前だってそうだろうが?」
っと言ってやったら、また小馬鹿にした顔になって、
「された事はあるわよ」
……。
「しかも両手じゃ足りないほど」
……結構衝撃的な話だったが、
「へぇ〜そうかい」
っと言うしかなかった。
「っむ?信じてないな」
「はいはい。凄いですね」
「むかぁ〜」っと言って何かを言おうとする彼女は、不意に壁時計に視線を向けて……「そろそろ行かないと遅刻しちゃうじゃん。行こ純一」
そう言ってとっとと俺の部屋から出て行く彼女の後姿に……俺は深い溜め息を吐いた。
……この分だと気付いていないんだろう。俺が、彼女の事を、
好きだ
って事を。
瀬野 花は、産まれた時からの腐れ縁……要は幼馴染だ。
子供の時からの家族ぐるみの付き合いなので、ほとんど兄妹っと言ってもいい感じではあったんだけど……ある時、クラスの友人に、彼女に告白するから紹介してくれっと頼まれ、紹介し……友人が振られたと聞いた時、俺は自分が酷くほっとしている事に気付いて……自分が彼女の事を『家族』としてではなく、『異性』として『好き』だと言う事に唐突に気付いた。
それに気付いた時、俺はかなり混乱した。
表面上は普通に過ごしてたと思うけど……当時の日記(俺には隠れて日記を書く趣味がある)には、その混乱ぶりが見事に書かれている。
数十ページに渡って、「好きだ」とか、「どうしよう」とか、そんな事ばかりびっちり書いてあって……目も当てられず、その日記は本棚の辞書カバーの中に封印した。
もちろん、それに気付いた時、真っ先に、告白しようと思った。
でも、もし、「ごめん。私、純一の事、男として見れない」とか、「あははは。何、今日はエイプリルフールだっけ?」とか、言われたりしたら……どうしよう?って考えが浮かんで……するに出来ない。
それに、俺が告白する事で、今の関係が崩れる事が……怖かった。
ずっと一緒にいる彼女が……いない状態を……俺は……考えたくない。
それぐらい。俺は彼女が好きだった。好き過ぎた。
だから、なかなか告白出来ず……ある時、
「純一。私ね。好きな人が出来たの。だから、告白したいんだけど……なんか恥ずかしくて……だから、練習相手になってくれない?」
そう言われた。
頭が真っ白になった。
それはつまり、彼女はやっぱり自分の事を異性として見てない事になり……そして、その告白が成功すれば、彼女は……言い方が悪いけど、その男のものになる。
嫌だった……でも、今の関係を壊したくないから……つい、
「いいよ」
っと言ってしまった。
っで、その日から毎朝、告白の朝練に付き合わされているというわけだ。
「好き。好き。好き。好き!」
「連呼は……どうだろうなぁ?」
「確かに、オリジナリティが無さ過ぎね」
「ス・キ・デ・ス」
「ふざけてんのか?」
どこぞの宇宙人みたいな口調の告白に、ジト目で彼女を見る。
「オリジナリティなくない?」
「逆にないな」
「好きでちゅー」
「とうとう頭がいかれたか?」
「面白くない?」
「面白さを求めてどうする?」
「貴様が気に入った!私の男になれ!」
「男気があるな……」
「どうだ、この野郎」
「うるせぇ、馬鹿野郎」
「ずっとあなたの事が好きでした」
「オーソドックスだな急に」
「回り回って……」
「……お前な……」
「きっとあなたは好きになるぅ〜。きっとあなたは私を好きになるぅ〜」
「催眠術?」
「私の隠れた才能が」
「目覚めるかボケ!」
毎日毎日、変な告白から、普通の告白まで、色々な告白の練習台にされる俺。
練習とは言え……俺に向けられた告白じゃないとは、分かってはいても、その度に胸が高鳴る。
……このまま……このまま、彼女に告白させていんだろうか?
そんな考えが……ふっと浮かんだ。
連日聞く彼女の告白に、つい勘違いと分かっていながら、勘違いしてしまう。
もしかしたら、今、告白すれば……彼女は……。
ありえない事を考え、願ってしまう。
………そう言えば、彼女の好きな男を誰か……聞いていないな。
「今日告白しようと思うの」
それを聞いた時………身体が固まった。
「帰ったら、結果を報告するね」
「……ああ」
止めるべきだと、俺の心は言う。
……でも、止めた所で……どうなる?
やや不安そうな顔をした彼女が、俺の部屋を出て行く。
その後姿を、俺は唇を噛み締めて見詰めるしかなかった。
結果を聞きたくなかった。
だから俺は、なかなか家に帰れなかった。
ふらふらと落ち着きなく家の近所を歩いては………ため息を吐く。
日が沈み、街灯が付き……お腹が鳴った。
……流石に……もういないだろう。
そう思って家に帰ると……玄関に彼女の靴があった。
恐る恐る部屋に入ると……彼女は俺に背を向けて立っていた。
「純一……」
俺の存在に気付いた彼女は、ゆっくりと振り返り……その頬に、涙を流していた。
その涙が全てを語っている……振られたんだ。
そう思った時、俺は……嬉しかった。
そして、自分を恥じた。
彼女が辛い思いをしているのに……その事で喜ぶなんて……最低だ。
そう思った時、不意に彼女が抱き付いてきて、顔を俺の胸に埋めた。
涙が服を濡らす。
「私の告白の何がいけなかったのかな?」
「いけないことなんてあるか」
「私の思いが伝わらなかったのかな?」
「伝わらない事なんてないさ」
……何を言ってるんだ俺は?
彼女の言葉に、俺は反射的に言葉を返してしまう。
こう言う場合、俺の役割は、ただ、黙って聞くだけだって、分かっているのに……。
「純一……私、駄目なのかな?」
「駄目なんてことあるか」
「だって、好きな人に、好きって言われないんだよ?……あんなに告白したのに」
段々、腹が立ってきた。
こんなに彼女に思われているのに……なんでそいつは答えないんだ!?
「……ごめんね純一」
すっと、俺の胸から顔を離す彼女。
その顔は、今まで見たどの彼女よりも弱弱しくて……
俺は衝動的に、
「純一?」
抱き付いてしまった。
………………やっちまった!?っど……どうしよう?………
「痛いよ純一」
強く抱き過ぎた…………ええい!もう!どうにでもなれ!!
「好きだ。は」
「うん。私も」
……………?
好きだ。花。俺と付き合ってれ!っと言おうとして………途中で花に遮られた。
ウン。ワタシモ?
……………?
「あ!ごめん」
呆けた俺の腕の中から、がばっと離れ、
「告白途中で遮っちゃったね。あはは。つい、嬉しくて、言っちゃった。はい。続きどうぞ」
っと言って、ニコニコ。
さっきの涙顔が……どこにいった?
「……いや、続きどうぞって……」
「もう!いいから!つ・づ・き」
ニコニコしたかと思ったら、今度はむくれ顔………仕方がないので、
「えっと………好きだ。花。付き合ってくれ」
「感情がこもってない!もっと情熱的に!」
………いや、そんな事言われても………一体、
「どう言う事?」
その俺の問いに、花はふっふっふっと言いながら、スカートのポケットから………目薬を取り出した。
「まんまと引っ掛かったな純一君!」
「やかましい!」
とりあえず、頭を叩いとく。
★彼女★
「私はね。告白するより、告白される女なわけ」
「へぇ〜そう」
「っむ!何その生返事」
「………がんばれ」
「むかぁ〜。絶対告白させて見せるからね!」
「誰から?」
「知らない!」
きっと彼は覚えていないだろうけど………そんなやりとりを、昔した事がある。
だから、昔から好きだけど、絶対、私から告白なんてしてあげない。
「花の幼馴染ってさ。ちょっと暗いけど、顔は良いよね」
その友人の言葉に、ドキっとした。
「あいつなんて、駄目駄目だって」
「………何?好きなの?」
「っそ、そんなわけないじゃん。只の幼馴染よ。只の」
「あやしぃ〜」
ちょっと不味いかも。
幼馴染の立場ってだけで、油断してた。
惚れている私が思うのもなんだけど、彼は決してモテるタイプじゃない。
だから、私以外に好きになる人なんて……とか思ってたんだけど……年を追う毎に、見た目だけだんだん良くなっているって事なのかな?……考えて見れば、毎朝毎朝、私がチェックしているのが……いけなかったんだぁ〜しまったぁ〜どうしようぉ〜実行あるのみぃ〜。
とか思いながら、私は彼の部屋に来ていた。
勝手知ったる彼の家。
彼がいなくても、彼のお母さんに顔パスで入れてくれるのは、幼馴染の特権。っと。
などと思いながら、彼の部屋を物色中の私。
昔、彼から告白させてやろうと決意した日から、私は時々、彼の部屋に来ては、彼が密かに書いている日記を密かに読んでいた。
彼はその事を秘密にしているみたいだけど……バレバレ。
っと言っても、その日記を見つけたのは、ほとんど偶然見たいなもので……ちょっと彼が、Hっちい本を持ってるのか疑問に(あまりにもアピールしているに、告白してこないから女性に興味無いんじゃないかって)思って、家探ししている時に見付けた。……勿論、バッチリHっちい本の隠し場所も見付けてたり……うん。許容範囲内の趣味だった。
そんな事より……今日は何を書いてあるかなぁ〜。
ちょっとワクワクしんがら、日記を見ると……
『今日、友人の頼みで、幼馴染に友人を紹介した』
……ああ!そう言えば、ちょっと前にそんな事があったかな?即断ったけど。
『だが、直に振られたらしい』
あったり前でしょ!私はあなたが好きなんだから!!ぷんぷん。なんちゃ……て?
次の文章を見て、私は、驚きで止まってしまった。
『ほっとした。友人が振られたと言うのに……』
……えっと?……え!?
慌てて続きを読む。
『今まで、幼馴染……花の事を姉か妹にしか見ていなかったけど……それは勘違いだった。今日、もしかして、友人に彼女が取られるかもしれないと思っている事に……彼女が家族としてではなく、異性として好きだと言う事に……気付いた』
……やった!やった!やったぁ〜!!ついに、ついにぃ〜、彼を私に惚れさせる事・…・惚れさせる?……ずっと好きだったって事だから、気付かせる事に?……まあ、いいや、成功したぁ〜……長かったなぁ〜。
私はニコニコで顔で、続きを読み、そこに書かれている事に、今度は違う意味で硬直した。
『でも、今さら告白なんてしてもいいんだろうか?……生まれた時からの、家族ぐるみの、幼馴染。そんな彼女は……俺を男として見ているんだろうか?』
見てるって。大好きだって。告白してもいいんだって。
『告白して……振られるイメージしかわかない』
振らないって。
『最悪、告白する事で、今の関係が崩れてしまう可能性が……』
そんな事絶対にないって。
『そんな風になるんだったら……』
……純一。
………どうしよう?このままじゃ告白してくれない……私から告白しちゃおうかな……って、出来るかぁ〜……ん?
彼の今に始まった事じゃない弱気に、悩んでいると、次の日の日記が飛んでも無い事になってる事に気付いた。
もうびっちりと、『花好きだ』とか、『どうしよう?』とか、書かれていた。
………この日記には、たまにこういうページがある。
どうも彼は、ストレスが強くなると、ストレスの原因をこうやってページいっぱいに書く事で、ストレス解消している見たい。
いつもの事だけど………ん〜………これって、こっちから押せば……押すだけじゃ駄目かな?彼、結構優柔不断な所があるから……特に、今回みたいな事は…………いい事思い付いた!
押すだけじゃ駄目なら、引いてみよう!
名付けて『早く告白しないと……別の人に告白しちゃうぞ?作戦』………ネーミングセンスゼロね。私。
次の日。
作戦さっそく決行。
「純一。私ね。好きな人が出来たの。だから、告白したいんだけど……なんか恥ずかしくて……だから、練習相手になってくれない?」
っと、思いつめた感じで、言ってやった。
明らかにショックを受けた顔の彼は、ちょっと間を置いて、
「いいよ」
っと答えた。
……もう。好きな人ってのは、あなたの事よ………気付け馬鹿。
その日から、私は毎朝毎朝、彼に練習と称しては告白した。
勿論、彼に対して、時には真面目に、時にはふざけて、何度も何度も、心を彼に向けて。
なのに、気付きやしやがらない。
まあ、でも、気付かれても困るかな?……だって、これで気付かれたら、私の告白が『成立しちゃう』。私の目的は、あくまで、『彼から告白させ、私が了承する』事。
そう、それまでは、私の告白は、『本気だけど、本当に練習』。
最初の頃は、私が告白する度に顔を赤くしたり、青くしたりしてた朝の告白練習だけど………ちょっとふざけ過ぎたせいか、いまいち反応が悪くなってきた。
だから、次の段階、
「今日告白しようと思うの」
そう私が行った時、彼の身体が硬直するのがはっきり分かった。
ふふっふ。動揺してる動揺してる。……じゃあ、更に駄目押し。
「帰ったら、結果を報告するね」
「……ああ」
顔が引きつってるよ純一♪
いけないけない。いよいよの告白の前に不安そうな顔の演技をしてるって言うのに、つい笑っちゃう所だった。
…………遅い!
いよいよ作戦も佳境だって言うのに、当の本人が、なかなか帰ってこない。
……………あの男ぉ〜さては自分の嫌な結果を聞きたくなくて、私が帰るのを待ってるなぁ〜……もう、仕方がないなぁ〜……あんまり遅くなると……お互いの両親に作戦を放さなくちゃいけないじゃない♪
昔からの友人同士である私と彼の両親は、多分、ずっと前から二人がくっ付けばいいなって、企んでたんだと思う。彼は気付いてなかったかもしれないけど、私にはバレバレ。別に、気付いた時には、彼の事が好きだったからいいんだけどね。
作戦を互いの両親に教えると……勿論、大賛成。
帰ってくるまで、彼の部屋に居ていい事になった。
うちの両親なんか、朝帰りでもOKよっとか言い出す始末で……普通、そんな事言う親っているのかな?……っま、いっか♪
どきどきしながら彼の部屋で待つ私。
立ったり座ったり、彼の秘蔵のHっちい本を見たり………なんか、この間見た時より幅が広がってるような……っま!どうしましょ?
「ただいまぁ〜」
玄関の方から彼の声がした。
っど!どうしよう!?Hっちい本なんか見ている所を見られたら、これまでの作戦がぁ〜!!!
私は慌てて本棚にHっちい本を押し込んで、部屋のドアに背を向け、ポケットに入れてた目薬を両目にたっぷり注して、こぼれない様に天井を見上げる。
彼の足跡が段々近づいてくる。
そして、部屋の扉が開く。
今!
顔を正面に戻して………
「純一……」
振り返る。
悲しげな表情も忘れずに………彼は、私の目薬に、驚き、一瞬だけ喜んで、暗くなった。
彼が何を思ったか手に取る様に分かる。
もう一引き押し。
彼に抱き付き、彼の胸に顔を埋めた。
瞳にまだ残っていた目薬が、彼の服を濡らす。
「私の告白の何がいけなかったのかな?」
ちょっと本心を混ぜて、
「いけないことなんてあるか」
そうなの?
「私の思いが伝わらなかったのかな?」
この鈍感!
「伝わらない事なんてないさ」
……へぇ?……うん。でも、確かに、いつもの彼じゃない……こう言う場合、いつもの彼なら、ずっと聞き役になってるのに………後もう少しかな?
「純一………私、駄目なのかな?」
「駄目なんてことあるか」
そう言われて、胸が熱くなった。………本当に涙が出そう。
「だって、好きな人に、好きって言われないんだよ?……あんなに告白したのに」
ホント、あんなに告白したのに………一様、練習って形だけど………不意に、
「……ごめんね純一」
謝りたくなって……彼の顔を見たくなった。
彼の胸から顔を離す。
葛藤している彼の表情が、私と目が合うなり、固まった。
不意に抱き付かれた。
えぇぇええぇぇ!!?
「純一?」
驚き過ぎて、名前しか言えない。
名前を呼ばれても、彼は抱き付いたまま………急に抱き付く力が痛いほど強くなる。
「痛いよ純一」
反射的に、私がそう言うと、直に彼は力を緩めて、私が、ずっと待ち望んでいた
「好きだ」
言葉を言ってくれた。
だから思わず、
「うん。私も」
って言っちゃった。
………あ〜告白の途中だったのにぃ〜やっちゃったぁ〜
私の告白返しに、混乱して固まる彼。
……あははあは、
「あ!ごめん」
恥ずかしさのあまり、抱き付いている力が弱くなった彼から離れ、
「告白途中で遮っちゃったね。あはは。つい、嬉しくて、言っちゃった。はい。続きどうぞ」
より困惑した表情になる彼。
「……いや、続きどうぞって……」
困惑し過ぎ!!
「もう!いいから!つ・づ・き」
私に急かされて、仕方なさそうに、
「えっと……好きだ。花。付き合ってくれ」
心のこもってない告白の続きを言った。
もう!
「感情がこもってない!もっと情熱的に!」
なんだか妙な沈黙の後、
「どう言う事?」
っと、彼が聞いて来たの………ネタばらしと行こうかな?
ふっふっふっと私は笑いながら、ポケットから目薬を取り出し、
「まんまと引っ掛かったな純一君!」
って言ったら、
「やかましい!」
って叩かれた。
★彼★
恥ずかしかった。
あったまきていた。
嬉しかった。
………もうぐちゃぐちゃだった。
「っと言うわけなの。ごめんね。勝手に日記見ていて」
花の弁解を聞いて、俺は……何も言えなかった。
………まさか、日記が見られているとは……って事は………あぁああああ!………勘弁してくれ。
頭を抱えて蹲る俺に、花は、
「その……だって……純一の日記って、面白いんだもん」
とか言いやがった。
「……どこが?」
うらめがましい俺の目線に、
「えっと、うんとね」
とか言いながら、俺が日記を隠している辞書のカバーを本棚から取り出そうと………ん?
妙なものが、視界に入った。
どこかで見た事がある………ぐしゃっとなった表紙の一部が、本棚の一部から飛び出している。
あんなの俺の本棚にあったかな?
俺の視線に気付いた花が、慌ててその本をばっと取り、背中に隠した。
その一瞬に見えたその本は………。
サーっと血の気が引く感じがした。
「お!お!お前ぇ!!なんでそれを!?」
「ふっふっふ。まだまだ甘いね純一君」
「甘いじゃねぇ!っか、返せぇ」
「やだよぉ〜」
取り返そうとする俺から、ひらっと逃げる花。
「甘い!」
「っきゃ!」
逃げた方向に手を伸ばすと、花がそれに驚いて、バランスを崩し、伸ばした手を掴み、ベットへと一緒に倒れ込んでしまった。
花が下に、俺が上に………覆い被さる形になってしまった。
「っわ、わるい」
慌てて退こうとした俺の両腕を花が掴み。
互いに顔を見合って、沈黙。
「私達、幼馴染から、恋人同士になったんだよね?」
その花の問いに、俺の心臓が高鳴るのを感じた。
これって………。
「幼馴染で……恋人だよ」
その俺の答えに、花はちょっと泣きそうな顔で
「うん」
嬉しそうに微笑んだ。
再びの沈黙の後………自然と俺は花に顔を近付け、
キスをした。
長い様で、短いキスをし、ゆっくりと花の唇から自分の唇を離した。
「ファーストキスだよね?」
「当然」
「私も」
「……どんな味がした?」
「えへへ。キスされる事でいっぱいで、分かんなかった」
「俺も」
「じゃあ……セカンドキス……今しちゃう?」
「……今度は長めにしようか」
「……う…ん?」
「ん?」
セカンドキスをする直前で、花が何かに気付き、視線を俺から外した。
釣られて花の視線の先を追うと………うちの両親が、俺の部屋のドアを僅かに開けで覗いていた。
目が合うと、
「ごゆっくりぃ〜」
とか言って、ドアが閉められた。
……………。
「あ〜………はぁ……明日にしようっか?」
「うん」
『コクハクノアサレン』終了
冒頭の告白ありきで考え始めた話です。
恋愛ものは好きですが、実際に書くのは初めてでしたので・・・・どうでした?
面白いと感じてくれたのなら幸いです。




