008 先人達が残した名残
「同じ世界から来た人って、結構多く存在してんじゃね?っつぅ~か、
明らか、同じ世界から来てる人て、オタクばっかですよね?マジで」
って思える文献をしばしば目にして来た。この世界3年目のシャムも…、
「此処まで、故郷の匂いを感じる事が出来るアイテムに出会うとか、
マジで思わんかったし…マジで……。」な今日この頃……。
持ち込まれた。こことは違う異世界の知識。
前世の世界由来の漫画技術や、
多種に亘るオタク用語を含んだサブカルチャー。
そのサブカルチャーに寄る産物。
このファンタジーな世界で、新たに創造し直され、作りあげられ、
この世界の者から貸し出された。この世界のBLな漫画本を片手に…、
シャムが、本気で心底思うのは……。
「何故に、先にサブカルチャーを広めたし!こんなんより、もっと、
先に広めるべきモンあったやろ?」だったりします。
機械文明は勿論…、製紙技術や印刷技術も、
「まだ、それほど発達して無いんでは?」な、こんな世界にて……。
異世界からのちょっとエロイ漫画文化の持ち込みって、如何でしょう?
もし、読者の皆様が、こんな世界に転生し、行き着いてしまったなら、
どう感じ、どう思われる事でしょうか?
この世界の当事者であるシャムは、持ち前の適応能力の高さで、
「証拠隠滅する時の為の事を考えて、紙の質を落としてんのかな?
それともこれが、この世界での紙の通常運転?」
「本の中身は全部手書きなんだよね……。印刷技術が未発達なのかな?
それに引き換え、表紙のエンボス加工技術が高いのは何故に?
前世の世界で売ってる本並みの加工技術ありますやん!
と、言っても…前世では家でも使える技術だったけどね……。」等、
色々と疑問を持ちつつ、
「絵は丁寧で綺麗だけども、漫画より、文字だけで表現する小説の方が、
質感情報がしっかり書き込まれてるから作りが良い感じやね!
あ、でも、ショタ系情報の収集対象は、フランかな?てかフランだな…、
少し気の毒かもしれない……。けど、ま、いっか♪」と、
人の不幸を見なかった事にして、この世界のBLを堪能し、
「ラブロマンス系なノリで、エロ表現少なめなBLも悪くないですな!
でも、エロを減らすと…、落とす落とされるの策略とか…、
恥じらいや戸惑い、葛藤、恥辱屈辱表現の幅が狭まるんな…想定外……。
我がバイブル…心の拠り所にするには、ちと物足りない気がする……。
もっと作者様に成長して頂かなくては困りますね♪」とシャムは、
この世界で生きて行く指標を決めたり定めちゃったりして?で、
シャムが3年程振りにBLと再会した。この日の夜は…、
BL本を持って来た後に、白いコボルトのシエルと、
名も無きBL好きなコボルトの持ち込んだ御茶と茶菓子で、
BL三昧な女子会が開催され…、一夜を明かしたのであります……。
と、言っても…シャムは今世では、まだ3歳児、
その体力が続く限りなので…、日を跨ぐ事はありませんでした……。
と、此処で余談ですが…名も無き設定のコボルトについて、
気になった方がいるかもしれませんね……。
これは、呼び名が存在していても、個体の名前ではないと言う設定です。
例えば・・・
呼ぶ人に寄って名前が違ったりする地域猫や野良猫、野良犬、
時に鳥や小動物にありがちな落ちだったりします。
皆が適当に違う名前で呼ぶので、何よりも多く呼び名があっても、
只一つ、己自身の名前と理解する一つの本当の個体固有の名前が、
本当は存在していない感じなのだけど、御理解頂けるでしょうか?
因みに、名も無きコボルトちゃんは、
この世界で漫画を描いた絵師だけども…、言葉も話せない設定です。
同じコボルトのシエルとは、犬同士の会話的なアレでの意思疎通設定。
シャムとは・・・
時々、存在しますよね?感情に敏い動物って…海豚とか、
時に犬猫とかに!他、例えるなら…言葉は通じないけど精神で繋がる、
イベント会場とかでの、外国人ともイエェ~イ!な感じの雰囲気……。
そう、それで、シャムとシエルと名も無きコボルトちゃんは、
同志となったのでした。理解できない人は、時に、
同じ趣味の人が集まるイベントに参加し続けていれば、
心で通じ合える相手に出会えるかもしれませんよ♪
そして、この事柄は、今世のシャムにとって、
BLの漫画本の存在抜きにしても、ビックリな出来事でもありました。
何せ、孤児院の子供等は、言語が多少違っても、皆が喋っていたのです。
「最近やっと…ある程度の事を知った気になってたけど…、
まだ出会っていない…この世界の常識が沢山あるかもなんだな……。」
なぁ~んて、ちょっとしたカルチャーショック受けたりしたんですよ♪
等と、なんだかんだありましたが…はてさて、
此処で行き成りですが……。
読者様達は[002]に出て来た便利グッズの事を覚えているだろうか?
A4サイズくらいの透明な石板で、
パラメーター画面の様な個人情報を出現させるアイテムの事です。
ブネ様創設の孤児院では、
孤児達の健康診断にも利用されてる魔道具でした。
実は今回、
その魔道具をシャムの自由にできるチャンスが偶然やってきました。
シャムがBLと言う文化に再会してから暫く経過した。ある日の事です。
孤児達の健康を管理をする担当の山羊な獣人。
ピンクのエプロンドレスが目印のソピアさんが、城主のブネ様に呼ばれ、
毎週、繰り返されて来た健康診断の途中に退席したのです。
普段、本来なら…、石板に装飾された一番大きな魔宝石に触れて直ぐに、
取り上げられるのが毎度毎度のセオリーだったのですが……。
その時、シャム達を担当したインプって種類の小悪魔。
ポッコリお腹と尖った御耳、鉤尻尾がチャームポイントの黒い使い魔が、
シャムとシエルとナイの健康状態のメモを取った後、
使った机の上に魔道具を残して立ちあがり、メモだけを持って、
魔道具をその場に置いたまま、何処かへ行ってしまったのです。
さて、問題です!こんなチャンスを野放しにする。
幼く転生し直した転生者が居るでしょうか?そう、この場には居ません。
だって、もったいないじゃないですか!
子供の内にしか許されないオイタがあるんです。シャムは迷わず、
魔道具に手を伸ばしました。
『勝手に触ると、ソピアに怒られるぞ』と呆れ顔でフランが、
吸血鬼特有の冷たい手を伸ばして、
シャムが魔道具に伸ばした手を掴んで止めます。
どうやら前に、フランは触って怒られた事がある御様子です。
シャムはニヤリと笑いました。
『でもさ…こう言う事って、子供の内にやっとかな損じゃね?
私、まだ3歳だぞ!幼児だよ!今、やらんで何時やります?
今っしょ?今がチャンスでしょ!間違い無く!』
シャムの気迫にフランはたじろぎ……。
フランの膝の上に座っていたナイは、
『間違いだらけだろ?フラン君が一緒に怒られたらどうするんだ!』と、
フランに様付け禁止されてから初めて、
久し振りに元気な声を上げ、シャムに食って掛かりました。
周囲はその様子に気を向ける事も無く、
それぞれ騒がしく、小競り合いしたり笑い合ったりしています。
シャムは周囲を確認し「告げ口されるリスクは少なさげじゃの」と判断。
「ここは、不安に乗じて開き直させるが吉と見た!」って事で、
『あ、でも、ナイが騒いだりするから、もう手遅れになったっしょ?
どう足掻いても、他の奴に告げ口されるの100%だよ?
どうせ疑われんだし、怒られるんなら、持ち出しちゃおうよ!』と、
その場の勢いだけで大きく出て見ましたら、
フランとナイに肯定され、魔道具を持ち出す事になっちゃいました。
「コイツ等、私を出汁に使いやがりましたね!別に良いけど♪」
な感じで、事は大きくなりましたが、
「その場で触って、見せて貰えない自分のパラメーター確認して、
教えて貰えないフランとナイのも確認するつもりだけだったのにな…、
ま、いっか♪序にシエルのとかもパラメーター見せて貰っちゃお♪」
シャムは気にしない方向で、付き進む事にしたのです。
からのフランの自室、長椅子に集合してでの魔道具説明会を開催します。
正直な御話…シャムは勿論、フランもナイも…、
教えて貰えなかったので、魔道具に浮かび上がる個人情報、
その全部の読み解き方を知らなかったのです。
だから講師は、身近に居て教えてくれそうな者、
フランの命令に困り顔になりながらもフランに逆らえない、
フランの為の専属従者、
ヴァレットって役職の白いコボルトのシエルです。
そんなシエルが言うには、シャム達が持ち出した魔道具の名前は、
「鑑定くん」と言うらしいです。
そのままの御名前で残念ですが、其処は放置しましょう。
A4サイズの石板の右上の魔石に触れると浮かび上がる情報は、
上から、個体名・種族・性別の隣に年齢・属性・スキル・魔法。
その下に色違いの帯線グラフ3本。
一番上のグラフは生きる為に必要な力を表示しているので、
無くなってしまうと死んでしまうそうです。
そのグラフの下には、毒とか怪我とか受けたら情報が出るとの事です。
2本目は走っても減るし、スキルを使っても減るらしいヤツです。
無くなると次は、苦痛を伴いながら1本目グラフのを消費するらしいよ。
で、病気に罹ると2本目の下に、何かしらの表示が出るそうな。
3本目は魔法を使うと減るのと、落ち込んだりしても減るんだって…、
更に減り過ぎると精神的にヤバくなるとかで…ちと、怖いヤツ……。、
3本目の下に出るのは、精神状態とか呪いとかの情報なのだそうだよ。
「何て便利で、ゲーム的なアイテムなんだろうね」
シャムは石板に自分の個人情報を出して、
「高確率で先人は、元日本人のゲーマーさんの仕業なんだろうなぁ~…、
貴方達が創造したであろう産物に、私は毎回、ホント救われてるよ!
以前にも本気で思たけど、種族に腐女子追加してくれたから、
ブネ様にとっての特別枠に入れて貰えて、拾って貰えたんよな……。
ありがとう!先人達!感謝しても、し足りないよ!」と、
心の中だけで、先人達に礼を言い。
シャムの個人情報を読み解き、
『腐女子ってどんな種族なんだ?』と訊ねて来るフランに対し、
『殿方は知らない方が良い世界に住む住人って感じかな?』と、
シャムは適当に答え、シエルに微笑み掛けて『そうですね』と、
シエルに同意して貰い。明確な答えを答えない方向で、
その場を乗り切るのでした。