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新たな惑星

 移民船が目的地に到着した。

 目的地、それは地球に変わる星だ。


 移民船が星に降りると共に私達の護衛艦二隻もそれに続いた。

 星が見つかったのに住む人間がいないとはね、人類が絶滅してから七年と八ヶ月が過ぎた。

 原因不明のウイルス性感染症によりたった三日で。


 星に降り立つと心地よい風が頬を撫でていった。

 周囲を見渡すと一面緑の生い茂る大草原、群生する色とりどりの見たことのない花の花びらが風に舞いまるで私達を盛大に歓迎してくれているかのようだった。

 護衛艦に乗艦する者は安全確保のため周囲の調査をはじめ、移民船に乗艦していた者は明日の為に開拓の準備に取りかかった。 

 私は調査に四、五人の小隊のリーダーとして参加した。

 移動には護衛艦に積まれている六輪型の調査車両で向かう。

 方角が分からないので言いにくいが、私の小隊が担当したエリアは着陸した移民船の左側をまっすぐ十キロほど進んだところの森だ。

 そこにある木はどこか違う、地球の木とは違い木の幹がブロッコリーの芯の部分によく似ている。

 ただ似ているのは質感だけで色は地球の木とほぼ同じだ。

 その木にナイフで傷つけ成分を調べたが地球の物とは全く違う。 だがこの星の植物はどうやら害はなさそうだ。


「そういえば、艦長のあなたが調査への参加なんて…」


「私が参加したらなにか可笑しいか?」


「いえ、ただ艦長なら艦内に残り全体を指揮しているものと思ったので」


「『艦長のありかた』なんていうのは決まった形はない。 ないが、確かに私のように現地調査への参加は異例なことだがな」


 森の調査を一通り終えてたので再び調査車両に乗り込み移動する、調査 移動を繰り返しその日は一日中そこら一帯の調査を行った。

 他の調査チームの報告と照らし合わせてもこの星にはどうやら危険生物や知的生物はおらず、とくに危険性はないようだ。

 別の調査チームが撮影した写真には鳥が写っていた。 鳥だけじゃない猫に似た空を飛ぶための翼をもった動物やゾウほどの大きさの犬似た動物、手のひらサイズの熊などの写真もあった。

 話によるとどの動物も好戦的ではないようだ。

 平和な星。




 その日は調査のみで日が暮れたので護衛艦に戻ることになった。

 すべてのチームが無事帰還することがでた。

 夜。

 ふと、目が覚めたのでなんとなく司令室に向かい、監視カメラの映像をモニターに写した。

 すると、驚く光景が写し出された。

 月が七つもあったのだ。

 たった二つのカメラに七つ、なら外へ出たらいいったいいくつあるのだろう。

 早速、私は天体望遠鏡を手に取り護衛艦の甲板へと足を運ぶ。

 外へ出たらなんと月はさらに十つもあった。 つまり、合計で十七つ。

 それが原因なのかこの星の夜は明るい、地球の夜空は紺や黒などの暗めな色だが、ここは完全に青、ほんの少しも暗めな青色だ。

 街灯もないのに周囲の景色もまあよく見える。

 観測を続けるとこの十七つのうちこの星の衛星は八つ、他は違うようだ。

 つまり、月は八つということ、どちらにせよ夜空がキレイなことに変わりはない。

 カン、カン、とかん高い金属の音が近づいてくるのを感じたが気にせず望遠鏡で空を見続けた。


「艦長、こんなところでなにをしてるんですか?」


「月を見ていたんだ」


「月…ですか」


「あぁ。 君は…404とゆうことは第七小隊のアビスだな? どうしてここに?」


「物音がしたので艦内を見回っていたら司令室から艦長が出ていったのが見え、それで司令室を覗いたらモニターに外の映像が写し出されたままだったものですから、外に行ったのではないかと思いここに来ました」


「そうか、」


「……」


「……」


「艦長……」


「なんだ?」


「……、夜空を眺めるのを私も、ご一緒させていただいてもよろしいですか?」


「え? あ、あぁ」


 明るい夜空。




 明朝、開拓ロボット達の作業が始まった。

 私達第七小隊は採掘ロボットの護衛任務が任されたので中型輸送船に乗り込み採掘ロボット輸送船の後に続いた。

 輸送船船内、相変わらずここはエンジンのおかげでとても騒々しい。


「隊長 イルハ隊長」


「ん? なんだ」


「この星 今朝の会議で名前が決まったそうですが」


「あぁ、そういえば言ってなかったな。 みんな聞いとけ、星の名前はな、イラっていうことになったぞー」


「イラ…」


「ま、そんなことはさておき、アビス 私語は厳禁だ」


「あ、すみません」


「ま、いいけど、あんな堅苦しいルールあんま好きじゃねーし」


「………」


「そろそろ降下ポイントだ みんな準備しろー」


 パイロットからの船内放送。


「降下ポイント到着だ! 下開けっぞー!」


 輸送船の床が開き第七小隊は一斉に飛び降りた。


「海だとぉぉお!? おいおい、聞いてねぇぞ!」


「あれ? 言ってなかったか?」


「言ってねえ! お前、朝 ただの採掘ロボの護衛任務だって言っただけで詳しいことなぁーにも言ってなかったよ! 地下だと思ってたのに!」


「まあ、良いじゃねえか ほらあそこ海のど真ん中に人工の陸が見えるだろ? あそこの地下での作業になるだから、別に海の中には入らねえから安心しろよ」


 鋼鉄の島がポツンと浮いている。 超大型輸送船をそのまま海に沈めそれを中心に建てられた海上基地だ。

 その沈められた超大型輸送船には短時間で基地建設をするためにもともとそのような設備が整えられている。

 このような超大型輸送船はあの移民船にまだまだ積まれているのた。


「つってもなぁ。 てか、あんなのいつ建てたんだ? イラに来てまだ一日なのに」


「昨日の夜 ロボットが一晩でな」


「マジかよ。 ロボットもすごいがあの船にこれだけの資材があったんだな。 無駄にデカイ訳じゃなかった」


「当たり前だ。 もともと移住しようってんだからそれぐらいは軽く出来てくれなきゃな。 実際、あの移民船一隻でこの程度の星なら四分の一 いや、半分は支配できるだろ。 それだけの兵器も資材もたんまり積まれてる」


「恐ろしい」


「そうこう言ってたらもう海上基地到着だ」


 基地の着地地点に全員無事到着した。

 そこでは数々のロボットが絶えず働いている。


「第七小隊225隊長イルハ到着」


「同じく第七112シリスしぶしぶ到着 海なんて、聞いてねぇ…」


「第七小隊404アビス到着」


「第七小隊632オルセイ到着」


「第七小隊135リフェル到着」


 一体のロボットが近づいてきた。


「第七小隊の方々ですね。 オア司令官から聞いています。 今回この第四海上基地の採掘を任された チーム5806のリーダーG98です」


「俺は…、じゃない、私は第七小隊隊長225イルハです。 しっかり、護衛させてもらいます」


「はい、頼みます。 それより、よくあんなにも高いところからパラシュートも装備せずに降下できますね。 私達、採掘ロボはいくら頑丈に作られていると言ってもあの高さは無理があるのに。 それだけ頑丈なら心強いです。 では、早速地下に」


 第七小隊はG98のあとに続き、海上基地の最下層 つまり、採掘場に向かった。

 その道中のこと、


「そういえば、 なぁ 隊長」


「どうした?」


「なんで、こんな平和な星で護衛が必要なんだ? 一日目の調査で危険はないって本部が」


「まぁな、確かにこの星は安全かもしれない。 ただし、それは陸上だけの話。 実際に俺たちがいるのは地下だ。 一応調査は行われてるが絶対安全と言い切れたもんじゃない。 それに、俺は最初に陸上は安全と言ったけど、それはあの移民船周辺の話でそれ以外は未開拓だ。 そもそも、この星の調査をしたって言うけど、あれだって別にイラ全土をって訳じゃないからな」


「へー、じゃあ 今この地下通路も、なにかえたいの知れない生物に襲われるかもしれないってことか」


「そういうことだ」


 そうこうしているうちに最下層の採掘場に到着した。

 想像を越えた広さだった。 広さおよそ一キロ㎡、高さ三十メートル前後はある。 ここを中心に放射状に坑道が掘られている。

 大きさを問わないのなら三百はくだらないだろう採掘ロボの数、これだけの空間がたった一晩で築かれたと思うと恐ろしい。


「まじで、こんな広いの俺たちだけで護衛すんのかよ」


「そうだ、第七だけでだ。 ほかの小隊は出払っちゃっててさ」


「何に?」


「さあね 俺も知らない」


 この坑道は高さ幅ともりおよそ十メーターほど、深さは海上から考えれば千は越えている。 にもかかわらず実際に採掘されたのは石炭のような青い鉱石だけだ。 もっと、いろいろな鉱石があってもおかしくはないのに。


「G98さん」


「なんでしょうかリフェルさん」


「ここ 昨夜から採掘しているんでしたよね」


「えぇ、それが?」


「それにしては、見つかった鉱石が青い鉱石だけって、どういうことなんですか?」


「…、気づかれましたか。 実は、どのレーダーにも鉱物の反応はなく、地質的にも金属の類いのものがある可能性が限りなくゼロなんです。 ほかの採掘ポイントでは金属が見つかっていればいいのですが」


 G98の目のライトが一瞬だけかすかに弱まった気がした。


「……」


 かすかに地面が揺れている。 次第にそれは強くなりこの足でしっかりと観測出来るほどの大きさになった。


「地震?」


 すこし違う、その揺れは少しずつ近づいてくるように這ってくるように足元へ。

 突然、生物探知のレーダーの警報が鳴り響く。


「リフェル! 今すぐ、そこから離れろ!」


 最後尾でG98と話していたリフェルの体が誰かの手により強く押され宙を舞った。


「な…!」


 ムカデ。 巨大なムカデだ。

 ムカデがリフェルを吹き飛ばし、そのままリフェルを咥えて再び地下に潜っていってしまった。


「なんだ 今のムカデみてぇのは!?」


「G98! ロボットを退避させろ!」


「はい!」


 基地全体に緊急避難サイレンが鳴り響き、全ロボットは放送の指示にしたがって上の階層に移動を開始した。

 第七小隊はリフェルを連れ去った巨大なムカデを追った。

 奴はさらに深いところへ行ってしまったようだ。


「あいつ、どこまで潜る気なんだよ? ムカデも苦手なのによぉ!」


 シリスはそう言いつつも誰よりも早くムカデの穴を降りていく。

 先頭のシリスはどうやら最後にたどり着いたらしい。


「ん? みんな止まれ! この下、かなり広い空洞になってる」


「レーダーに生物の反応はないが」


「じゃあ、降りよう」


「待て!」


 オルセイは降りようとするシリスの腕を掴み、制止をした。


「なんでだよ! 急がねぇとリフェルが!」


「生物の反応はないが、あのムカデは直前までレーダーに反応しない。 焦る気持ちも分かるが、降りたら即襲われる可能性だってあるんだ。 落ち着いて行動するんだ。 リフェルなら大丈夫だ。 微弱で場所の特定は無理だが、まだ反応がある」


 シリスはオルセイに握られている腕の力を弱めた。


「オルセイ、ここのマップは?」


「今、マップ形成します」


 丸い金属製の物を放り投げた。

 これは、立体マップボールといい、投げると超音波を発してあたりから跳ね返ってくる音情報をもとに立体的なマップを構成する。


「マップ形成完了。 転送します」


「え、何これ…まるで、蟻の巣じゃないですか」


 アビスの言う通り、まさに蟻の巣。 数十個の巨大な空洞が無数のムカデの穴が繋いでいる。

 立体マップボールの範囲外にもそれは続いていると予測される。


「これでも、ムカデの位置が特定できないな」


「隊長、私、ちょっとやってみていいですか? ムカデの位置 特定してみせます」


「どうする気だ?」


「このマップボールの超音波を定期的に発生させて、マップを更新し続けてもし、動いている物体があった場合は」


 アビスの言葉をシリスがつなぐ。


「それが、ムカデか」


「その可能性があります」


「だが、欠点が2つ。 そのボール、超音波を発生させるためにかなりの電力を消費している。 再充電に時間がかかる。 もし、動いている物を見つけたいなら最低限でも十秒に一回はマップ更新がしたい。 次に例えそれが問題なくできたとしても、それだけの膨大なマップデータをどうやってこの通信環境の悪い地下で定期送信し続ける?」


「それは、もう考えてあります。 私がボールとリンクして五秒に一回 超音波を私が発します。 そして反ってきた音をボールがキャッチし、立体マップを構成、それを見て私が隊長達を音声通信で導きます。 ただ、その間 私は身動きがとれませんけれど」


「なるほど、確かにそれなら」


「いい案だ。 道案内 頼んだぜ。 アビス」


「はい! では、早速始めます」


 立体マップボールを手に取りリンクを開始した。

 アビスの体から力が完全に抜けてピクリとも動かなくなった。

 突然、口が開いた。 どうやら、超音波を発しているようだ。

 立体マップが五秒毎に更新されていく。

 ムカデはどこだ。 次の更新で動いているものは…、七か所。


「あー、あー、みんな 聞こえますか?」


 アビスからの音声通信だ。


「大丈夫だ。 全員、問題ない」


「これから、七か所あるムカデがいると予測される場所へ誘導します。 まず、目の前の穴を降りてください。 下にはかなり広い空洞がありますが敵はいません」


「了解」


 イルハ オルセイ シリスの三人はアビスの道案内のもと、七か所のムカデ予測位置まで走った。

 一か所めは外れだった。 二か所めも。

 三か所めまであとすこし。


「次の空洞の手前にある穴を左へ。 そして、その穴の途中にある二ヶ所めの穴に入ってください。 そこに、ムカデがいるはずです」


 シリスが穴に入ろうとしたとき。


「隊長! レーダーにリフェルの反応が強くなりました!」


「なに! じゃあ、ここがあたりか」


「だったら、さっさと行こう!」


「待て、この先にはムカデもいる。 慎重にな」


「分かってる」


 一人づつ、あまり大きな音がたたないようにゆっくりと穴を降りていった。

 下はすぐ空洞になっていて、この空洞はすこし湿っている。

 奥の方から音が聞こえてくる。


 ギリリギリリ


 だんだんとその音に近づいていった。

 ライトを目の前に向けるとそこには、突然 レーダーが生物反応を感知し警告を発した。


「…ムカデだ」


 隊長の目の前には幅1メートル程度長さは10メートルを優に越していた。

 ゆっくりとその鋭く尖った二本の牙を左右に大きくひらいた。


「ギリ ギキィィィーーーー」


 そのムカデは空洞中、いや、地下中にその叫びを響かせた。

 隊長に襲いかかった。

 読んでくださりありがとうございます。

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