No.005 バカな夢ほど面白いものはない
「おーい、ラッセルさん。大丈夫ですか?」
俺のバカげた夢を聞いて、ラッセルさんが口を開けたまま固まってしまったため少し怖くなり手を振ったり開いた口を閉じようとした。
それから数分後、やっとこちらの世界に戻ってきたラッセルさん。
「エイジ殿! 自分が何を言ってるのか分かっているのですか!?」
ラッセルさんが「気を確かに~」とか言いながら俺の肩を掴んで前後に揺らす。
「ああ、世界一バカげた理想を言った」
「そんな事不可能です。この世界に何人魔族の事を憎み、嫌っている者がいると思っているのですか!」
えーと、確かアギナ王国が120万で、ミズト共和国が70万、ダイナ帝国が60万にここソラノ王国が50万って人口のはずだから......
「大体300万人?」
「エイジ殿、確かに魔族は人間と生きていけるかもしれません。ですが、人間と言う者は簡単に自分の考えをなかった事にできません。それにそんな事をすれば教会に目をつけられて、捕まってしまうのがオチです」
一部、知らない言葉が聞こえたがラッセルさんが必死に引きとめる。初めて会った俺に対してここまで心配してくれるあたり、どこかあの魔王のように感じる。年寄りは皆、こんな感じなのだろうか?
「もちろん、無茶も無謀も承知の上です。けど......」
一旦言葉を区切り、振り返って不安顔のラッセルさんの顔を見る。
「俺の師匠は言ってました。「望む未来は人が死に物狂いで手を伸ばしてやっと掴める物」だって。この勘違いに気がついた誰かが行動を起こさない限り、この無駄な争いは消えません」
さっきのラッセルさんみたいにこの勘違いはすでに真実を言っても信用してもらえない、それほど人間にとってこの勘違いは固着しているのだ。そして誰もそれに気がつかず、ずっと勘違いしたまま人生を終えるのだ。
もちろん、どれほど難題なのかは分かっている。だとしても、俺はなんとしてもこれを叶えたい。そう思えるほど、彼ら魔族の事を知ってしまったのだ。
「俺は見て見たいんですよ、魔族と人間、その2つの種族が共に歩みよっていけるそんな光景を」
俺は魔族と接して言った時、彼らの温かさをしれてとても幸せだった。できる事ならこれをみんなに伝えたい、そう思ってしまった。