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No.003 ザコキャ......ボスをフルボッコします

「あれがその村?」

「はい......」


 女の子の案内で訪れた彼女の村は夜だというのにとても明るいので村の様子がよく分かる。


 入口には何人かの柄の悪い男が4人ほどおり、中は武器を持っている奴らに脅されて黙々と馬車に荷物をつぎ込んでいる。村の規模が大きいせいか馬車も多く、10台近くはあるだろうか。


 彼女に詳しい事情を聴くとあの村はこのあたりでも結構大きめの村らしい。そのため、収穫量なんかも多く、今回の収穫はかなり豊作だったらしい。

 

 それに目をつけたのか、こうして村は襲われて今に至るらしい。


「けど、これが初めてってわけじゃないだろ? この規模の村なら自衛はちゃんとしてるんじゃないのか?」


 これが規模の小さい100人程度の村だったら理解できる。だが、俺の見た限りだと500人程度が住めるくらいの規模だ。それくらい大きければ何所も盗賊対策に柵を作るなり、武装した村人が守ったりとしているはずだ。


 女の子の村はかなり頑丈そうな柵で覆われており、見事に堀も作られている。これほど意識した村が簡単に占拠されるなんて考えられないのだ。


「はい、ちゃんと守備兵を立ててたのですが......『火撃のロウ』が相手だったので」

「誰?」

「このあたりで最近暴れている元騎士の盗賊のボスです。彼の魔法で簡単に破れ、「命と村を失いたくなければ食料と金目の物、武器や農具も全て差し出せ」と要求されて......」

「うわ、全部要求するのかよ」


 要求のでかさにも驚くが、それ以上に驚いたのが魔法の事だ。

 その......ロン? が使う"火撃"は俺の使った"空撃"と同じ初級クラスの簡単な魔法だがそれを使えるだけでも魔法の才能ありと周りから言われるようだ。


 魔法は確かに体内の魔力の流れを感じ、自由自在に操らないと使えないが、それさえ覚えてしまえば大抵の魔法は使えるようになる。なにせ、その魔法の効果と詠唱文さえ分かっていれば発動できるのだから。


 あれ? てことはいくつか無詠唱で魔法が使える俺って周りから注目の的になるのか......あまり目立つと個人的に面倒くさくなるので少し自重しておこう。


 さて、じゃあ詳しい事も分かった事だし。


「じゃ、ちょっと頑張りますか」


 俺は立ち上がって、村の入り口に向かって歩き出す。


「ちょっと待ってください!」


 としようとしたところで女の子にコートを掴まれて、動きを止められてしまう。


「あれ? まだ何か情報があるのか?」

「いえ、そういうわけじゃなくて。あなた、今から何をしようとしたのですか?」

「そりゃあこの話の流れから分かるでしょ。盗賊退治だよ、お前もそれをして欲しかったんだろ?」


 まったく、何今さらな事を言ってるんだろうか。俺はそんな事も知らないの? みたいな目で女の子を睨む。


「だって、あそこには50人近くは盗賊がいるんですよ! そんなの勝てるわけないじゃないですか!」


 女の子が必死になって俺に指摘する。どうやら数の暴力で負けてしまうと思っているらしい。まったく......あんな弱そうな奴らに負けるなんて思われるなんて心外だなー。


「大丈夫だよ、あいつら見た感じ弱そうだし」

「このあたりじゃ凶悪な奴らで有名なやつですよ」

「知らん知らん、それにあんなのが凶悪ならうちの師匠や先生とかは何になるんだよって」


 俺はそう呟きながら、女の子を振りほどき歩き出す。


「あ、危ないからお前はそこにいろよ」


 まだ、引き留めようとする女の子にそう言って俺はざこが、言い間違えた。盗賊狩りに向かった。




「おい、ガキ。そこに止まれ」


 俺が歩いて村の入り口に歩いて行くと、俺の足音で気がついた見張り役の盗賊達が警告してきた。ガキって......俺これでも19歳なんだけど。


 俺の顔はどうやら童顔らしく、若く見えるらしい。大人なのに子供扱いされ、若干イラっとした。


「お前らの言う事をはい、そうですかと言うバカなんてそうそういないぞ。それくらい、お前らの貧相な脳をフル回転させて理解しろよ」

「ガキが......」


 俺は思った事を正直に言っただけなのだが、盗賊の1人が武器を構えてこちらに歩み寄ってくる。俺の事ガキ扱いするんだったらガキの言う事まともに受けるなと言ってやりたい。まあこんな見え見えの挑発に乗るようなバカ相手に言っても仕方ないので言わないでおこう。


「死ね! このクソガキ」


 歩みよってきた男が曲刀のような武器を振りまわす。俺はそれをぎりぎりで一歩横に移動して回避し、左手を盗賊の男の肩に乗せる。


「"電撃"」


 "空撃"と同じ種類の雷版の魔法を小声で発動する。魔力が雷に変換され、触れている盗賊に電気が流れる。


「うぅ」


 男がうめき声を上げて地面に倒れこんだ。周りの人間が見たら、手を触れただけで男が倒された風に見える。

 当然、他の見張りの盗賊達が俺を敵対視し、武器を構える。


 俺は先ほどの男が持っていた曲刀を拾い、目の前の盗賊や村の中にいる奴らにも届くよう大声で警告する。


「さて、死にたい奴からかかってこい! 来ないならさっさと武器を捨てて「盗賊なんてやってすいませんでした。僕はこれからこの村で奴隷のように働きます」と土下座をしながらそう宣言しとけ!」


 俺はそう言い、村の中目がけて突っ走って行く。


「このやろ、よくもタケを!」


 盗賊が先ほど倒した男の仇打ちのつもりか槍を構えて突進してきた。俺はその単純すぎる行動をヒラリとかわし、背中に斬りつける。


「ぐはっ」


 突進の勢いを殺しきれず、先ほどのタカ? とかいう男と同じ目に逢う。仲がいいみたいだし、一緒に慣れて良かったね。


 俺はそう感想付けて、他の2人も腹と足を斬りつける。さきほどの2人と違い、一瞬で無力化された事に驚いてたせいか動きが鈍い。この時点でこの集団は素人だと判断する。プロなら即時切り捨てて目の前の優先事項をこなすなりしないとダメだぞ。


「おい、どうした」

「さっきの声は一体」


 俺の声で中にいる盗賊達が集まってきた。ちょうどいい。


「ほら、さっさと投降しないと血の海ができるぞ!」


 俺はそう脅しながら一人、盗賊達の中を突っ走って行った。




 俺は『魔力感知』を駆使し、複数人を一気に相手する。数M圏内なら正確な動きがリアルタイムで分かるので後ろから斬りかかろうが、遠くからの弓矢を弾くことだって造作もない。


 魔法を使えばこんな一人一人急所を外して痛みで倒れるように仕向けなくても無力化できるのだが、周りの目があるのであえて使っていない。

 

 半分ほどを倒したあたりで盗賊達の連携がバラバラになってきたのでさらに楽になった。俺は一気に殲滅しようとした時、俺の『魔力感知』が魔力が急激に濃縮したのを認識した。


「"炎よ 纏われ 火撃"」


 そんな言葉が聞こえ、俺はとっさにその場を離れる。すると、火の塊が先ほどまで俺のいた所を通り過ぎた。


「てめぇ、俺の部下に何してやがる」


 先ほどの魔法の放たれた方向を見ると見ただけで鍛えられてるのが分かるマッチョ男が立っていた。先ほどの魔法からして彼がこの盗賊団のボスで元騎士のロン(・・)だろう。


「見て分からない? 悪いことしてるから実力行使で止めさせてるだけだけど」

「にしてはやりすぎってもんじゃねえのか?」


 ロンの言葉で改めて周囲を確認すると先ほどから無力化した盗賊の男達の血のせいで本当に血の海ができそうなくらいだった。脅しただけで、実際はするつもりはなかったのだが......まあ後で回復魔法をかければ問題ないだろう。


「俺はちゃんとそう宣言したぞ? そんなに嫌ならさっさと投降すればいいじゃないか」

「ふん、まだ俺を見てそんな軽口を言えるか」


 そう言うと周りの盗賊がロンの周りに集まり、壁のように並んだ。


「"炎よ 纏われ 火撃"」

「ほほう、まさか部下を盾に魔法を使うとはな~」


 なるほど、確かにあれなら俺が邪魔しようにもあいつらが邪魔で攻撃できないわけだ。方法は最悪だが、無詠唱で使えない点を工夫でなんとかするという考えは素直に褒める。


 俺はロンの魔法を避けつつ、タイミングを見る。


「くそ、ちょこまかと」


 『魔力感知』で予測しているせいでまったく当たらない事に段々とイライラを隠しきれなくなったロン。よし、今かな?


 俺は地面に落ちている槍を広い、片手で槍をロン目がけて投げ込む。


「そんなもので」


 きちんと踏みこんで投げ切ってないため、あまり速度が出ず簡単に彼の部下に弾かれる。だが槍に気を取られた一瞬、それだけで十分だった。


 俺はその気を逃さず、剣を肩にかけ魔力を流し込む。


「『鬼神流派』初伝 鬼打!」


 剣に凝縮した魔力を相手に投げ飛ばすイメージで俺は剣を振る。魔力で作られた斬撃がロン目がけて飛んで行く。


「うわあぁぁぁあああ」


 斬撃の轟音と共に野太い男たちの悲鳴が同時に響く。確認すると先ほどまで固まっていた盗賊集団は皆、綺麗に伸びていた。


 おし、無力化完了っと。


 そう決めるとパリンと音が聞こえた。見ると俺の使っていた曲刀の刀身がぼろぼろになって崩れ落ちていた。


「あちゃー、またやったか......」


 俺が呆れながら呟くとカキンと金属が落ちるような音が聞こえる。見ると盗賊残党が武器を捨て、土下座をしていた。まあボスを失ったらそうなるか。


「うおおおおお」

「凄いぞ、あの男! いったい何者なんだ」

「おい、お前。奥に隠れている女子供を連れてこい。もう隠れる必要はねえ」


 全員の無力化を確認すると突然、勧喜の声で満たされた。よく見ると先ほどまで隠れていた村人が盗賊が倒されたのを確認して飛び出していた。


 その中で白髪の偉そうな老人が俺の方に歩み寄ってきた。


「盗賊を倒し、村の危機を救っていただきありがとうございます。あなた様のお名前はなんというのでしょうか?」


 お礼を述べられ、名前を聞かれたので俺は堂々と名乗る。


「俺の名前はエイジだ」


 こうして、魔界を出て初めて訪れた村のトラブルはこうして終わった。

 

 

 

『火撃のロウ』の事をロンと書いてますが、これはエイジ君視点で書いてるため彼の間違ったままの状態で書いております。まあ今後出てくる予定なんてないので覚える必要もないのですが......

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