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第五話 独白


 訓練が終わり、少女はゆっくりと歩いていた。正確に言えば、足を引き摺りながら、ではあったが。しかしながら、それを誰も咎めたり詰問することはない。それはパイロットの地位が整備棟に居る兵士よりも上の地位だからということもあるかもしれない。ただ、それ以上に彼女が『近付くな』といったオーラを発していることも一端かもしれないが。


「大丈夫か、マリーディ」


 しかしながらそんなオーラを無視するかのように、タオルを差し出したのはラルースだった。


「ラルース」


 マリーディと呼ばれた少女はラルースのほうを向き、タオルを受け取った。


「これからシャワーを浴びに行くんだろ? だったらタオルくらい持って行っておけよ。まさか、濡れたまま歩くわけにもいくまい」

「余計なお世話よ」

「余計なお世話かもしれないな。しかし、俺はそういうお節介を焼くのが好きなんだ」

「それが『余計なお世話』って言うのよ」


 マリーディはラルースから目線を逸らし、下腹部をゆっくりと撫でる。まだシャワーなどで洗い流していないからか、まだぽたぽたと液体が身体から垂れていた。

 それをマリーディは恥ずかしいと思っておらず、あくまで普段と同じように冷静を保っていた。しかし、それは間違いではなく、実際彼女にとってこの行動は普段と変わらない行動である。


「……シャワールームを開けてある。そこを使うといい」


 シャワールームの鍵をマリーディに投げるラルース。

 マリーディはそれを受け取ると、タオルを肩にかけて、そのまま歩いていった。



 ◇◇◇



 シャワールームは防犯の関係上、鍵のかかった個室になっている。

 そしてマリーディが使うシャワールームはその一番奥まったところだった。彼女は普段からそこを使っていて、移動宿舎の兵士もそこはあまり使わないようにしている。とはいえ、数には限りがあるので、どうしても使ってしまうこともある。そういうときは仕方がないからマリーディも我慢はするのだが、ただ、そこを使った兵士は後々居にくい空気にさせられてしまうのが現状だ。

 とどのつまり、暗黙の了解。

 マリーディがその場所を使うことは全員が知っているから、そこはなるべく開けておかねばならない――普通に考えれば簡単なことだった。

 コックを捻り、シャワーが彼女の身体に当たる。流線形の身体に水が流れ落ち、彼女の身体を洗浄していく。

 それでも、彼女の身体を貫いた――あの感覚は浄化できることはなかった。


「……ほんとうに、この身体は気持ちが悪い」


 マリーディは自嘲する。しかしながら自嘲したところで何も変わりはしなかった。代わりはしないからこそ、自嘲することしか彼女には何も出来なかった。

 パイロットにはパイロットに関する記憶しか残されていない。それは敵に情を移さないためだ。そして逆に仲間を殺さないため――仲間を『仲間』だと認識させるため、であると言われている。簡単に言ってしまえば、絆を作るうえではすべて人間関係をゼロにしてしまったほうがやりやすいらしい。それはどこかの研究結果をもとにした内容となっているが、それはパイロットの彼女たちが知る由もないし、重要機密となっているため、殆どの人間が知ることはない。

 パイロットはネフィリムに乗るために『調整』されている。それは精神的にも肉体的にも、その意味が適用される。簡単に言っていることだが、これは国家プロジェクトであり、そう簡単に片づけられる話ではない。パイロットになるためには、家族の了承が居るが、パイロットの親は自分の子供がパイロットであるということは公表してはならない。それは、パイロットがこのような状態になっているということを国が公表しないといけなくなってしまうからだ――そう言われている。

 実際、パイロットがどのように戦っているか、ということは家族には伝えられていない。真実を伝えてしまえば、確実にパイロット志願者はゼロに近づくからだ。

 シャワーの音だけが、シャワールームに響き渡る。

 パイロットである彼女がいったい何を考えているのか――それは今の誰にも分からないことであった。


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