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序章


 俺は、一度たりとも神に感謝をしたことが無い。

 当然といえば当然かもしれない。しかしそれは従順たる信者からしてみれば、愚問と言われてもおかしくない発言だった。

 なぜ神を信じないのか。感謝の気持ちを伝えないのか。

 そんなことをシスターから訊ねられたときは、思わず失笑した。

 それじゃあんたはこの世界の状況を見ても未だ神に感謝出来るのか?

 こんな状況を見ても、神に祈りを捧げることが出来るのか?

 シスターは直ぐに笑みを浮かべて頷いた。それは予めそのような応答をするようにプログラムされているようにも見えた。案外そのたとえは間違っていないかもしれない。

 いずれにせよ、シスターと俺の価値観はまったく違うということ。それは簡単に証明されたのだから。

 人々は神に感謝しながら暮らしている。シスターはそのようなことを言っていた。そしてそれは、この世界の半ば常識にもなりつつあった。

 しかして、それは真実なのだろうか?

 いずれにせよ、この世界の人間は少なからず神に感謝をしながら生活をしている。それが常識であり、きっと無関心ながらも、無心で感謝をしているのだろう。それはシスターが言っていた言葉をそのまま借用しただけに過ぎないが。

 話を戻すことにしよう。どこまで話を戻すつもりか、と。確かにそう考えても仕方ないことだ。間違っているわけではないが、そう考えることは自然だということだ。別にそれについて指摘するつもりはないから、安心してくれ。

 この世界には神など居ない、とは一言も言っていない。

 ただ、神が居るならば、俺は神に一度も感謝をしていない――というだけの話だ。

 そして俺は安心安全の環境より一番離れたところで仕事をしている。そこはどこか、だって? 簡単な話だ。

 戦場。

 この世界の戦争について、簡単に説明しておこう。

 戦争は昔こそ歩兵が前線を切って進み、人と人の戦いが繰り広げられていた。武器も重火器が殆どを占めていた。ああ、国によっては刀などの近接武器を使うところもあるだろう。けれど、あれは古いシステムだ。新しくない。

 まあ、それも今となっては全て昔のものとなってしまったのだけれど。

 巨大戦闘兵器、ネフィリム。

 古い言葉で巨人――或いは天使の意味を持つそれは、技術革新(イノベーシヨン)によって人類が生み出した叡智と言えるだろう。

 ネフィリムは二十五メートルほどの大きさを誇る巨大戦闘兵器だ。昔の人類がこれを見たら巨大ロボットなどと言うのだろう。そしてその発言は何も間違ってなどいない。

 ネフィリムに標準搭載されているのは電磁レーザー、二十センチメートル砲、コイルガンの三つ。古い時代を知る人間からは『戦闘兵器のデパート』とも言われているが、それは大きな間違いだ。ネフィリムは戦車なんて生易しいもので代用できる言葉では無い。もっと言えば――悪魔みたいな存在だ。その由来とは裏腹に。

 ネフィリムが戦場に導入されたことにより、戦争のメカニズムも大きく変化することを余儀なくされる。人間を文字通り人柱にして戦争をする時代は終わってしまった。歩兵の仕事は無くなってしまうと抗議をした人も居た。しかしネフィリムの台頭は戦争に行く人間が居なくなるという解釈も出来る。だから、主に兵士の家族からネフィリムの開発スタッフ――スタッフの名前は有名な科学者を除いて公表されることはないから、国か或いは研究施設そのものになる――に感謝の手紙を送られたという話も聞いている。

 ネフィリムの台頭で戦争に行く兵士が少なくなる。

 それは考えとしては短絡的であるが、しかし間違ってはいない。

 ネフィリムはロボットだ。ロボットということは機械であり、結局機械をメインテナンスするのは人間になる。それだけではない。ネフィリムが台頭しているとはいえ、ネフィリムを開発することだけで国家予算の数割が持っていかれるという噂もあるくらいだ。それに、管理をするにもお金はかかる。誰だってボランティアでやっているわけではないのだから。

 しかしながら、ネフィリムの台頭によって明確に変わったことはある。

 それは人間の兵士の死亡率だ。今まで八割を超えていた死亡率がネフィリムの運用によって一割以下に激減した。理由は単純明快。ネフィリムが主に戦争の最前線に立つことから、人間の兵士がわざわざ前線に立つことが無くなったためだ。それでも死亡率は一割までしか引き下げることは出来なかったわけだが。

 では、ここで一つ問題。

 ネフィリム台頭後も戦場で働く兵士はどのような仕事をしているのだろうか?


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