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マスターは透明人間  作者: 蒼北 裕
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第1節 出逢い

書いてて思いましたが、完全に某漫画作品に近い作品になっていることと、書き方が某アダルトゲームに近いですが…影響、受けちゃったんだ、ごめんなさい。

こういった話になるとどうしても意識してしまうのはどうしようもないことなのかもしれません。

 私がこの街、フォグスレイブに来てから半年は経っただろうか。今の仕事にもようやく慣れ始め、この土地の特徴?

 というより空気、みたいなものにも慣れた。


 初めてここを訪れた時、天気はあまり良くなかった。というか、霧がかかっていた。おかげで随分と道に迷った。


「あぁ、幸先が悪いなぁ」


 なんて。


 働ける場所、住む場所を見つけて、仕事を学んで、食材買ってご飯を作って食べて、お風呂に入って眠って。


 それで次の日、目が覚めても。


 街には霧がかかったままだった。


 そういう場所なんだって、店主のアンナさんは言うけれど。よそ者の私にとってはそれがひどく不気味に思えた。


「この街、絶対におかしいよ」


 でも、それからしばらく過ごして気付いた。街は霧に覆われているけれど、そこに住む人達の心には霧なんてかかっていないと主張するように、みんな明るくて、暖かかった。


 職場で失敗することもあったりしたけど、毎日の生活に困ることも無く。休みの日には街の中を探索したり、市場で行商の人から珍しい物を買ったり、本屋で本を買って読んだり。


 普通かもしれない、それでも私にはこれで充分だった。


 そんなこの街も、一年中通して霧がかかっている訳ではない、らしい。霧が晴れる日もあるという、頻度としてはかなり少ないらしいけど。


 その日は普段よりも早く目が覚めた。


「(なんだろう、いつもより少し明るいような気がする)」


 ベッドから体を起こして、ふらつく足取りでカーテンに手をかける。ゆっくりと開けていくと、


「ひ…かり?眩しいし、温かい…?」


 おかしい。

 

 以前の私には当たり前だった光が、窓の外から部屋の中を照らす。

 

 おかしいのが光ではなく私の方だということに気づくのに、しばらく時間がかかった。


 自分の認識が変わったことに気付いたのは、いつもより早めの朝ごはんを食べている時だった。


 家から出ると、曲がり角から走ってきた子供たちが私の前を横切る。


 はしゃいでいるその姿はどこか微笑ましくて、なんだか私まで嬉しくなってしまう。


 それにしても、


「少し、暑いんじゃない?」


 普段は霧のせいで肌寒いくらいなのに、今のこの天気。


 まるで海みたいに青い空を見上げては、その一点、照りつけるお日様に恨むように声を漏らした私。


 少し涼しい格好になろうと思い、家に引き返す。


 けれど、私はこの街に来て初めて、ここの晴れを知ったことに気付いたのだ。


「夏用の服、買ってなかったんだった……」


 確か、服屋には夏用の服、涼しげな薄着とかあったけれど。でも考えなかった。


「だって、晴れる日なんて滅多に来ないって言ってたし…それに、あの時はお金無かったし…」


 愚痴っても仕方ないのはわかってるけれど、どうしても言わずにはいられない。そんな気分。



「晴れるなら晴れるって言ってよ!もー、太陽のバカーー!!」




 そのせいだろうか。



 家が、少し揺れたような気がした。



 天気が良いと気分も不思議と高揚する。この街に来て本当にそのことを思い知らされる。


 持っていた中でも生地の薄い服を選び、なんとか誤魔化す。長い袖に太陽が当たる。


「(うぅ、服屋まで行って…買おう…服)」


 暑いのもあるけど、周りの目が、気になる。


 ただでさえ他所から来た人間だとしてもこんな、太陽が照りつける往来を季節外れの服で歩くことなんて、出来ない。


 私の住む家は三番街、服屋があるのは一番街。ここからそこに行くには市場を横切る必要がある。

 

 行ける、全力で走る。そうすれば完璧だ。我ながら見事な作戦。


 時計に目をやる。時刻は午前6時。この時間ならまだ市場はほとんど開いてない。


 この時、私は甘かった。数少ない晴れの日。


 そんな貴重な日に、この街がいつも通りの街であるハズがなかったことを。


 そして今日この日、私は一人の男性に出会うことになった。



 男性、だと思う。



 多分。きっとそう。



 市場に溢れる人の流れから私を守るように、手を引いてくれた。白い手袋をはめた大きな手。


 太陽が照りつける中、見ているこっちが暑くなりそうな、トレンチコートを纏った。顔の無い、その人。


 彼の名前はジラード・ユースティフ。この街では有名な、


 透明人間だった。



 そう、きっとそう。


 紛れもないここからだ。



 この日、この場所で、私の中の歯車が切り替わった。



 普通の日常に幸福を見出していた人生から、ちょっぴり不思議な彼との人生に。


 ガコンッ、と重い歯車が切り替わった。


 ような音が、聞こえた気がした。




---私、オリヴィエ・立花、16才。


 仕事はとある屋敷の使用人として働いています。


 えぇ、それはもう立派なお屋敷です。


 一つだけ変わったところがあるとすれば、



私のマスターが、



『透明人間』であることだけでしょうか。---



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