53. モルト砦防衛戦(後編)
魔王ゾイ=エン。
そして、黒い神官服の集団。
黒い神官服と繋がっているであろう、『研究者』。
その目的は判然としないけれど、魔族領に入らずして追うべき敵の姿が見えてきたのかもしれない。
しかしその話は後だ。
今は目の前の敵に集中しなければ!
私は周囲に聞こえるように声を張り上げた。
「魔物の後方に竜がいます! ごめんタツキ、行ける?」
空中戦では私は役に立てない。
そして夜間ではハルトでも竜と対峙するのは厳しいだろう。
そうなるとタツキを頼らざるを得ない。
「大丈夫、行けるよ。種類は分かる?」
「種類? 色は見えないけど……」
私はぐっと目を凝らす。
竜の種類を見分けるならその体表の色を見るのが一番だけど色を判別するにはまだ相手が遠すぎるし、千里眼を使おうかとも思ったけれどこの夜闇の中で正確に色を判別する自信はない。
ただ幸いなことに、火竜の知識の中から竜を体色以外で判別する方法を見つけ出したので、そちらを試してみることにした。
それは竜が互いに干渉しない距離を保つために備えているセンサーのようなもの。その能力を私でも行使できないものかと試行錯誤する。
竜はそれを本能で感じ取っているみたいだけど、私は竜じゃないからなかなか難しい。
竜の本能……その感覚を何とか掴めれば……。
私は向かい来る竜に意識を集中した。
そうして集中していると不意に、水流のイメージが脳裏を過った。
これかな? これが竜の種類を示しているのかな?
確信は持てないけれど、ほかに手掛かりはない。
「たぶん、だけど。向かってきてる竜は水竜だと思う」
「わかった。任せて!」
すぐさまタツキは飛び立った。あっという間に北の空へと飛び去っていく。
それを呆然と見送っている砦の面々を見回すと、私は手をパンパンと叩き、自分に注目させた。
「さぁ、私たちもタツキに負けないように魔物退治頑張りましょう! 魔術師団の皆さん、スクロールと詠唱の準備はできましたか!?」
遠くまで聞こえるように声を張り上げると、「おぉー!」とやる気に満ちた返事が返ってくる。
よしよし、皆気合い十分なようだ。それじゃあ始めますか。
作戦については夜明けとともに行われる予定だった作戦をそのまま流用することになった。
そして私はその作戦内容の説明を受けて、魔術師団の指揮役を拝命した。
軍団の指揮役とか当然ながらやったことはないけれど、私が提案した魔術を打ち込む位置の指示を出すだけでいいそうなので、時間も切迫していることもあって引き受けたのだ。
私は私にできることをやるだけ。
そう自分に言い聞かせながら、魔力操作で光の線を描く。それを次々と砦側から飛ばし、魔物の群れ……それもとりわけ大型の魔物がいる付近へと落としていく。
それをなぞるようにして魔術師団の面々と反対側の物見塔にいるハルト、魔術師団の中央付近にいるフレイラさんが広範囲攻撃魔術を放つ。
魔術が炸裂した地点では、次々と小型や中型の魔物が倒れていく。さすがに大型は一発くらいでは倒せないようだ。しかしこの調子でいけば相当数いる魔物もかなり片付けられるはず。
ただし、それまでハルトやフレイラさん、魔術師団団員の魔力が持てば、だけど……。
しかしそんなことを今から心配していても仕方がないので、頭の中からさっさとその考えを追い出した。
魔術を放つ位置については、重複しないように区分けして分担している。
さらに土地が再生不可能にならないよう、環境への影響を考慮してハルトとフレイラさんは神聖魔術を、魔術師団の面々は水属性や風属性、水属性から派生する氷属性といった魔術を使用させている。
思念発動ができない魔術師団の団員は、間断なく魔術が放てるように前後に並ばせて交互に魔術を行使する形態を取るように指示を出してある。そして詠唱がしんどくなってしまったら、スクロールに切り替えて対応する段取りになっている。
詠唱は延々と文言を口にする分、何度も繰り返していると喉を痛めるからね……。
魔力切れに関しては、魔力が切れ次第すぐさま戦線を離脱して後方に控えている交代要員の魔術師団団員と入れ替わる手はずになっている。これで仮に魔物を全滅させられずとも夜明けまで持つはずだ。
夜さえ明ければ砦に詰めている騎士や兵士も戦いに出られるので、魔術師団にはそこまで頑張ってもらいたい。
「着実に魔物の数が減ってますよ! この調子で頑張りましょう!」
恐らく誰にも魔物の数が減っているかどうかなど見えていないだろう。成果が見えない時はモチベーションを保つのは難しい。
なのでせめて言葉でだけでも状況を報告すると、先ほどと同じように「おぉーっ!」と、威勢のいい返事が魔術師団団員たちから返ってきた。
まだ皆元気そうだ。私も彼らに負けないよう、集中力を切らさないように次々光の線を飛ばしていった。
その上空ではタツキが竜と戦っていた。時折光が走ったり、辺りを照らし出したりしている。
相当派手にやっているようだけど、空中だから環境への影響はそうないだろう。
しかしじわじわと押されているのか、こちらに近付いてきている気がする。タツキは大丈夫だろうか……。
そうは思うものの、念話に集中力を割く余裕がない。
私はタツキを信じて、ただひたすら目印の光を飛ばすことに集中した。
* * * * * タツキ * * * * *
眼下ではリクが魔力操作で放った光の線が魔物の位置を知らせ、魔術師団やハルト、フレイラさんが放った魔術によって魔物たちが次々と倒されていた。
なかなか順調なようだ。
僕の方は──どうも相手側の様子がおかしかった。
竜はリクの言っていた通り水竜だったけど、どうやらただの水竜ではないようだ。
「何故邪魔をする! そこをどけぇっ!」
叫びながら鉤爪を振るう水竜。とんでもなく速い。
しかし幸いなことに僕は精霊なので、物理的なダメージを負うことはない。当然のように竜の放った鉤爪は実体化を解いた僕をすり抜けて宙を掻く。
「ここをどいたら、この先にある砦や町を破壊するんでしょ? だったら行かせるわけにはいかないよ」
そう呼びかけると、水竜は憎悪に満ちた目で睨んできた。
恐っ!
血走った黄金の目が、夜闇の中で光を放っているかのように見える。
しかし幸運にもこの水竜は、アールレインを襲った風竜のように会話ができない状態まで怒りに染まり切ってはいなかった。
会話ができる。
これは本当に有り難い。
ついでに色々と情報を貰ってしまおう。
「何故だ! 先に手を出してきたのは人族ではないか! なのに何故人族に報復してはならないのか!」
「人族が? そんなはずはないと思うけど。知ってるでしょ? 人族は神位種を除いては基本的に脆弱な種族だって」
「だが我の棲み処を奪ったのは人族だ!」
叫びながらも次々と攻撃を放ってくる。
半分以上が鉤爪や体当たり攻撃だから無効化できるけど、不意に魔術を使ってくるから油断できない。物理的ダメージは無効化できても、魔術のダメージは通るのだ。
初手で分解を使えなかったのが地味に痛いな……。
しかし何だかこの水竜の言い分はおかしい。
賢い竜族がこうも感情的に叫んでいるのも珍しいけど、自らを巣から追い出すほどの力量を持った相手を人族と断定しているのが何とも不思議だ。
「じゃあ、神位種に襲われたの?」
「あれは神位種ではない!」
そんな馬鹿な。
そうは思うものの、竜族が神位種や魔王種といった特殊な存在を感知できないとは思えない。それほどまでに竜族の感知能力は高いのだ。
でももし、仮に神位種ではない人族にそんなことができるのだとしたら、相当な人数を集めて竜の巣を襲ったことになる。
魔族領をそんな集団で闊歩してたら、すぐさま好戦的魔族に狙われてしまうと思うんだけど……。
仮に好戦的魔族に襲われて切り抜けたのだとしても、そのあと竜を相手にする余力が残っているものだろうか。
そもそもあの戦闘狂──魔王ルウ=アロメスやその配下で暇人のメリオンが、そんな面白そうな集団を見逃すはずがないと思うんだけどな……。
「ちなみにその人族の特徴は? 本当に人族だったの?」
「我も竜の端くれ、種族くらい判別できる! 我が棲み処を襲ったのは白い肌、白い髪、赤い目、黒い服を着た人族だ。そやつが精霊と魔獣を操って我が棲み処を襲い、我を追い出したのだ!」
白い肌、白い髪、赤い目と言えば、この世界では白神種と呼ばれている人族の希少種だ。
どういった経緯でその情報がもたらされたのかは知らないけれど、その色はイフィラ神と同じ。ゆえに彼らは白神種と呼ばれ、神子として神殿に保護されている。
とは言え、白神種は直感力に優れているくらいで竜を脅かすような力は持っていなかったと思うんだけど……。
これについては今考えても仕方がないか。あとでイフィラ神に問い合わせてみよう。
それよりも気になったのが『黒い服を着た人族』という点だ。しかも精霊と魔獣を使役するらしい。
そんな特徴を持った人族を僕は知っている。センザに向かう途中の森で遭遇した、黒い神官服だ。大きめの神官帽を目深に被っていたから髪の色や目の色はわからないけど……まさか、同一人物?
でももし同一人物なのだとしたら瞬間移動のようなことができないと、短期間にセンザ手前の森と竜が棲みつくような場所で目撃されるには距離的に無理がある。
今のところ、この世界に瞬間移動ができるような魔術は存在しない。仮に別人だとしたら、精霊と魔獣を同時に操る召喚魔術師が複数いるということだろうか……。
そんな考えが過ったけれど、それも現状では確かめる術がないから別の疑問を投げかけることにした。
「それで、何で敢えて南下してきたの? 人族の国なら魔族領の東側にもあるのに」
「なぜ……?」
唐突に、水竜が動きを止めた。
僕も一旦反撃の手を休める。
「なぜ……だと? なぜ、なぜだ……?」
水竜は混乱しているようだ。先ほどまでの怒りの感情が消え失せている。
混乱に乗じて、さらに一石投じてみようかな。
「もしかして、だけど……操られてたんじゃない?」
ブライは白神竜という明確な脅威に追い立てられてアールグラントにきたと言う。
一方リクが吸収した火竜に関しては、リクがどれだけ記憶を探っても巣を追い立てられたあとになぜ南下しようとしたのかはわからないと言っていた。
この水竜は恐らく後者……火竜と同じ流れでここにきたのではないだろうか。
となると考えられるのは思考操作。もしくはそれに類似した何らかの能力が使われたことによって、南へ向かわせられた可能性だ。
竜を相手に精神や思考への干渉が行えるなんて普通じゃ考えられないけど……いや、リクはできるのか。
でもリク以外でそんなことができる存在がこの世界にいるのだと思うとぞっとする。最悪の場合、ブライたちを巣から追い立てた白神竜も操られていた可能性がある。
むしろ竜を巣から追い立てるという点で共通しているから、どこかで繋がっているのかもしれない。
自分で考えてて段々怖くなってきた。
でもその先に、僕がずっと知りたかった……調べ続けていたものの答えがある気がした。
黒い神官服、『研究者』、魔力暴走事故の原因。
魔力暴走事故は、世界の境界を突破してしまうほど膨大な魔力による暴走が引き起こしたものだ。僕が調べた限り、現状ではそんな膨大な魔力などこの世界のどこにも蓄積されていない。
つまりあれは自然現象ではなく、誰かが意図的に膨大な魔力を集めていたと推測できる。
そして『研究者』、もとい、誘拐犯の標的は希少種だ。
希少種は保有する魔力の絶対量が多い種族が多い。
神位種然り、魔王種然り、妖鬼然り。
そして誘拐に加担している黒い神官服たち。希少種を攫い、さらに竜を棲み処から追い立てている。
竜の棲み処は基本的に魔力が湧き出ている場所だ。神竜であるブライの棲み処は別としても、竜の棲み処を手に入れるということはその地で生み出されている魔力を占拠するということでもある。
魔力。
全てが巨大な魔力という点で繋がる。
そこから推測するに、今、誰かがどこかで膨大な魔力を集めようとしている。その誰かとは恐らく、『研究者』と呼ばれている存在だろう。
一体何が目的なのかわからないけれど、再び集められた魔力が暴走したらどうなるのかなんて考えるまでもない。
「我が操られるなど……あるはずが……」
水竜の声で我に返った。危ない、危うく思考の渦に呑まれるところだった。
狼狽している水竜に視線を向け直す。眼下では魔物たちが砦からの攻撃に晒されて、次々と倒されていた。
僕は一度頭を振って、思考を切り替える。
竜が操られる可能性。それについて考える。
「なにか、隙ができるようなことはなかった? 例えば、何らかの方法で恐怖を抱かされたとか」
恐怖は隙を作る。精神への干渉が容易になる。
ゆえに、分解を行う上でも相手に恐怖を抱かせるのが一番手っ取り早く、且つ抵抗がなくて楽なのだ。
水竜も身に覚えがあったのだろう。はっとした表情になる。
「恐怖……確かに、あの人族の圧倒的な力に我は恐怖した。高位精霊を使役し、巨大な魔獣を複数召喚し、その魔獣がさらに眷族を集め──その頂点に立つあの人族の、あの凍てついた目と感情の抜け落ちた顔に恐怖を覚えた」
「たぶんそこにつけ込まれたんだ。竜は恐怖とは縁遠い種族だから、ちょっとした油断が大きな隙になる。その隙を突いて干渉系魔術なりなんなりで思考を操作された」
「そんな、馬鹿な……」
愕然とした様子で水竜は項垂れた。
そしてその視線の先に、魔物の群れを見つけたようだ。
「……あの魔物の群れは何だ?」
「あれは魔族や人族の棲み処を襲っている魔物の群れだよ。あの群れは魔族領の村をひとつと人属領の関所ひとつを破壊して、この南側にある砦に向かってる。今は砦にいる人族が生き残りをかけて、あの群れと戦ってるんだ」
そこにさらに追い打ちをかけるべく仕向けられたのがこの水竜なんだろうな……。
竜の性質上、怒りに染まった竜の目に止まった町などは破壊される可能性が高い。ただ幸運にも、この水竜は怒りで我を忘れることはなかった。実に理性的な竜だった。
実際受け入れ難いであろう自らの状況を受け入れたようで、先ほどまで感じられた怒りや憎しみはすでに感じられない。
しかし不意に、その瞳にある光が灯るのがわかった。
決意の光だ。
「棲み処を襲う、魔物の群れ……!」
水竜は唐突に大きく身を仰け反らして魔力を集めると、眼下に向かって凍てつく冷気を吐き出した。
寒っ!
僕は咄嗟に結界を張って冷気をやり過ごす。そして改めて眼下を見ると、相当な数の魔物が凍り付いていた。
そこに一拍遅れて風属性の攻撃魔術が降り注ぐ。猛烈な風の暴力に晒されて、凍り付いていた魔物は呆気なく砕け散っていく。
その後も水竜は、まるでこれまで人族に向けていた怒りの矛先を魔物に向け直したかのように凍てつくブレスを吐き続けた。
恐らくその光景がリクには見えているのだろう。これまで水属性の攻撃魔術も使っていたのに、今はもう風属性の攻撃魔術だけを打ち込んでくる。魔物たちは大型も中型も小型も関係なく、次々と砕け絶命していく。
僕もぼーっと見てるわけにもいかないか。
そう思って風属性魔術を、リクに文句を言われない程度に抑えて構築し、眼下へと放った。
やがて太陽が地平線から顔を出し始めた。
水竜は最後の一発だと言わんばかりに、これまでで一番の威力の凍てつくブレスを吐き出した。それが生き残っていた魔物の集団に吹きかかり、凍り付かせる。
そこに風属性の攻撃魔術が砦側から放たれて、魔物たちは砕け散っていった。
「終わった……」
「ふむ、人族との共闘か……。悪くなかったな」
ほっと息をつく僕の横で、水竜が不思議そうに首を捻りながらもどこか満足げに呟き、やがて笑いだした。
どうやら同じ敵と戦ったことで人族への好感度が上がったようだ。個人主義の竜にしては珍しい。
「それで、これからどうするつもりなのか聞かせて貰ってもいいかな」
多少友好的になったとは言え、念のためにまだ人族に仇成すつもりがあるのかを確認する。
すると水竜は目を眇め、南方の砦を見遣った。砦ではかなり離れたこの場所にいても聞こえるほどの大歓声が上がっていた。
無事朝を迎え、しかも思わぬ援軍のおかげであの数の魔物を一匹残らず殲滅することができ、誰もが歓喜の声をあげている。
「人族は脆弱な生き物だ。だが、集団となった時、我ら竜をも凌駕する力を発揮する。竜は皆、それを知っている。しかし我らには他者に干渉するという感覚がわからぬ。知っているか? 竜が竜同士で関わり合わないのは、竜とおう個体が強すぎるがゆえに神が施した仕組みなのだ」
「へぇ」
それは知らなかったな。
でも確かにそうだ。仮に竜が徒党を組んで世界を支配しようとしたら簡単に達成してしまうだろう。それくらい竜はこの世界で圧倒的な存在なのだ。
それに対抗できるのは神位種と魔王種。稀に高位精霊や高位魔獣にも竜に対抗できる個体が生まれるけど──相手が神竜である場合は全く状況が異なってくる。
現状、僕では神竜には勝てない。そこでブライの存在が重要になる。
覚醒して神竜になったあともブライが僕に従ってくれるかはわからないけど、ブライが協力してくれるなら白神竜も何とかできるだろう。
そのためにも僕は、ブライの主で居続けるための努力を怠ることはできないんだけどね……。
「人族とは不思議な生き物だな。我らは生き延びたからと言って、あのように喜んだりはしない。命の危険など、常に隣にあるものだ。そこを乗り越えるたびに喜ぶことなどできはしない。しかし……あのように喜べることが、羨ましく思う」
ふと寂しそうに水竜がつぶやく。
怒りに我を忘れない理性と言い、神に組み込まれた竜の本能に関する知識と言い……この水竜は相当な年数を生きているんじゃないだろうか。
「そう思うなら、あそこに混ざってくれば? 君はかなりの年数を生きている水竜だよね。なら、人化も簡単にできるんじゃない?」
「なっ……何を言うか! つい先ほどまで憎んでいた人族と馴れ合うなど……!」
……相当年数を生きているようではあるけれど、こうも感情が筒抜けなのはどうなんだろうなと思う。
いや、これも個性なのかな。竜といっても色々いるもんね。
なので竜に効果的な言葉を頭の中で組み立てて囁く。
「その下らない自尊心のために、貴重な経験と知識を逃すかもしれないよ?」
経験、知識。
竜は知識の宝庫とも呼ばれるほどの生物だ。それは偏に彼らが貪欲に知識を求め、その身で経験して獲得しているからであり、そのためだけに人化能力なんてものまで作り出している。
何せ竜ともなると認識阻害なんてものでは誤摩化し切れないからね。主に、サイズ的な意味で。
「ち、知識……!」
さっそくぐらついてる。しかもじわじわとその体のサイズが縮小してきている。人化能力を使っているのだ。
本当にわかり易いね、この水竜……。
「経験……!!」
そして人族サイズまで人化しきると、背中に残されていた翼で砦に向けて飛び去っていった。
もう暴れたりはしないだろうけど、一応心配なので僕もその後に続いた。




