111. この世界という場所
天歴2527年。
長い冬が終わり、春がやってきた。
春を迎える少し前、サラはアールグラント王国の保護下から出て、今後はフォルニード王国に所属する事を決断。
この件についてはサラの決意が揺るがない事を確認した上でアールグラント王国側に報告し、国王陛下やお妃様たち、魔術師団の面々など、多くの人々に惜しまれながらも了承された。
その後フォルニード王国側にもサラがこの国に所属する事を希望している旨を伝えたところ、マナを筆頭としたフォルニード王国側から手放しで歓迎された。
これだけ歓迎してくれる国がサラを迎え入れてくれるのなら、私としても安心だ。
ただ、サラもアールグラントの魔術師団内でそれなりの立場に立っていたため、今すぐにというのは難しく。
最終的に、ハルトがフォルニード王国での役割に区切りをつけてアールグラント王国に戻る際にサラも一度アールグラントに戻り、正式な報告と手続きを行った上で改めて許可を貰う……という形式を取る事になった。
既に了承は得られているから、本当に形だけなんだけどね。
サラの今後についての話が落ち着いた頃、シグリルとレスティがフォルニード村を訪れた。
どうやらレスティは随分前に私と交わした約束を果たすつもりでいるらしく、人ひとり分の寿命と同等の期間、アールグラント王国を守護すると伝えてきた。
シグリルもレスティと共にアールグラントを守ろうと考えてくれているようだ。
何とも有り難い申し出だ。
そんなふたりは今現在、守護にあたる上での棲み処探しをしているのだとか。
話の流れからシグリルとレスティが命の契約を結んだ事とこれから夫婦になる事を聞き、その日は村の中でも料理上手なラーウルさんの奥さんにお願いして、ささやかながらお祝いをさせて貰った。
これは本当におめでたい!
予想外な展開ではあったけれど、ふたりを引き合わせた身としては何だか無性に嬉しい。
お祝いの席でシグリルから「私、将来語り部になろうと思うんです。その中でリク様のお話も集めさせて頂きたいと思っているのですが、いいでしょうか?」と聞かれたので、一体私のどんな話を集めるつもりなのか疑問に思いながらも承諾した。
承諾しつつも自分のこれまでの人生を振り返ってみて、後世に伝えられるような逸話があっただろうかと思い返し……脳裏に浮かんだのは、自らが持つ数々の異名だった。
その由来を思い出し、状況が落ち着いたら念のため、どんな話にするつもりなのかシグリルに確認しておこうと心に誓った。
そんな前向きな話題が上がる一方で、リドフェル教の本拠地探しは難航していた。
案の定と言うか予想通りと言うか……中央大陸を千里眼で覗こうとすると妨害が入ってしまうのだ。
私がやってもタツキがやっても、ブライに試して貰っても結果は同じ。
これではお手上げだ。
けれど最も妨害が強いのが中央大陸の中央部であるところまでは探り出せた。
となれば怪しいのはこちらが当初から睨んでいた通り、中央部だ。
十中八九、リドフェル教の本拠地はそこにある!
半ば確信して、私とタツキは中央大陸に渡る準備を始めた。
ハルトにも中央大陸に向かう事は話しておこうと思っているのだけど、まだ話せていない。
何となく言い出せなくて、先延ばしにしてしまっている。
ちなみにタツキは当初、私が同行する事に反対していた。
けれど「同行を拒否されたら単独で中央大陸に行くからね!」と言ったら、渋々了承してくれた。
どうやらタツキは、ブライだけを連れて中央大陸に向かおうとしていたらしい。
そんな事、絶対にさせない。
私にはソムグリフの記憶がある。
かつて中央大陸に存在したアルスト王国の地図だって頭に入っている。
必ずタツキの役に立てるはずだし、ソムグリフの記憶があるが故に、ソムグリフがフレッグラードに伝えたかった気持ちも抱えたままになっている。
私はソムグリフの思いをフレッグラードに伝えるためにも、中央大陸には行かねばならないのだ。
そんな流れで、中央大陸には私とタツキ、そしてブライで向かう事になった。
ハルトに言い出し難い理由は正にここにあった。
レグルスとの戦いの時のように笑って送り出してくれればいいけれど、今回も同じように送り出して貰えるとは限らない。もしかしたら同行を申し出てくるかも知れない。
もしハルトが最終覚醒……“神覚の加護”を発動できるなら問題ないんだけど、そうでない場合、リドフェル教の本拠地があると思しき中央大陸に渡るのはあまりにも危険すぎる。
そして私が知る限りでは、ハルトはまだ“神覚の加護”が使えないはずだ。
とてもじゃないけれど、連れて行く事は出来ない。
だからこそどう話を切り出すべきか悩み、言い出せないまま時間だけが過ぎていった……。
「そういえば、リクはもう魔王になってたんだね」
中央大陸に関する話し合いに一区切りつけてぐぐっと伸びをした私に、不意ににタツキが話を振ってきた。
私は体を伸ばした姿勢のまま一瞬固まり、タツキの言葉を自分の中で反芻する。
「……やっぱりそうなんだ?」
恐る恐る問いかければ、タツキはこくりと頷いた。
「フレイラさんから聞いたんだけど、“聖護の魔王”の異名は既に聖国エルーンにまで轟いてるみたいだよ。あとフィオからも、リクの活躍がギルテッド王国でも話題になってて、そっちでは“暁光の魔王”の異名で広まりつつあるらしいって聞いたよ」
「うわぁ、信っっっじられない! また痛い異名が増えてるだなんて!」
タツキが口にした自分の新たな異名に、私は盛大に頭を抱えた。
何だ、“聖護の魔王”って!
何だ、“暁光の魔王”って!!
「アルトンの人たちはリクが大規模に神聖魔術を使ってアルトンを守ったから“聖護”って付けたんだろうね。ギルテッド王国の人たちは東方で誕生した神聖魔術を使う魔王って事で“暁光”って付けたんじゃないかな」
この世界でも太陽は東から昇る。
ギルテッド王国の人たちはそれになぞらえて“暁光”なんて異名を付けたのだろう、とタツキは予測する。
いずれにしても、もう異名は勘弁して!というのが私の本音だ。
異名がありすぎて自分でも把握しきれなくなってきたよ、もう……。
「まぁ、リクが魔王になったのは呼称だけの話じゃないけどね。魂も少し変質してる。これが例の、魔王になると長命になるってやつなのかも」
頭を抱えて悶えていると、そんな言葉を向けられた。
長命に。
その単語が私の気を重くする。
そんなもの望んでなんかいないのに、どうして勝手に与えられてしまうのだろう。
せめてくれる前に、いるかいらないかくらい訊いてくれればいいのになぁ。
私は恨めしい気持ちを込めた目で空を見上げる。
そこには薄らと、真昼の月が見えていた。時折思い出したように青白い光を放っているのが、昼間の明るい空にあってもわかる。
タツキも私につられるようにして月を見上げた。
そしてぽつりと言葉を零す。
「……リクもあれが怪しいと思う?」
急な問いかけに、しかし私はすぐにタツキが何を言いたいのかを理解して頷いた。
私は密かに、魔王となった事で延びてしまうであろう寿命を戻す方策を探っていた。
何せ私が知る最古の魔王はルウ=アロメスだ。
ルウはソムグリフの記憶を辿る限りでは天歴216年生まれのはず。
現在の年齢が2300歳を越えているとか、正直理解の範疇を越えている。
私はそんなに長生きしたいとは思わない……というか、通常の寿命で充分なので長命になる事は何としてでも回避したい。
そう考えた時、ふと思い出したのだ。
タツキは以前、「神位種とか魔王種とかはあくまでこの世界の法則上必要とされて発生したもので、イフィラ神は関わってない」「“神覚の加護”とか言ってるけど、それはつまり、この世界そのものからの加護」と言っていた。
そこから推測するに、この世界そのものに何らかの意志があり、この世界を維持するために神位種や魔王種といった種族を生み出したのだと考える事ができる。
ならばその“世界の意志”に接触する事が出来ればもしかしたら、延ばされてしまった寿命を通常の妖鬼の寿命に戻す事も可能なのではないかと考えたのだ。
しかしいざ“世界の意志”と接触しようとしても、“世界の意志”が一体どこに存在しているのかがわからない。
その疑問に打ち当たった時、最初に目を向けたのが“この世界そのものの内側”だった。
何のひねりも無く、この世界そのものがタツキが言っていた存在……“世界の意志”に該当するのではないか、と思ったのだ。
けれど。
ここ数日で急激に、月が気になり始めた。
今までただの風景のように捉えていた月が、青白い輝きを頻繁に纏うようになったからだ。
そして青白く輝く時、必ずと言っていいほど言葉では表現し難い気配を感知するようになった。
震えが来るような恐ろしさとは違う、底知れない、近付き得ない遥かな高みにある存在に対する畏れのような……。
その事から何となく、月には何かがいる、と思うようになった。
何か。そう考えた瞬間、私の脳裏に浮かんだのが“世界の意志”という存在だった。
でもこの世界に寄り添っているとは言え、“世界の意志”があんなにも遠く離れた場所にあるものなのだろうか。
そんな疑問も浮かんでくる。
「僕が思うに、あの月はこの世界の分身のようなものなんじゃないかと思うんだ」
まるで私の考えを見透かしたかのようなタイミングで、タツキが言葉を発した。
私は視線を月からタツキへと移動する。
するとタツキも私の方へ視線を移してきた。
「あそこにあるのは純粋な魔力の塊。でもその内側に、何かしらの意志を内包しているように思える」
タツキの考えを聞きながら頷く私に、タツキは苦笑を向けてくる。
「それに関連して、思った事なんだけど。魔王になった者が長命になる理由って多分、この世界に魔王として認識されると、勝手にこの世界そのものの眷属にされちゃうからなんじゃないかな。この世界そのものの眷属という事はつまり、魔王はこの世界の加護を受けたこの世界の守護者って事になるんだけど……。ただ、そう考えた場合、今度はだったらどうして魔王に対抗できる神位種が存在するのかって話になっちゃうんだよね」
……どうやらタツキには、私が長命になるのを回避しようとしている事も見抜かれていたようだ。
見抜いた上でタツキは、真剣に解決策を……解決に至るために必要な前提を、模索してくれたのだろう。
その事がタツキの言葉や態度から伝わってくるから、私は真剣にタツキの言葉に耳を傾け続ける。
「これはあくまで僕の予想だけど、この世界にはふたつの意志があって、あの月はその片割れ。この世界の意思の分身なんじゃないかと思うんだ。リクが話してくれたコールとゴルムアみたいに、ひとつの世界にふたつの意志と思考が存在していて、うまく噛み合っていないのかも。そうして意志が分かれた結果、それぞれの意志がそれぞれに眷属を作った。その眷属こそが、この世界の魔王種と神位種……なのかな、と思ったんだけど」
おぉ、なるほど!
確かにそう考えれば、辻褄が合うような気がする。
毎度思う事なんだけど、タツキは本当に凄いな。
ただ、ひとつだけ引っかかる点があった。
「タツキの話は凄く筋が通ってると思うんだけど……。けど、もしタツキの言う通り魔王が長命になる理由が“世界の意志”の眷属になるからだとするなら、何で神位種は長命にならないんだろう?」
抱いた疑問をそのままぶつけると、タツキは苦々しい表情を浮かべた。
「そこなんだよねぇ。これも僕の予想なんだけど、もしかしたらこの世界の意志の片割れは、意図的に真なる眷属を作っていないんじゃないかな。以前の僕のような、加護は持っていても自分の種族の特性……神位種で言うなら人族の特性に縛られたままの、完全ではない中途半端な眷属を作っているのかも」
「はぁ〜。なるほど」
妙に納得がいって、私は感嘆のため息を吐いた。
本当にうちの弟、天才過ぎないだろうか。
そう思っているのが顔に出ていたのか、タツキが呆れ顔になる。
「あのね、リク。その“うちの子天才だ”っていう顔するのやめてくれないかな」
やはり顔に出ていたらしい。
私は慌てて真面目顔を作って誤摩化す。
その顔がおかしかったのか、タツキは小さく吹き出して笑った。
「そもそも僕はイフィラ神から膨大な知識を貰ってからこの世界に来たんだし、リクよりも色んな地域を回ってきた分、この世界の事もよく知ってると思うよ。どの大陸にも様々な言い伝えが残されているんだけど、そういう情報や自分が持っている知識を基にして考えればきっと、リクも僕と同じ答えに辿り着くはず」
「他の大陸? 北大陸とかにも行ったの!?」
“どの大陸にも”という言葉に反応して思わず身を乗り出すと、タツキは首肯する。
そこからはひたすら他の大陸について、タツキを質問攻めにしてしまった。
だって興味があるんだもの!
あの大陸はどんなところ?そっちの大陸はどんな風土なの?と、私は前のめりになってタツキに問いかけた。
タツキは苦笑しながらも、中央大陸には近付く事もできなかったけれどそれ以外の大陸の話ならと、肩の力を抜いて色々と話を聞かせてくれた。
北大陸は万年冬の大陸で、常に大地が雪に覆われているそうだ。
少し特殊な民族が多く暮らしており、民族ごとに何らかの生け贄を捧げる儀式が行われているらしい。
その中でも白神種を生け贄にしているのは西部に偏っているから、恐らくムツキたちが生まれたのは北大陸西部ではないかという話だ。
この北大陸では民族ごとに離れて暮らしているけれど、どこも一様に名前のない同一の神を崇めていて、神は月にいるという伝承があるのだそうだ。
北大陸を西へと進むと、西大陸との間を点々と繋いでいる群島が現れる。
その群島はどうやら、私も知識でしか知らない種族、天族が住まう地域らしい。
けれどタツキも遠目に天族の姿を見たものの、もの凄い剣幕で追い出されてしまったので、天族がどういう種族でどういう暮らしをしているか、どんな言い伝えを持っているのかなどはわからなかったらしい。
とりあえず、天族がやたら強い事と恐い事だけは間違いない、と言っていた。
西大陸は砂漠が大半を占める大陸で、とても熱いのだそう。
魔物ではない黒牛魔によく似た動物を飼い馴らして砂漠を渡る人々と、オアシス周辺に集落を作って暮らしている人々がいるのだそうだ。
西大陸では魔物はよく見かけても、魔族は滅多に見ないとの事。
どうやら北大陸でも似たような状況で、魔族を見かけるのは人里離れている場所。むしろ人族が暮らすのには向かず、且つ人族が近付かないような場所にひっそりと集落を構えているのだとか。
もしかしたら、東大陸みたいに堂々と“魔族の国”なんてものを作れる大陸は、他にはないのかも知れない。
西大陸での言い伝えでは、大地と風に神が宿り、日々感謝を捧げながら暮らせば恵みの雨が齎される……といったものらしい。
南大陸は、中央大陸から見たら正確には南西側にあって、森が深く、主に精霊族が暮らしている大陸なのだそうだ。
南大陸では魔物も魔族も割とよく見かける方らしいけれど、大陸で最も力を持っているのが精霊族だからなのか魔物も魔族も大人しく、割と平和な大陸なのだとか。
南大陸にも私が知識でしか知らない精霊族に属する種族がいるらしく、背中に羽を生やした妖精や、前世でエルフと呼ばれていたような容姿を持つ精霊人という、実体を持った精霊族がいるらしい。
是非とも一度はその姿を見てみたい。
南大陸でも多くの言い伝えがあって、月より魔力が、大地より恵みが与えられているというものが多いそうだ。
あとは、かつて精霊族の危機を救った“始まりの勇者”にまつわる伝承が多く、その中にこんなものがあったそうだ。
命を失いかけていた勇者を、神が救い上げた。
神は勇者の魂を取り込み、魔王の魂をも取り込み、勇者の肉体を大地へ還し、魔王の肉体を月へと封じた。
なるほど。
確かに各大陸の伝承を聞けば、“世界の意志”がふたつあるのではないかという発想が出てきてもおかしくはない。
けれどそれでも、ふたつの“世界の意志”がそれぞれ眷属を作り、それが魔王種や神位種になったのではないかという考えには至らない。
この辺は恐らく、イフィラ神の眷属であるタツキだからこそ気付き得た事なのかも知れない。
最後に、タツキはオマケとばかりにもうひとつの群島の話をしてくれた。
その群島は南大陸と東大陸を繋ぐようにして点在しているそうで、ミールオラ群島という名がついているそうだ。
ミールオラ群島には魔物が多く、魔族はごく少数。
人族はほとんどいない。
ほとんどと言うか、たったひとりしかいないらしい。
「その人族は年老いた水竜と共に暮らしていた、この世界で“賢者”と呼ばれている人物のひとりだよ」
この言葉に私は更に前のめりになってしまった。
年老いた水竜と共に暮らしていた賢者。
過去形なのが気になるけれど、その水竜は、もしかして。
息を詰めて水竜の名を訊こうとしたけれど、続くタツキの言葉に私は言葉を呑み込んだ。
「でも、もう十年くらい前だったかな。水竜が寿命を迎えた。水竜と命の契約をしていた賢者の方も、体内に残っている魔力を使い果たしたらもう……」
長らえた命の分だけ、肉体の損耗も激しくなる。
例え肉体の崩壊を魔力が阻止して維持した所で、その分だけ魔力を消耗し、魔力自体が維持できなくなり、やがて魔力が枯れれば命の終わりがやってくる。
言葉にされなかった現実が、嫌でもわかってしまった。
そっか……。
シスフィエはもう、天寿を全うしたのか。
それに、“賢者”もひとり、この世界からいなくなってしまう。
いや、もう既にこの世にいないのかも知れない。
直接私自身に関わった相手ではないのに、妙な喪失感を覚えて俯く。
命の終わりなんて、誰にだってやってくるのに。
そこでふと気がつく。
もしも。私が魔王として長命を得て、その運命から逃れられなかった場合。
私は親世代どころかハルトの事も、セタの事も、サラも、フレイラさんも、これまで出会ったたくさんの人たちの事も、見送っていかなければいけないのか。
そんな未来を想像しただけで、涙が込み上げてきそうになった。
何とか込み上げてくるものを堪えていると、こちらの心境を察したのか、ぽんぽんとタツキが優しく肩を叩いてくれた。
私は地面に落としていた視線を上げて、タツキに焦点を合わせる。
タツキは少しだけ寂しそうに微笑んでいた。
そうか。
タツキは既に、みんなを見送らなければならない立ち位置にいるのか。
表情こそ寂しそうだけど、タツキが既にみんなを見送る覚悟を決めている事は、揺らがない瞳を見ればわかる。
前世のお父さん、お母さん。
タツキは本当に、強い子に生まれ変わったよ。
ちゃんと見てくれてる?
「さぁ、そろそろ話し合いの続きをしよう。他の心配事は、リドフェル教を止めてから考えようよ」
気を取り直すように微笑みかけられて、私もぐっと口を引き結んで頷いた。
もし私が長命になって、それをどうする事もできなかったら。
そうしたらタツキと一緒にみんなを見送ろう。
そしていずれイフィラ神の元へ帰るだろうタツキの事も、ちゃんと笑顔で見送ろう。
そう決意して、私は頭を切り替えた。