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魔王候補になりました。  作者: みぬま
第5章 新たなる魔王の誕生
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87. 狂人の正体

 フォルニード村に到着すると、入り口で待ち構えていたラーウルさんが出迎えてくれた。タツキが村に結界を張るなり急に村の外に出て行ってしまったので、後を追うべきか悩んでいたそうだ。


 ラーウルさんは私の来訪を喜んでくれた。けれど、一度は復興しかけていた村が半壊している光景を眺め、「折角支援して頂いたのに、守りきれず申し訳ない」と頭を下げてきた。

 そんなの、ラーウルさんのせいじゃないのに……。


「いえ、今回は災害のようなものですのでラーウルさんの責任じゃないですよ。誰にも、どうする事もできなかったと思います。それより村人や復興要員の方々は無事ですか?」


 話題を変えつつ最も気掛かりな事を問いかけると、ラーウルさんの表情がさっと翳った。視線を落とし、悔しそうに眉間に皺を寄せる。


「それが……マナやセン、フレイラ様やブライ様が奮闘して下さったのですが、12名ほど命を落としてしまいした……。怪我人も、30名ほどいる状態です」


 死者12名……。こう言っては何だけど、思ったより死者は少なく済んだように思う。

 あのマナの緊迫した感じから、全滅寸前に追いやられているのではないかと思ってしまったくらいだ。睦月たちが駆けつけるのが早かったのだろう。


「あの……もしご存知でしたら、我が国からこちらに移住していたランサルと言う名の念話術師がどうなったのか、知りませんか……?」

「ランサル殿ですか……あの方なら──」


 ちらりと、ラーウルさんが無事残っている建物の中でも一番大きな建物を視線で示した。

 あそこは確か、執務用に一番最初に建てられた建物だ。


「ランサル殿は我々を守ろうとして、結界を張って下さったのです。けれどあの化け物はその結界を破り、真っ先にランサル殿に……」




 一通りラーウルさんから当時の状況と被害状況を聞き出すと、私は早々にハルトに向けて念話を飛ばした。


 フォルニード村は半壊。

 死者12名、負傷者31名。そのうち重傷なのは6名。

 いずれもタツキの力で一命を取り留めていること。

 重傷者の中にマナとセンが含まれていること。

 フレイラさんは負傷したものの無事で、ブライも無事。


 ただ、ランサルさんは死亡。村人を守るために、率先して前線に出たらしい。

 死者12名中8名は、襲撃者の猛攻から村人を逃がすために立ち上がったランサルさん含む復興要員が占めていた。

 8名のうちアールグラントの人間は4名。ランサルさん以外の犠牲者は皆、騎士だった。


 フォルニード村を襲った襲撃者に関しては、ゴルムアで間違いない事を確認。これは私が過去視で確認した。ゴルムアの顔は魔王ゾイ=エンと白豹ゾルの記憶で見知っている。

 曇り空のような灰色の長髪、狂気の底に虚ろな闇を沈み込ませている薄青色の瞳。長身で、ゾイの記憶にある筋肉質な体よりも痩せてはいたけれど、均整の取れた体つき。

 間違いなく同一人物だった。


 ゴルムアは私がマナから念話を受け取るほんの少し前にフォルニード村を急襲。当時のフォルニード村は他の村からの避難民を受け入れるべく、危険を承知の上で古代魔術の結界を張っていなかったそうだ。

 そしてセンがゴルムアの気配に気付いた時には既に遅く、目にも留まらぬ速さで突進してきたゴルムアにセンが吹き飛ばされた。魔王種でもないラーウルさんの目では、何が起こったのか全くわからなかったという。

 それほどの速さでゴルムアは村を蹂躙し始めた。


 すぐに対応したのがブライ。タツキに念話でフレイラさんのみならず村自体が存亡の危機である事を伝え、魔力操作によって自らの形態を組み替えて巨大化し、ゴルムアに立ちはだかった。

 すぐにマナやフレイラさんも参戦。

 しかしゴルムアはブライたちを無視して逃げ惑う村人や復興要員の人々を襲い始めた。それを止めるべくマナやフレイラさんが割って入ったものの、まるで歯が立たず。マナは半ば錯乱状態に陥って、私に念話を飛ばしてきたようだ。


 その後マナもゴルムアによって殴り飛ばされ、フレイラさんがブライの制止を振り切ってゴルムアに切りかかった時、睦月たちが現れたそうだ。

 睦月と、睦月から“サギリ”と呼ばれていた少女がゴルムアを圧倒。しかし止めを刺すには至らず、ゴルムアが逃走。睦月たちがゴルムアを追って去る少し前に、タツキがフォルニード村に到着。その時に睦月たちの“あれは自分たちの得物だ”という言葉を聞いたらしい。

 そしてタツキが負傷者の治療を終えた所で私がフォルニード村付近に到着した、という状況だったようだ。


《そうか……ランサルは、助からなかったか……》


 念話での報告を終えると、ハルトは沈んだ様子でそう伝えてきた。


《うん、さっき確認してきた。間違いなくランサルさんだった。あと騎士の3人も見覚えがある。モルト砦から派遣されてきた、復興当初からフォルニード村に来てた騎士たちだと思う》

《そうか……わかった。何かこちらで出来る事はあるか?》


 問われて考える。

 何か、王都側で出来る事……。


《資材とか復興物資はほぼ無傷で残ってるから、今は大丈夫かな。できたら復興支援で来てて亡くなった人たちを帰してあげたいけど、アールグラントって埋葬とかどうしてたっけ。あとセレン共和国とヤシュタート同盟国もどうやって弔ってるのか、教えて》


 そう伝えると、ハルトはすぐに各国の弔い方を教えてくれた。どの国でもやはり疫病対策で火葬が基本らしい。

 ただ、ヤシュタート同盟国は魔族同様、亡くなったその地に埋葬するのがしきたりなのだそうだ。


《アールグラントとセレンは墓を作る風習があるから、火葬後の骨は引取りに向かわせる。ただ、ランサルはフォルニード村に埋葬してくれ。調べた所ランサルは独り身で、親御さんも既に亡くなっている。引取り手がないというのもあるが、ランサルは元々フォルニード村に骨を埋めるつもりだったようだから》


 それは亡くなる前のあの念話からも察せられる。

 ランサルさんはこう言っていた。“私は私個人として、フォルニード村の一員として、フォルニード村を守ります!”と。

 ランサルさんの遺志に沿うならば、フォルニード村で眠らせてあげるのが一番だろう。


 ハルトとの念話を終えると、私はラーウルさんにランサルさんをフォルニード村に埋葬させて欲しいとお願いした。ラーウルさんは二つ返事で了承してくれた。



 その後、亡くなった人たちをみんなで弔った。アールグラントとセレンの犠牲者は誰だか分かるように個別に火葬して、小さな箱に骨をまとめる。

 こういうの、前世でおじいちゃんが亡くなった時に一回やっただけだったな、とふと思い出した。あんなに大きく見えた人がこんなにも小さくなってしまうんだと、ショックを受けた記憶がある。


 それはこの世界でも変わらない。屈強な騎士たちや兵士、戦士たちも、皆一様に小さな箱に収まってしまった。

 寂寥を感じながら、今度はフォルニード村に埋葬する人々を火葬する。ラーウルさんからの提案で、今回の犠牲者は湖の近くに墓地を作って埋葬しようという事になった。

 魔族に墓という概念はないけれど、人族──とりわけ墓地に埋葬するという風習を持つアールグラントと交流があるフォルニード村の魔族だからこそ、思い至る提案だと思う。

 彼らは彼らで、いいと思う人族の風習を取り入れようとしているようだ。


「時々関所の方にお邪魔する事がありまして、そこで慰霊碑を見て思ったのです。こういう弔い方もあるのだな、と。そこに家族や同胞が眠っている証しを作り、訪れる度に思い出す。私はそういう考えが、何と申しますか、羨ましく思ったもので」


 ラーウルさんはそう言って、埋葬後、村の石工に慰霊碑を作るように依頼していた。慰霊碑に刻むのは“英霊ここに眠る”という文言と、犠牲者たちの名前になるそうだ。

 ランサルさん、英霊だって。よかったね。


「アールグラントではそのようにして墓に向かうのですか?」


 埋葬地の前でランサルさんに思いを馳せていると、不意にラーウルさんに問いかけられた。一瞬何を言われたのか分からずに首を傾げる。すると、ラーウルさんは両手を胸の前で合わせるポーズを取った。

 おっと、つい無意識の内に合掌していたようだ。

 私は慌てて合掌を解いて両手を左右に振る。


「いえ、通常はこう、胸に右手を当てて、目を閉じて故人を偲ぶのが普通のやり方です。これは、その……私のオリジナルでして」

「おり……? 何ですか?」


 うわぁっ! もうっ、こういう時前世の記憶が状況をややこしくする!!

 あたふたしながら説明しあぐねて「あー」とか「うー」とか言っていると、後ろで様子を見ていたタツキに笑われてしまった。

 うぅ、笑ってないで助けてよ……。


 結局ラーウルさんには誤摩化しに誤摩化して、最終的にちゃんとしたアールグラント式のやり方を覚えて貰った。

 タツキは全く助けてくれず。ひたすら笑い続けていたけれど、何故か可笑しいという感情の中に嬉しいという感情も混じっているように感じた。




 私がフォルニード村に到着して、3日が経過しようとしていた。

 村に来てから私は執務用の建物──村の人から本部と呼ばれている建物の空き部屋を借りて寝泊まりしていて、この日、私の許にアールグラントの騎士が大急ぎで知らせを持ってきた。曰く、ずっと眠っていたフレイラさんが目を覚ました、と。


 知らせを受けて、私は早速気掛かりを確認すべくフレイラさんがお世話になっている家に向かった。その家は村の中でも本部に次いで大きい。フォルニード村の村長を務めるラーウルさんの家だ。


 ラーウルさんの家に着くと、ラーウルさんの奥さんが快く家に迎え入れてくれた。フレイラさんはフォルニード村に来てからラーウルさんの家でお世話になっているらしく、この家に一室借り受けて暮らしているらしい。

 今この家ではその広さも相俟って、主に重傷者を受け入れている。なので、フレイラさんに会った後はマナとセンの様子も見に行くつもりだ。


 通されたのは2階の一番奥の部屋だった。ラーウルさんの奥さんがノックをすると、すぐに「どうぞ」と応じる声が返ってくる。フレイラさんの声だ。

 ラーウルさんの奥さんは私にひとつ頷くと「私は下の階にいますね」と告げて階段を下りて行ってしまった。それを見送り、私は逸る気持ちを押さえて扉を開く。すると室内にはフレイラさんの他に、タツキもいた。どうやらふたりで談笑していたようだ。

 これはもしかして、お邪魔してしまったかな……。


 そんな私の懸念を吹き飛ばすように、フレイラさんが満面の笑顔で駆け寄ってきた。


「リクさん! お久しぶり!」


 迷いなく飛びつかれて何とか受け止める。

 何この可愛い生き物!! うっかりいつぞやの魔王ルウ=アロメスと同じ感想抱いちゃったじゃない!


「フレイラさん、お久しぶり! セタが生まれる前に会ったきりだから、2年半ぶりくらい?」


 そう、結局フレイラさんがエルーンからフォルニード村に向かう途中でアールレインに立ち寄った後、東大陸の情勢が不安定になってしまって会えずじまいだったのだ。


「そうね、それくらいかしら。息子くんは元気? 可愛い?」

「元気に育ってるよ。そんでもって滅茶苦茶可愛い。あの子は間違いなく天使だね!」


 と息子自慢をすれば、フレイラさんは可笑しそうに笑った。


「ハルトが子煩悩だって話はタツキくんからさっき聞いたけど、リクさんも大概ね」

「だって初めての子供なんだもん、あんなに可愛くて仕方がなくなるなんて、想像以上だよ。私としては妹や弟も相当可愛いと思ってたけど、そこを越えてくるとは……」

「そういうものよ。私も、そうだったもの」


 最後は小さく囁くような声音だった。

 けれど私にもタツキにも、バッチリ聞こえてしまっていた。

 それって、つまり……。


 問おうとしたけれど、何とか踏みとどまる。

 今自分に子供がいるからだろう、問うべきではないと思ったのだ。

 もし私が今、あの時のように魔力暴走事故に巻き込まれて自分も子供も命を落としてしまったら……その記憶を持ったまま転生したらと考えたら、気が狂ってしまうだろう。

 フレイラさんはそこを乗り越えて、今ここで生きているのだ。蒸し返す事はない。


「そういえばリク、フレイラさんに何か聞きたい事があったんじゃないの?」


 タツキが話題を転換すべく、私がここに来た本来の目的を問いかけてきた。

 ナイスだ、タツキ。


「そうだ、フレイラさん。あのね、フレイラさんはゴルムアと直接会ったんだよね?」


 私の問いに、フレイラさんは私に椅子を勧めようとした姿勢のまま固まった。その大きな瞳が恐怖の色に染まる。


「……会ったわ」

「その時、何か感じなかった?」


 このまま問い続けても大丈夫だろうか。

 ちょっと心配になったけれど、フレイラさんは気丈にも恐怖を抑え込んでみせる。

 相変わらず感情の流れがはっきりしているなぁ、フレイラさんは。


「そうね……とても人族とは思えない身体能力だと思ったけれど」


 そうか、相手の気配を察知する能力は神位種でもまちまちなのか。

 ハルトが言うには勇者ジルは多少離れた場所にいてもハルトの神位種としての気配を察知してたらしいし、ハルトも近くにいれば相手が神位種かどうか何となくわかるような事を言ってたから、もしかしたらと思ったんだけど。どうやらフレイラさんはそこまで気配に敏感ではないようだ。

 ここは思い切って、単刀直入に聞くべきかな。


「ゴルムアに対して、同族だって感じなかった?」


 私の言葉に、フレイラさんのみならずタツキも息を呑んだ。

 その口許が「まさか……」と音にならない言葉を発する。


「同族……人族かって事?」

「違う」


 どうやら私の問いの真意に気付いたのはタツキだけだったようだ。フレイラさんはゴルムアが人族ではない可能性の方へ意識が向いたようだった。

 なので私は首を左右に振る。そして今度こそ、より直接的な言葉で私の予測を口にした。


「ゴルムアを見て、直感で神位種だって思わなかった? っていう意味」

「え!?」


 ようやく理解したフレイラさんが目を見開く。それから必死に何かを思い出そうとしている様子で、視線を床に落とした。


「ごめんなさい……私、そういう気配とか、あまり鋭くなくて」

「そうみたいだね。私も神位種でも能力がまちまちなのは知ってるから、もしわかってたら、くらいの気持ちで聞かせて貰ったんだ。だからフレイラさんが謝る必要はないよ。急に変な事聞いてごめんね」

「……あっ! ひとつだけ思い出したんだけど」


 フレイラさんはバッと視線を上げて私に向けると、眉根を寄せた。


「あれだわ、ゴルムアにずっと違和感があった原因は。リクさん知ってるかしら。神位種って覚醒するとそこから修練と年数に比例して能力が伸びていくんだけど、神位種としての力を極めると得られる能力があるの」

「え?」


 何それ、聞いた事ないな……。


「私はまだ取得していないし、魔王ゾイとの戦った時の様子だとハルトもまだ取得してない能力だと思うわ。神殿で教えられて、勇者マトラ=リエンテに会った時に一度しか目にした事がないから忘れてたし、うろ覚えだから確信が持てるほどじゃないんだけど……」


 フレイラさんはそう前置きをしてから、言葉を探すように視線を再度床に落とし、沈黙する。

 ほんの僅かな静寂を挟み、ようやく言葉が見つかったようで改めて視線を私に向けてきた。


「“神覚の加護”。そう、確かそう言ってたわ。神殿の言葉を借りるなら、“神より授かりし力を極めた時、真なる加護がその身を護るだろう”。マトラは普段は何て事ないおばさまなのだけど、戦いの場に立つと途端に“加護”が働いて、体が淡い光の膜に覆われてるように見えたの。私、ゴルムアを見ていてずっと既視感があったのよ。あれは気のせいじゃなかったのね。ゴルムアは、あの時のマトラと同じ淡い光に包まれてた。きっとあれは“神覚の加護”なんだわ……」

「えぇっ! 神位種ってまだ勇者特典あるの!?」


 真剣な眼差しで私に語りかけてくるフレイラさんに反して、私は思わず思った事がそのまま口から出てしまった。

 だって、神位種ってただでさえ能力を伸ばす余地が大きいのに、更に極めると加護がつくとかどういうことなの!?

 私はその思いのままタツキに顔を向けた。私から視線を向けられたタツキは目を丸くしながらも首を左右に振る。


「僕は何も知らないよ? そもそも神位種とか魔王種とかはあくまでこの世界の法則上必要とされて発生したもので、イフィラ神は関わってないからね。“神覚の加護”とか言ってるけど、それはつまり、この世界そのものからの加護って事でしょ」

「そうなの? 私はてっきり、神位種はイフィラ神に選ばれた魂とかそういうものだと思ってた」


 何せ東大陸で神位種と言えば勇者、勇者と言えば神殿、神殿と言えばイフィラ神信仰だ。

 てっきり繋がりがあるものだと思っていた。


「違うよ。イフィラ神は死者の魂を受け入れ、休ませて、新たに生まれ変わる為に送り出すのが仕事。生まれ変わる先を多少選別はするけど、その先でどの生物に生まれるのかまでは関知できないんだから。だから言ってるでしょ。僕たちの転生にこれだけ関与したのは、異例中の異例なんだって。……それより、リク」


 すっとタツキが目を細める。

 あれ、なんか怒ってる?


「自分で聞いておきながら、話の腰を折らない! 折角フレイラさんがリクの予測に確証が持てそうな情報をくれたのに」

「あ……ご、ごめんなさい! フレイラさん」


 そうだった。そっちの方が重要だった!

 私は慌ててフレイラさんに勢い良く頭を下げる。しかしフレイラさんは一拍遅れて、くすくすと笑い始めた。


「いいのよ、リクさん。ふふっ、なんだか久しぶりね、この感じ。ここ最近ずっと緊張しっぱなしだったから、ほっとするわ……」


 恐る恐る顔を上げると、そこには心底可笑しそうに笑っているフレイラさんの顔があった。


 確かに、フレイラさんだけでなくフォルニード村全体が未だに緊張の中にある。

 タツキの結界が張られているからある程度の脅威なら何とでもなるだろう。けれどもしゴルムアが私の予測する通り神位種で、フレイラさんの言う通り神位種の能力を極めた者であるならば、タツキの結界でも防ぎ切れないかも知れない。ゴルムアの力がどれほどのものなのか全く想像がつかないのが恐ろしい所だ。


 それに“神覚の加護”も気になる。“神覚の加護”がただの護りの力なのか、そうでないのか……何となく、それだけではないような気がする。

 例えば、加護の発動と同時に身体強化のような効果も出るとか。私の予測では、“神覚の加護”は、もしかしたら……。


 ひとり悶々と考え込んでいると、


「そういえばリクさん、マナの所には行った?」


 今思い出したと言わんばかりの様子で、フレイラさんが手を叩く。

 タツキも同様の表情を浮かべ、


「あっ、そうだ、リク。ついさっきマナも目を覚ましたよ。会いに行ってあげたら?」


 そう勧めてきた。


 マナがすぐ隣の部屋にいる事を教えて貰って、私は一旦フレイラさんの部屋を出る。あまりふたりの邪魔をするのもね……って、余計なお世話か。

 でも元々マナとセンの様子も見て行くつもりだったからちょうどいい。私は隣室の前へ移動し、扉をノックした。

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