剣 〜ツルギ〜
俺は剣。
純粋に人を殺す為に作られた『武器』。
でも、その武器にも心がある。
俺はある一人の剣士の為に作られた。
その剣士の名は「シルフ」と言った。
それから、俺はそいつに付き従った。
無論、俺が反抗なんて出来なかったから。
『人間』は俺に心があるなんて知らない。
そして、シルフは俺を携え『戦場』という場所へ赴いた。
『戦場』は俺等の仕事場。
そして、自分の主人が力量を試す場。
シルフはそこで、鬼神の如く『人間』を俺で斬っていった。
10人、100人、1000人…
気が付けば、『戦場』で生きているのは俺とシルフだけだった。
他の武器は折れたりしていた。
そして俺は、大量の血を浴びていた。
それは、シルフもだった。
シルフは俺にささやいた。
「ありがとう。お前のおかげで俺は生きている。」
確かに、俺は人を斬ったが、そこに俺の意志は無い。
シルフが俺を振るい、人を斬った。
俺は、人など斬りたくなかったのに。
それからも、シルフは人を斬り続けた。
ひたすら強さを求めて。
その度に俺は血を浴び、欠けていった。
そして、俺はそれにガマンできなくなった。
俺は、自分がシルフを殺したいと願うようになった。
そして、それは叶った。
ある日、シルフはいつもの様に俺を携え、戦場へと向かった。
人は出陣するシルフをみるなり「英雄」と呼んだ。
何が英雄だ。コイツは人殺しだ。
俺はそう思った。
シルフは戦場に着くと、人を斬っていった。
10人、100人、1000人…
そこまで斬って、立っている『人間』は二人になった。
シルフはその人間に斬りかかった。血を大量に浴びた俺で。
しかし、その人間は俺をかわした。
シルフはバランスを崩し、俺の刃先に向かって倒れてきた。
シルフの心臓に俺が突き刺さった。
シルフは死んだ。
その時、俺はついに折れた。
しかし、俺は満足だった。
人殺しのシルフを自分が殺したからだ。
でも、何故か悲しくなった。
そうだ。
俺は俺の意志で人を殺したことは無かった。
でも、最後に自分の意志で人を殺した。
俺はシルフと同じ『殺人者』だ。
俺はもう生きている資格など無い。
俺は永遠の眠りについた。
剣や銃など、現代では武器が憎まれています。
しかし、武器は悪くありません。
それを作り出し、使う人間が悪いのです。